この記事でわかること
- 源泉徴収票が必要な理由とは
- 源泉徴収票を発行するタイミング
- 源泉徴収票の見方
この記事でわかること
従業員を雇用している会社は、1年に一度(多くの場合は年末調整後に)、源泉徴収票を発行することになります。
源泉徴収票は従業員にとって大切な書類のため、経営者や人事担当者は作成方法を熟知している必要があるでしょう。
今回の記事では、源泉徴収票とはそもそもどんな書類なのか、発行する理由や発行のタイミング、源泉徴収票における年収・手取りなどの見方を解説していきます。
目次
源泉徴収票とは、1年間で支払った給与と徴収した税金の金額が記載された用紙のことです。従業員の毎月の給与から所得税を差し引くことを源泉徴収と呼び、その詳細が記されている書類が源泉徴収票です。
源泉徴収は、個人事業主やフリーランスの方が毎年おこなっている確定申告の代わりとなる役割があります。会社員のような給与所得者であれば会社側が源泉徴収および、年末調整などをおこなってくれるため自身で所得税の申告をする必要がありません。
企業の給与担当者や経理の方は、税理士などと確認し合いながら従業員分の源泉徴収票を毎年作成します。
源泉徴収票は国税庁の公式Webサイトよりテンプレードがダウンロードできます。源泉徴収票は主に、年末調整(所得税の支払いの過不足を調整するもの)時に従業員へ渡すものや、所轄税務署への提出するものなど計4枚作成します。
年間の所得や税金が確認できる源泉徴収票は、従業員も普段収入証明などで利用する場面があるため正確に対応しましょう。主に源泉徴収票で確認できるものは、
などがあります。仮に退職したという場合には退職月までの各種金額が記載されており、個人事業主になる際などにも必要となります。従業員の方は、源泉徴収票はしっかり保管しておくものということを覚えておきましょう。
事業主(企業)が源泉徴収票を発行するのは、以下のタイミングです。基本的には毎年12月の年末調整時に発行され、給与明細と一緒に渡されることが多いです。
従業員が会社を退職する場合は、退職した年の1月1日から退職日までの給与に基づいて源泉徴収票を発行します。そのほかは、授業員が必要なタイミングで会社側に申請して発行してもらうことも可能です。
万が一、年末調整後などで一度発行した源泉徴収票を紛失してしまった場合でも、通常よりは時間がかかるかもしれませんが再発行ができます。大事なタイミングで紛失してしまっても諦めず、再発行してもらえるということを覚えておくと良いです。
源泉徴収票は、正社員だけでなくアルバイトやパートタイムなど、雇用形態に関係なく発行しなければなりません。給与を貰っているすべての従業員に対して発行が義務づけられています。
基本的には会社員などと同じ12月翌年1月の時期にもらえることが多いです。学生アルバイトがいれば、卒業月である3月に源泉徴収票を作成することも多いでしょう。アルバイト先によっては配らないこともあるそうですが、希望すれば交付してもらえるため必ずもらっておきましょう。
その理由は、アルバイトでも源泉徴収票が必要になるケースがあるからです。たとえば、年の途中で正社員へ転職したときや、掛けもちで年間20万円以上の給与収入があり確定申告しなければならないときなどに、源泉徴収票が必要になります。
源泉徴収票には、以下の3種類があります。
また、給与所得と退職所得は下記の違いがあります。
給与所得と退職所得の違い | |
---|---|
給与所得 | 退職所得 |
会社から定期的に支払われる報酬にかかる所得
雇用契約に基づいて、毎月一定期間で支払われる給与と、夏と冬に支払われることが多い賞与から給与所得控除を差し引いたものを「給与所得」と呼ぶ。 |
退職した労働者に支払われる報酬にかかる所得
雇用契約に基づいて、支給額や支給条件が定められている。また、賃金に該当すると判断される場合、給与所得とみなされることがある。 |
給与所得は年末調整の対象ですが、退職所得は分離課税のため、年末調整の対象外となります。
源泉徴収票は、年末調整後の確定申告や転職、公的年金の裁定、融資、賃貸契約、保育園の入園といった申告・申請時に、年収や所得税を証明するために必要です。
年末調整は年度内で12月の給与を支払った企業がおこなうため、年度中に転職した従業員には源泉徴収票を発行し、転職先に年末調整をおこなってもらう必要があります。
源泉徴収票には、以下の6つの項目が設けられています。
源泉徴収票で記入する項目
それぞれの項目の意味(見方)は、下記の表をご参考ください。
項目 | 詳細 |
---|---|
支払金額 | 会社が1年間で支払った給与の総額(年収)。基本給、役職手当、残業代、賞与も対象となり、各種控除が適用される前の金額を記入する。 |
給与所得控除後の金額 | 支払金額から給与所得控除額を差し引いた金額 ※1 |
所得控除額の合計額 | 社会保険料控除、基礎控除、配偶者控、生命保険料控除、扶養控除、震保険料控除など各種控除金額を合計した金額 |
源泉徴収税額 | 年末調整後の源泉所得税額 ※2 |
控除対象配偶者の有無 | – |
控除対象扶養家族の数 | 扶養家族の人数 |
社会保険料等の金額 | – |
生命保険料の控除額 | – |
1 企業に所属している人の場合、支払金額から給与所得控除額を差し引いて所得税を計算します。差し引かれる金額は、年収によって決まります。なお、「給与所得控除額」は、源泉徴収票には記載されません。
2 年末調整をしない場合は、その年に源泉徴収すべき所得税額を記入します。
上記の中でも覚えておきたい項目を、もう少し詳しく解説します。
年収に相当する金額が「支払金額」です。年間通しての総額が源泉徴収票には記載されており、基本給やボーナスなどを含めた金額となります。通勤手当や旅費、在宅勤務手当など非課税手当に該当するものは含まれません。
給与所得控除や各種所得控除は、支払金額から差し引かれる金額のことを指します。控除とはさまざまな条件下で適用することが可能であり、税金をおさえるための役割があります。
各種所得控除には、国内納税者向けに以下15種類があります。自身が要件を満たす所得控除が支払金額から差し引かれて、所得税などが計算されます。
この所得控除は一律ではなく、個人個人で異なります。基本的には会社側が年末調整時に該当する控除の申請などをしてくれますが、
については、給与所得者であっても自身で確定申告をしてもらう必要があります。ふるさと納税での節税などは、寄付金控除に入るため適用したいサラリーマンなどは自身で確定申告をしましょう。
確定申告は年末調整で源泉徴収票をもらってから数カ月後になりますが、その際に源泉徴収票が必要になるため忘れずに保管するように促しておくと安心です。時期が来たらリマインドするとより丁寧です。
この金額は、年間で源泉徴収された所得税の額です。先述した給与所得控除や各種所得控除を、支払金額から差し引いた金額(1,000円未満の端数金額を切り捨てる)に所得税率をかけて計算します。
控除などを支払金額から差し引いた金額に応じて、税率とこのタイミングでの控除が区分されており、国税庁の公式Webサイトで最新版がチェックできます。
源泉徴収票で年収を確認したい場合は「支払金額」、実際に労働者の手元に入る手取り金額を確認したい場合は、支払金額から源泉徴収税額と社会保険料等の金額を引いて算出できます。
還付金とは、給与から差し引かれた所得税がその年の確定納税額より多かった場合に発生します。源泉徴収票は、1年間で支払われた給与と徴収した税金がわかる用紙であり、所得税の還付金がいくら返ってくるかは書類からは分かりません。
そのため所得税の還付金を確認する場合は、源泉徴収票に記載の情報から計算するか、給与明細の「所得税還付金」や「年末調整還付金」などの欄を確認しましょう。
「給与所得の源泉徴収票」は、国税庁の公式Webサイトからダウンロードすることができます。
ここからは、上記で紹介した項目の書き方を具体例とともに確認していきましょう。
支払金額には、控除や源泉徴収がされる前の報酬の総額(給与収入)を記入します。給与所得控除後の金額は、報酬の総額(給与収入)から給与所得控除額を差し引くことで算出できます。
給与所得控除額は、給与収入金額に応じて異なります。
給与収入額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 650,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 年収×40% |
1,800,001円から3,600,000円まで | 年収×30%+180,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 年収×20%+540,000円 |
6,600,001円から10,000,000円まで | 年収×10%+1,200,000円 |
10,000,001円以上 | 2,200,000円 |
450万円(支払金額)– 144万円(給与所得控除額)=306万円(給与所得控除後の金額)
給与所得控除後の金額は、306万円となります。
前述のとおり源泉徴収票の支払金額には、1年間に支払われた給与と賞与の総額を記載します。
給与には各種手当が含まれていますが、そのうち通勤手当は課税対象外(条件により最大月額15万円まで)のため、支払金額には含めません。
所得控除額と対象となる項目は、以下のとおりです。
控除内容 | 控除金額 |
---|---|
基礎控除 | 38万円 |
配偶者控除 | 13万円~48万円 |
配偶者特別控除 | 1万円~38万円 |
扶養控除 | 38万円、48万円、58万円、63万円 |
障害者控除 | 27万円、40万円、75万円 |
寡婦(寡夫)控除 | 27万円、35万円 |
勤労学生控除 | 27万円 |
社会保険料控除 | 健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険の保険料の金額 |
生命保険料控除 | 生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料の金額 (最大12万円まで) |
地震保険料控除 | 地震保険の保険料の金額(最大5万円 まで) |
小規模企業共済等掛金控除 | 個人型確定拠出年金、小規模企業共済等の掛金の金額 |
基礎控除38万円+社会保険料控除60万円(※)=98万円(所得控除の額)
社会保険料控除額は概算です。健康保険組合や地域によって保険料率が異なります。
源泉徴収税額(所得税額)は、支払金額から給与控除額と所得控除額を差し引いた課税所得額に所得税率をかけて算出します。
給与所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
450万円-144万円(給与所得控除額)-98万円(所得控除額)=208万円(課税所得金額)
208万円×10%=20万8千円(源泉徴収税額)
復興特別所得税は、課税所得額に2.1%をかけた金額となります。
208万円×2.1%=4万3,680円
最終的な源泉徴収税額は、
となります。
支払金額・所得控除額の合計額・源泉徴収税額は別途算出が必要ですが、
は確定していることが多いため、別途算出する機会は多くありません。
源泉徴収票を作成する際は、以下の点に注意しなければなりません。
マイナンバー制度の施行後、会社に提出する各種書類にマイナンバーを記載する機会が増えましたが、源泉徴収票への記載は不要です。
源泉徴収の発行は事業主(企業)に義務づけられています。そのため、年末調整後や従業員の退職時だけでなく、紛失による再発行、従業員の要請に応じて発行しなければなりません。
源泉徴収票は給与を支払っていた企業にしか発行できないため、退職後の従業員の依頼にも応じる必要があります。
年末調整時には、従業員の数だけ給与計算や税金計算が必要です。企業担当者の方は、毎年の恒例イベントでもあるでしょう。「年末調整システム」などのソフトを導入することで、そんな忙しい年末業務を効率化することができます。
そのため、人為的な計算ミスの削減や源泉徴収票作成にもそのままデータが使用できるため工数削減にも繋がります。各種申告書なども電子申請が可能になるため、役所へ行く手間すらも省けるでしょう。
特に従業員数が多い会社であればあるほど、バックオフィス業務は複雑化していきます。導入を検討してみたい企業さまはぜひチェックしてみましょう。
源泉徴収票とは、1年間で支払った報酬と徴収した税金の金額が記載された用紙のことです。源泉徴収票の発行は企業の義務であり、年末調整業務後や従業員の退職時、従業員の依頼に応じて発行しなければいけません。
また、源泉徴収票はアルバイトやパートタイムなど雇用形態にかかわらず発行します。正社員への転職時やクレジットカード作成時など、生活していくうえで源泉徴収票は必要になるため従業員側も保管する意識を持っておきましょう。
今回ご紹介した、源泉徴収票の見方と書き方を参考に事業主は源泉徴収票を正しく発行しましょう。「年末調整システム」のさらに効率的に進めることができるため、全社的に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ソビア社会保険労務士事務所の創業者兼顧問。税理士事務所勤務時代に社労士事務所を立ち上げ、人事労務設計の改善サポートに取り組む。開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超達成。近年では企業の人を軸とした経営改善や働き方改革に取り組んでいる。
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