この記事でわかること
- 源泉徴収簿の概要と源泉徴収票との違い
- 源泉徴収簿の基本的な書き方
- 源泉徴収簿を活用した年末調整の書類作成方法
この記事でわかること
年末調整の時期に、従業員ひとり一人の給与明細等を確認しながら、効率的に作業を進めるためには源泉徴収簿を活用すると便利です。
今回は、源泉徴収簿の存在意義や源泉徴収票との違いに加え、源泉徴収簿の作成方法や取り扱い方法を解説します。
源泉徴収簿とは、毎月支給した給与や賞与の源泉徴収税額、従業員の扶養親族等の状況などを記入する帳簿です。
年末調整で発行する源泉徴収票の基礎となる重要な帳簿であり、源泉徴収簿を基に年末調整の計算をおこないます。
源泉徴収簿は法令で定められた帳簿ではないため、国税庁が提供する書式に則らなくても問題はありません。
源泉徴収票とは、1年分の給与、賞与、源泉徴収税額などを集計して従業員に交付する帳票であり、所得税法で定められた「事業主が発行する所得税証明書」です。
事業主は従業員に対して、翌年1月末までに源泉徴収票を発行する義務があり、退職者には退職後1カ月以内に源泉徴収票を発行しなければなりません。
一方、源泉徴収簿は源泉徴収票を不備なく発行するために作る帳簿です。
年末調整業務を正確におこなうためにも、源泉徴収簿には毎月の給与、賞与、源泉徴収税額を正確に記入しておきましょう。
基本的に源泉徴収簿を閲覧できるのは事業主の関係者のみで、従業員への開示、国税庁への提出義務はありません。
今回は国税庁が発行する令和6年分給与所得に対する源泉徴収簿を使用して、解説します。
2.区分「給料・手当等」に給与情報を記入
月ごとに支給月日、総支給金額、社会保険料等の控除額、社会保険料等控除後の給与等の金額を記入。 扶養家族がいる場合は、扶養親族等の数、年末調整による過不足税額、差引徴収税額を記入(給与明細を転記)
3.区分「賞与等」に賞与情報を記入
支給月日、総支給金額、社会保険料等の控除、社会保険料等控除後の給与等の金額を記入(その年に支払う予定の賞与も記入)
源泉徴収簿を活用して年末調整をおこなう手順を説明します。
源泉徴収簿に限定した記述方法を解説
その他の記載(基礎控除など)は関連記事をご確認ください
STEP 3.扶養家族情報に沿って控除額の計算をおこなう
配偶者控除額、扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額合計額に、計算後の金額を記入
STEP 4.給与所得控除後の給与等の金額を算出・記入
給与・手当等と賞与等の合計をもとに、所得税控除後の金額を計算
STEP 5.年末調整の区分にSTEP 1の合計金額を記入
社会保険料の合計欄には、給与と賞与の社会保険料を合計して記入
STEP 6.保険料の欄に控除額を記入
給与所得者が記載した保険料控除申告書を参考に、保険料(社会保険、生命保険、地震保険など)の控除額を記入
STEP 7.算出所得税額を計算
「給与所得控除後の給与などの金額」から「所得控除額の合計額」を差し引き、所得税を計算し、記入
STEP 8.住宅借入金等特別控除を受ける対象者について
(従業員から確定申告書(※)を受領している場合)住宅借入金等特別控除額を申告書から転記のうえ、年調所得税額を計算し、記入
STEP 9.年調年税額を記入
年調所得税額に102.1%を乗じた金額を年調年税額として記入
特別控除の対象者は初年度に確定申告をおこない、税務署に申告書を提出しています。
源泉徴収簿は、税務署に提出する必要はありません。ただし、源泉徴収簿を年末調整の根拠として利用した場合、7年間保存しなければなりません。
源泉徴収簿は個人情報が記載されているため、取り扱いには慎重におこない、法律で定められた保存期間、または企業が独自に決めた保存期間を経過した際には、速やかに処分します。
源泉徴収簿は、源泉徴収票と異なり、国税庁・従業員に提出する必要はありません。
しかし、年末調整の処理を迅速におこなうための必要な帳簿であり、適切に作成・保存しましょう。
また、国税庁発行の源泉徴収簿は記入すべき欄が多いため、記入漏れや金額の計算ミスが発生しやすいといえます。従業員の給与システムと連携し、クラウド上で管理・保管することで人的ミスによるリスクや負担の軽減につながります。
社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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