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年末調整の2022年度の変更点は?税制改正の内容を解説!【社労士監修】

監修者:五味田 匡功 ソビア社会保険労務士事務所
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この記事でわかること・結論

  • 2022年の年末調整では、社会保険料控除などの証明書を電子データで提出できるようになった
  • 2023年以降に適用される税制改正では、住宅ローン控除の延長や非居住扶養親族の適用範囲変更がある
  • 年末調整の電子化を進めるため、企業はクラウド人事労務ソフトの導入や従業員への周知・指導が必要

2019年以降、住宅ローン等控除証明書の電子化解禁、税務関係書類への押印廃止など、年末調整の電子化を進める変更が相次いでいる中、2022年も年末調整の見直しがおこなわれました。
2022年の年末調整に向けてどのような対応をしていけば良いか、不安に思われている人事・労務担当者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、税制改正に応じた年末調整申告書類の作成方法、業務の効率化に向けた対応などを解説します。

2022年(令和4年)の税制改正内容

2022年(令和4年)の税制改正内容

2022年の税制改正により、年末調整の手続きで、社会保険料控除および小規模企業共済等掛金控除にかかる控除証明書の電子データ提出が可能になりました。

社会保険料控除および小規模企業共済等掛金控除にかかる控除証明書の電子データ提出

2022年10月1日以降に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出する場合、社会保険料控除および小規模企業共済等掛金控除にかかる控除証明書を電子データで提出できるようになりました。

以下、「源泉所得税の改正のあらまし」からの引用です。

(1) 給与等の支払を受ける者が、年末調整において、「給与所得者の保険料控除申告書」に記載すべき事項を電子データで勤務先に提供する場合には、社会保険料控除または小規模企業共済等掛金控除にかかる「控除証明書」の書面による提出または提示に代えて、この証明書の発行者から受領した一定の電子データによる提供をすることができることとされました。

(2) 給与等の支払を受ける者が、年末調整において、社会保険料控除または小規模企業共済等掛金控除の適用を受ける際に「給与所得者の保険料控除申告書」に添付等をすることとされている「控除証明書」の範囲に 、この控除証明書の発行者から提供を受けた電子データ (注1) を一定の方法により印刷した電磁的記録印刷書面 (注2) が加えられました。

(注)1この控除証明書に記載すべき事項が記録された一定の電子データをいいます。
(注)2電子証明書に記録された情報の内容と、その内容が記録された二次元コードが付された出力書面をいいます。

2023年度(令和5年度)以降に適用予定の税制改正内容

2023年度(令和5年度)以降に適用予定の税制改正内容

2023年1月1日以降に適用予定の税制改正があります。主な内容は、住宅ローン控除の適用の延長、要件の変更と、非居住扶養親族の適用範囲の変更です。

住宅ローン控除の適用の延長、要件の変更

住宅ローン控除の適用期限が、2025年12月31日まで延長されています。同時に、適用要件についても、所得要件などの変更があります。

<住宅ローン減税の概要(2022年度税制改正)>

新築・
既存等
環境性能 借入限度額 控除期間
2022年
2023年
入居
2024年
2025年
入居
新築住宅
買取再販
長期優良・低炭素 5,000万円 4,500万円 13年間
ZEH水準省エネ 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合 4,000万円 3,000万円
その他 3,000万円 0円
既存住宅 長期優良・低炭素 3,000万円 10年間
ZEH水準省エネ
省エネ基準適合
その他 2,000万円

以下、「源泉所得税の改正のあらまし」からの引用です(和暦は西暦に変更しています)。

(1) 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、適用期限(改正前:2021年12月31日)が2025年12月31日まで4年延長されるとともに、主に次の措置が講じられました。この改正は、住宅の取得等をして2022年1月1日以後に居住の用に供した場合について適用されます。
① 住宅の取得等をして2022年から2025年までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率および控除期間は次のとおりとされました。

イ 認定住宅等の場合

居住年 借入限度額 控除率 控除期間
認定住宅 2022年 2023年 5,000万円 0.7% 13年
2024年 2025年 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 2022年 2023年 4,500万円
2024年 2025年 3,500万円
省エネ基準適合住宅 2022年 2023年 4,000万円
2024年 2025年 3,000万円

(注)1上記の「認定住宅等」とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅および省エネ基準適合住宅をいい、「認定住宅」とは、認定長期優良住宅および認定低炭素住宅をいいます。
(注)2 上記の金額等は、住宅の取得等が認定住宅等の新築または認定住宅等で建築後使用されたことのないもの若しくは宅地建物取引業者により一定の増改築等がおこなわれたものの取得である場合の金額等であり、住宅の取得等が認定住宅等で建築後使用されたことのあるものの取得である場合における借入限度額は一律3,000万円、控除期間は一律10年とされました。

ロ 上記イ以外の住宅の場合

居住年 借入限度額 控除率 控除期間
2022年 2023年 3,000万円 0.7% 13年
2024年 2025年 2,000万円 10年

(注) 上記の金額等は、住宅の取得等が居住用家屋の新築、居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得または宅地建物取引業者により一定の増改築等がわれた一定の居住用家屋の取得である場合の金額等であり、それ以外の場合(既存住宅の取得または住宅の増改築等)における借入限度額は一律2,000万円、控除期間は一律10年とされました。
② 適用対象者の所得要件が2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)に引き下げられました。
③ 個人が取得等をした床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋で2023年12月31日以前に建築確認を受けたものの新築またはその家屋で建築後使用されたことのないものの取得についても、この特別控除の適用ができることとされました。ただし、その者の控除期間のうち、その年分の所得税にかかる合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用されません。
(2) 東日本大震災の被災者等における住宅借入金等の所得税額特別控除について、適用期限(改正前:2021年12月31日)を2025年12月31日まで4年延長するとともに、住宅の再取得等をして2022年から2025年までの間に居住の用に供した場合のその住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率および控除期間を次のとおりとするなどの措置が講じられました。

居住年 借入限度額 控除率 控除期間
2022年 2023年 5,000万円 0.9% 13年
2024年 2025年 4,500万円

(注) 上記の金額等は、住宅の再取得等が居住用家屋の新築または居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは宅地建物取引業者により一定の増改築等がおこなわれたものの取得である場合の金額等であり、それ以外の場合(既存住宅の取得または住宅の増改築等)における借入限度額は一律3,000万円、控除期間は一律10年とされました。
※ 上記のほか、上記(1)②および③と同様の措置が講じられています。
(3) 年末調整の際に、2023年1月1日以後に居住の用に供する家屋にかかる住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の適用を受けようとする者は、住宅取得資金にかかる借入金の残高証明書を「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」へ添付することが不要とされました。
(注) 上記(3)の改正は、2024年1月1日以後に提出する「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」について適用されます。

非居住扶養親族の適用範囲の変更

扶養親族のうち30歳以上70歳未満の非居住者で、次に該当する場合を除き、扶養控除の対象外となります。

扶養控除の対象外

  • 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
  • 障害者
  • 扶養控除の適用を受けようとする居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を 38 万円以上受けている者
非居住扶養親族の控除対象改正イメージ 2022年度 2023年度
扶養親族居住者(略)(略)(略)
非居住者 16歳以上30歳未満 控除対象 控除対象
30歳以上70歳未満 下記以外 控除対象 対象外
留学生 控除対象 控除対象
障害者 控除対象 控除対象
年38万円以上の送金 控除対象 控除対象
70歳以上 控除対象 控除対象

適用対象は、2023年分以降の所得税です。

上記により、非居住扶養親族で扶養控除の対象となる場合の確認書類として、以下の書類の提出が求められます。
<非居住者扶養親族が 30 歳以上 70 歳未満の場合の源泉徴収事務における確認書類>

30 歳以上 70 歳未満の非居住扶養親族控除の対象 提出が必要な確認書類
留学生 留学ビザ等相当書類
障害者
年38万円以上の送金を受けている者 38万円以上の送金書類

年末調整に向けて企業がすべき対応

年末調整に向けて企業がすべき対応

年末調整に向けて、事前に企業が取り組むべき課題がいくつかあります。

従業員への周知

記載項目や内容のチェックなどが従来同様に複雑であるため、人事・労務担当者のミスの原因にもなりかねません。

複雑化と電子化が進む年末調整書類に対して、書類の正しい書き方、記載すべき項目などを従業員へ周知・指導する必要があります。

2023年以降に適用される改正事項の対象となる従業員を分類・リスト化する、2022年の年収を参考に2023年の適用条件をある程度予測するなど、効率的かつ正確に作業を進められるように事前準備をおこないましょう。

特に「所得金額調整控除申告書」は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」との照合を求められるため、対象者に変更点の有無を確認しましょう。

人事労務業務のクラウド化、電子化

年末調整などの人事労務業務は、クラウド化による効率化と電子化への早期対応が望まれます。

クラウド人事労務ソフトの導入

複雑化するとともに電子化も同時に進められていく年末調整作業を「紙」だけで進めることは、実務負担が大きくなってしまう可能性が高いといえます。
これを踏まえ、「クラウド人事労務ソフト」を活用して、年末調整申告書の配付から回収業務を簡略化する企業も増えています。
株式会社エフアンドエムのクラウド型労務管理システム「オフィスステーション」は、PCやスマホでの申告書の入力、提出が可能です。
導入により460名規模の会社で、作業時間を152時間から52時間、つまり約100時間削減することに成功しています。

業務効率化のために、クラウド人事労務ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

電子化への対応

企業の社会保険や税金関連の申請書を電子化する流れは今後も進んでいきます。

企業がクラウド上に必要な情報をアップロードすることで、行政側がデータにアクセスして手続きをおこなう新しい仕組みを、今後構築していくと政府が発表しています。

たとえば、これまで年末調整は、企業が給与計算をもとに源泉徴収票の作成および従業員への交付をおこない、源泉徴収票を税務署へ、給与支払い報告書を市町村へ提出するという流れでした。

しかし電子化により、企業側がすべき作業は給与などの情報をクラウド上にアップロードする作業だけとなり、書類作成や本人への交付、関連各所への提出などの作業を省くことが可能です。

また、年末調整に限らず、日本年金機構や労働基準監督署、健康保険組合などに提出する書類も電子化の方針にあると言われています。

これらの手続きの電子化により、業務効率の改善や社会的コストの軽減が予想されています。

まとめ

2022年の税制改正内容は、小規模な改正に留まっていますが、2023年以降に適用されるさまざまな改正事項があります。
申告書類の電子化は、今後も進める方向が示されているため、企業側と従業員側とが電子化に対応していくことが求められます。年末調整業務の複雑化に対応するためには、電子化やクラウド人事労務ソフトの導入などを検討する必要があります。
来たる2023年施行予定の改正事項に向けて、今から対応の準備を進めておくことが重要です。

ソビア社会保険労務士事務所 監修者五味田 匡功

ソビア社会保険労務士事務所の創業者兼顧問。税理士事務所勤務時代に社労士事務所を立ち上げ、人事労務設計の改善サポートに取り組む。開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超達成。近年では企業の人を軸とした経営改善や働き方改革に取り組んでいる。
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