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ニュース2025年度の税制改正大綱が決定し、大学生年代の子を持つ親の税負担を軽減する『特定扶養控除』に関する大幅な緩和が示されました。これまで「103万円の壁」として、アルバイトをする学生の年収が親の税負担に影響を与えることが問題視されていましたが、この改正によって、その状況が大きく変わります。
この記事では、2025年からの特定扶養控除の変更点、新たな『特定親族特別控除』のしくみ、税制改正の背景、そして企業の人事・労務担当者がすべき対応を、わかりやすく解説していきます。
目次
2024年12月20日、2025年度の税制改正大綱が決定し、大学生などの子(19歳~22歳)を扶養する親の税負担を軽くする『特定扶養控除』の要件緩和が明記されました。また新たに『特定親族特別控除』が導入されます。
特定扶養控除とは、大学生などの特定の子を扶養する世帯が受けられる所得控除です。現在は、子の年収が103万円を超えると、親は63万円の控除を受けられなくなっていました。しかし今後、子の年収上限が150万円に引き上げられます。
これにより、大学生などがより多くの時間働いても、親の税負担が増えることを気にせずに済むようになります。
なお、子の年収が123万円を超えた場合は、従来の特定扶養控除に加えて『特定親族特別控除』という新たな枠組みが導入されます。
150万円を超えても段階的に控除額が減少するようになり、188万円を超えると控除額がゼロになるしくみです。
これにより、収入が増えたにもかかわらず世帯の手取りが減るという事態を防ぐことができます。
年収 | 控除の種類 | 控除額 |
---|---|---|
103万円以下 | 特定扶養控除 | 63万円(所得税) 45万円(住民税) |
103万円超~123万円 | 特定扶養控除 | 63万円(所得税) 45万円(住民税) |
123万円超~150万円 | 特定扶養控除 + 特定親族特別控除 | 段階的に減少 |
150万円超~188万円 | 特定親族特別控除 | 段階的に減少 |
188万円超 | 控除なし | 0円 |
控除額の段階的な現象について、具体的には、子の年収が160万円の場合、控除額は51万円に。子の年収が170万円の場合、控除額は31万円。子の年収が188万円を超えると、控除額はゼロになります。これらの改正は、2025年分の所得から適用されます。
控除額は所得税の場合
今回の税制改正の背景には、いくつかの重要な要因が考えられます。
少子高齢化が進む日本において、労働力不足は深刻な問題となっています。特に大学生年代のアルバイトは、サービス業や小売業など、さまざまな業界で重要な労働力です。しかし、従来の税制では、学生が一定以上の年収を得ると親の税負担が増えるため、学生が働く時間を抑制する要因となっていました。
これまで、学生の年収が103万円を超えると、親の扶養から外れ、親の所得税や住民税が増加していました。この「103万円の壁」が、学生の就労意欲を削ぎ、結果として企業の人手不足を加速させていると指摘されていました。
そこで2025年より、所得税が生じる年収が103万円から123万円まで引き上げられます。これにより、学生の手取りが増えることになりますが、高所得者の非課税枠は縮小されるため、注意が必要です。
所得税法における扶養控除は、納税者の家族構成や経済状況に応じて税負担を調整する制度です。今回の改正は、大学生年代の子を持つ世帯の税負担を軽減し、より公平な税制を実現しようという狙いがあります。
このように今回の改正は、学生の労働時間増加を促進し、人手不足の緩和に繋げることを目的としています。また、世帯の手取りを増やし、経済的な安定をサポートすることも目的としていると言えるでしょう。
今回の税制改正を踏まえ、企業の人事・労務担当者が対応すべきことはあるのでしょうか。ここからは、改正に伴う具体的な対応について解説します。
まずは、今回の税制改正の内容を正確に理解することが重要です。特に、特定扶養控除と特定親族特別控除のしくみ、控除額の計算方法などをしっかりと把握しましょう。
大学生年代の子を持つ従業員や、アルバイトを雇用している企業の場合は、従業員に対し、改正内容を説明しましょう。制度改正後は、従業員からの問い合わせが増えることが予想されます。説明会の実施や資料配布、社内FAQの作成など、スムーズに対応できる体制を整えましょう。
給与計算システムを導入している企業では、新しい控除制度に対応できるようにシステムを改修する必要があります。システムベンダーと連携し、早めに準備を進めましょう。なお、控除額が段階的に変わる点に注意が必要です。
また、必要に応じて就業規則を見直しましょう。特に、アルバイトの労働時間や給与に関する規定は、税制改正に合わせて見直す必要があるかもしれません。
今回の改正は、社会保険制度とも関連して考える必要があります。年収が増えることで、学生従業員が社会保険の加入対象となる可能性があり、その場合は社会保険の加入手続き、社会保険料の支払いをしなければなりません。社会保険料の計算方法もよく確認しておきましょう。
2025年度の税制改正で、大学生年代の子を持つ親の税負担が大幅に軽減されます。具体的には、「特定扶養控除」の年収上限が150万円に引き上げられ、123万円を超えると新たに「特定親族特別控除」が適用されます。
企業の人事・労務担当者は、改正内容を正確に理解し、従業員への周知徹底、給与計算システムの改修、就業規則の見直しなど、適切な対応策を講じることが重要です。
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