この記事でわかること・結論
- 給与支払報告書とは使用者が労働者に支払った年間給与を確認するための提出書類
- 給与支払報告書は、原則として毎年1月31日までに各市区町村へ提出しなければならない。
- 給与支払報告書を提出しない場合は、担当者およびその属する法人に対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される
この記事でわかること・結論
給与支払報告書とは使用者が労働者に支払った年間給与を確認するための提出書類のことを指します。給与支払報告書は主に「個人別明細書」と「総括表」の2つの書類に分かれています。
人事労務担当者としては毎年必要な手続きであるため、それぞれの書き方や提出期限に遅れた場合のペナルティについてよく理解しておく必要があります。
そこで本記事では、給与支払報告書や総括表の基本事項や書き方やペナルティについて解説していきます。源泉徴収票との違いにも触れているため、あわせて確認しておきましょう。
目次
給与支払報告書は企業が各従業員に支払った年間の給与を確認するための書類であり、従業員の住んでいる各市区町村へ提出する必要があります。
そして、各市区町村は企業から受け取った給与支払報告書の内容をもとに各従業員の住民税額を算出するという流れです。この給与支払報告書は、原則として毎年1月31日までに各市区町村へ提出しなければなりません。
従業員ごとの各市区町村へ提出する給与支払報告書は、「個人別明細書」と「総括表」という2つの書類に分かれます。まずは記載内容の違いについてよく理解しておくことが必要です。
個人別明細書は、各従業員の年間給与や基本的な個人情報(氏名・生年月日・住所など)が記載されています。内容は源泉徴収票と同じです。
そして総括表とは個人別明細書をまとめたものであり、市区町村ごとに作成します。この総括表には普通徴収対象者(退職者)を記載する欄もあります。それぞれの書き方は後述しているためそちらを参考にしてみてください。
給与支払報告書 | |
---|---|
個人別明細書 | 各従業員分が必要 |
総括表 | 各市区町村分が必要 |
普通徴収切替理由書兼仕切書 | 対象従業員分が いる場合に必要 |
もし、普通徴収の対象となる従業員がいる場合は一緒に「普通徴収切替理由書兼仕切書」というも提出することになっています。
それぞれの必要分をまとめると、個人別明細書は各従業員の人数分、そして総括表は市区町村分が必要になります。労務担当者は、上記を参考に自社で個人別明細書・総括表それぞれがいくつ作成する必要があるかを明確にしておきましょう。
給与支払報告書の対象となる従業員は、対象年の1月1日〜12月31日までに給与を支払った方です。そのため、正社員はもちろんパート・アルバイトなども給与支払報告書の対象になります。
また、途中で退職してしまった従業員(支払額が合計30万円未満の退職者については個人別明細書が免除されます)なども含まれます。退職者については、退職時点で住んでいた市区町村に対して提出します。
給与支払報告書(個人別明細書)は、年間の給与支払いについての書類です。同じように年間の給与収入や税金などが記載されている源泉徴収票とはどのように違いがあるのでしょうか。
給与支払報告書が住民税算出のためであるのに対して、源泉徴収票は各従業員の年収や所得税額を算出するために作成します。また、提出先は給与支払報告書が各市区町村であり、源泉徴収票が各従業員や税務署になります。
源泉徴収票などは年末調整時に作成します。労務担当者であれば2つの書類は区分して理解しておきましょう。
給与支払報告書は、冒頭でも触れたとおり「個人別明細書」と「総括表」に分かれています。
今回は東京都新宿区の公式Webサイトでダウンロードできるものを参考に、個人別名最初と総括表の書き方について解説していきます。企業の労務担当者などは、余裕をもって作成できるように覚えておきましょう。
個人別明細書の書き方は、源泉徴収票とほとんど同じです。内訳は給与支払報告書1枚と源泉徴収票が3枚複写された合計4枚となっています。
今回は東京都新宿区の個人別明細書をもとに各項目を解説していきます。
給与の支払いをおこなった従業員についての1月1日時点での基本情報やマイナンバーを記入します。
支払った賃金の内容(給与・賞与)などを明記します。
実際に対象の1年間で支払った金額の総額を記入します。
年末調整で作成した源泉徴収票をもとに、給与所得控除後の金額を記入します。計算方法は国税庁の「No.1410 給与所得控除」を参考に年収に応じて算出します。
年末調整を実施していない従業員分については、空欄のまま進めます。
算出した給与所得から、各種所得控除を差し引いた金額(課税所得)を記入します。こちらも年末調整をしていない方は未記入のまま進みます。
源泉所得税と復興特別所得税の合計額を記入します。
控除対象となる配偶者がいる場合は記入します。その他横に続き項目も該当者がいる場合は人数を記入しましょう。
天引きした社会保険料の総額を記入します。またその他生命保険料や地震保険料、住宅借入金等特別控除の金額もあわせて書きます。
給与を支払った法人もしくは個人事業主の情報を記入します。
続いて総括表の書き方を解説します。各市区町村で異なるため、記入の際は必ず提出先の各市区町村が公式Webサイトなどで公表している書き方を参考にしましょう。
今回は個人別明細書と同様に、東京都新宿区の例をもとに大切な項目を解説します。
実際に支払いがおこなわれた期間を記入します。
法人番号または、個人事業主であればマイナンバーを記入します。
給与を支払っている法人名称や代表者名を記入します。
報告する人数の内訳として「特別徴収対象者」「普通徴収対象者(退職者)」「普通徴収対象者(退職者を除く)」をそれぞれ書きます。また、退職者がいる場合もその人数を記入します。
要する場合は必要に円をします。郵送で提出されるのであれば必ず必要を選択しましょう。郵送でなくとも確認用として納入書を使うことも可能です。
給与支払報告書の提出完了までのおおまかな流れを解説します。事前に手続きや段取りを覚えておくことでスムーズに対応できるでしょう。
給与支払報告書提出の流れ
給与支払報告書のなかでも総括表については、各市区町村が用意したものが12月ごろを目安に企業へ送られてくるためそちらを利用します。
個人別明細書などは各市町村の公式Webサイトよりダウンロードができるため、それらを用いて作成します。
年間の徴収税額や支払給与額などを再計算するために、まずは年末調整を済ませましょう。年末調整で算出した各金額などをもとに源泉徴収票や個人別明細書を進めます。
源泉徴収票と個人別明細書は内容が同じであるため、年末調整が済んだら同時に作成してしまいましょう。
その後総括表にまとめるため、個人別明細書については市区町村ごとに分けておくとスムーズです。
作成した個人別明細書をもとに、総括表を作成します。そして1月31日(土日祝の場合は次の平日)までに提出します。給与支払報告書の提出方法には以下のようなものがあります。
上記のなかでも郵送を選択する場合は、対応日から市区町村へ届くまで時間がかかることを覚えてきましょう。
給与支払報告書はインターネットにて電子申告をすることができます。電子申請する際は地方税ポータルシステム(通称eLTAX:エルタックス)を用います。
このサービスにより、事業所の担当者は申告の際、直接窓口に足を運ぶことなく自分のデスクで作業をおこなうことができます。eLTAXの利用は土日祝、年末年始を除く平日の8時30分から24時までとなっており、ソフトウェアのバージョンアップは税制改正などがある度におこなわれます。
また、eLTAXの使用にあたっては利用者IDの取得が必要になります。1月になってから急いでやろうとすると、間に合わなくなる恐れがあるため申告に必要な内容や作業環境を事前に整えてから申告するようにしましょう。
年末調整なども電子申請に対応していれば、より迅速にまとめて対応することができるでしょう。
給与支払報告書の提出義務および罰則については、地方税法第317条にて定められています。
一月一日現在において給与の支払をする者(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この節において同じ。)で、当該給与の支払をする際所得税法第百八十三条の規定により所得税を徴収する義務があるものは、同月三十一日までに、総務省令で定めるところにより、当該給与の支払を受けている者についてその者に係る前年中の給与所得の金額その他必要な事項を当該給与の支払を受けている者の同月一日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し、これを当該市町村の長に提出しなければならない。
毎年1月末までの提出期限を守れなかったり、そもそも作成していないことがあったりすれば企業は法律違反となってしまいます。
その際は、地方税法第317条に基づいて担当者や企業に対して以下のペナルティが科されます。給与を支払っているのであれば法人でも個人事業主でも同様に提出義務が発生することも覚えておきましょう。
給与支払報告書を提出しない場合は、担当者およびその属する法人に対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになるため必ず期限内に提出しましょう。
年末調整時期になれば、源泉徴収票の作成などもおこなうため同時に給与支払報告書も進めてしまう企業がほとんどでしょう。スムーズに提出できるようにしておきましょう。
給与支払報告書とは、法人や事業主などの事業者が従業員の住む各市区町村へ提出する書類であり、年間の支払給与額などを記載したものです。各市区町村・自治体は各企業から受け取った給与支払報告書から従業員の住民税などを算出して徴収します。企業は法律で提出義務が定められており、期限は原則として毎年1月31日までとなっています。
給与支払報告書は「個人別明細書」と「総括表」に分けられています。個人別明細書は従業員ごとの支払給与や個人情報を記載したものであり、総括表をその個人別明細書をまとめたものです。それぞれ従業員分、提出先の自治体分を用意する必要があります。
企業が給与支払報告書を提出することの義務については、地方税法という法律の第317条で定められています。また同法律で、提出漏れによる罰則についても定められており「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」とされています。罰則の対象は、法人にくわえ対象担当者にも科されるため注意してください。
給与支払明細書は、企業が従業員の住む各市区町村へ提出する書類です。主な内容は「各従業員へ1年間でどのくらい給与を支払ったか」であり、各従業員の住民税を算出するためにも必ず提出が必要です。
期限は1月末までであるため、基本的には年末調整時期にまとめて作成する企業がほとんどでしょう。期限を守らずに提出できなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となってしまう可能性もあるため忘れずに提出しましょう。
給与支払明細書を構成する2つの書類の書き方や注意点などについて、本記事を参考によく理解してスムーズに対応できるようにしておきましょう。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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