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【社労士監修】給与明細とは? 記載する項目や作成方法(計算方法)からペーパーレス実現まで徹底解説!

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給与明細の発行は人事・労務担当者の定型業務です。高い専門性が必要なうえ、各項目の正確な計算や税制改正による変更手続きも必要となります。

今回は、人事・労務担当者が知っておきたい給与明細の記載項目や作成方法、計算方法などの基本知識からWeb給与明細の魅力を解説します。

この記事でわかること

  • 給与明細の発行義務について
  • 給与明細の作成方法や記載項目、各項目の計算方法
  • Web給与明細への移行で実現できるメリット
監修者
難波 聡明

なんば社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
https://www.namba-office.osaka.jp/

ワークスタイルコーディネーター。社会保険労務士
社会保険労務士の中でも10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛けるの社会保険労務士。

給与明細とは

給与明細とは、給与の支給額や控除額を記載した通知書です。

給与明細には給与計算の根拠が示されていますが、労働基準法では、給与明細の発行は義務ではありません。

これに対して、所得税法第231条では給与支払明細書の交付が義務付けられています。

また、健康保険法第167条第3項、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第32条第1項で、控除額の通知が義務となっています。法律上、企業は給与明細を発行・通知する義務があります。

銀行振込による給与支払いでは、支給額(基本給や諸手当)や源泉所得税、社会保険料控除額を計算し、最終的な支給額を計算書に記入のうえ、従業員に交付しなければなりません
第167条3項:事業主は、前2項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない

給与明細(計算書)に必要な記載項目

  • 基本給・各手当
  • 源泉徴収税額・社会保険料額等、控除した項目ごとの金額
  • 最終的に支払った金額(手取り額)

給与明細の保管義務はありませんが、給与計算の根拠となる情報が記載された書類(法定3帳簿)は保管義務があります。

保管義務がある給与明細関連の書類
3年間の保管義務

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
7年間の保管義務
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の
    配偶者特別控除申告書
  • 源泉徴収簿

従業員の入退社のための手続きが多く、従業員数が多い企業は、雇用形態も幅広いため重要書類の一元管理がおすすめです。書類やデータの紛失・破損を防ぐクラウド型の人事労務ソフトを検討しましょう。

給与明細に記入する項目

給与明細には、勤怠項目、支給項目、控除項目の3つを記入します。

支給項目に示した総支給額から控除項目の合計額を差し引いた金額が、その月の口座振込額、従業員の手取りの給与額となります。

オフィスステーション 給与明細の画面

給与明細に記載する項目
勤怠項目給与明細の勤怠項目には、出勤日数・欠勤日数・労働時間・残業時間や
有給休暇取得日数・有休残日数などを明記します
支給項目 給与明細の支給項目には、基本給・時間外手当(残業手当)・通勤手当・
住宅手当・家族手当など各種手当の金額を明記します
控除項目 給与明細の控除項目には、給与から徴収した所得税や住民税などの税金、
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの控除額を明記します

控除項目には、労働組合費や積立金、食事代、財形貯蓄、親睦会費も含むことができます。

給与明細の作成方法(集計・計算)

給与明細は6つの手順に沿って、集計・計算をおこないます。

給与明細作成の6ステップ

  1. 労働時間の集計
  2. 課税支給額の計算
  3. 各種手当の計算
  4. 控除額(健康保険料、雇用保険料、厚生年金保険料)の計算
  5. 源泉所得税の計算
  6. 控除額の差し引き
給与明細の各項目の作成方法
(1)労働時間の集計出退勤を記録したタイムカード・勤務表から、1カ月分の労働時間を集計
勤務日数・欠勤日数・有休取得日数・有休残日数も集計します
(2)課税支給額の計算 基本給に、時間外労働手当を加算、欠勤・遅刻・早退を差し引く
基本給と諸手当の合計が課税支給額となります
(3)各種手当の計算住宅手当、通勤手当、役職手当、皆勤手当、家族手当、扶養手当、
単身赴任手当、勤務地手当、出張手当が該当
課税支給額とは別で計算
通勤手当には定期代や切符代が該当します
(4)控除額の計算 控除対象は健康保険、介護保険、厚生年金保険などの社会保険、雇用保険、
所得税、住民税、その他会社ごとの控除が対象
社会保険料はそれぞれの保険料率で計算します
(5)源泉所得税の計算課税対象額に国税庁の源泉徴収税額表から所得税を算出
1社勤務、複数会社勤務ともに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している会社は甲、
そうでない会社では乙の欄を確認します
(6)控除額の差し引き 課税支給額から控除額を差し引き、手取り支給額を確定

上記の作成手順を踏み、各項目に記載して、給与明細書を発行し、労働者に配付します。

社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険)や雇用保険料の計算式は以下の通りです。

社会保険料の計算式
健康保険標準報酬月額×健康保険料率÷2
厚生年金保険 標準報酬月額×18.300%÷2
介護保険標準報酬月額×介護保険料率÷2
雇用保険 給与額または賞与額×雇用保険料率

Web給与明細でペーパーレスを実現

近年、給与明細書の発行は「オフィスステーション 給与明細」をはじめとしたクラウド管理システムを活用し、紙からWebで発行する企業が増えています。

所得税法には「交付を受ける従業員が承諾すれば明細の電子化は可能なものの、書面での交付請求があれば応じなければならない」と規定されており、いつでも印刷できる状態(電子化)であれば、給与明細をWeb上で発行できます。

【Web給与明細のメリット】

  • ペーパーレス化によるコスト削減
  • 給与明細作成・管理の業務削減による効率化を実現
  • アフターフォロー業務が不要
  • 紛失リスクの防止などのセキュリティ強化(個人情報保護)

ペーパーレス化(給与明細の電子化)により、印刷代や郵送代、発行業務の人件費を削減できます。特に社員数が多い企業や全国に支店を有する企業は高いコスト削減効果を得られます。

また、税制改正による税率変更にも自動対応でき、Excelを使った計算による人的ミスを防ぎ、間違いを起こしません。

紙面による給与明細は紛失リスクも高く、個人情報保護の観点からWeb給与明細はセキュリティ強化にも効果があります。

紛失による再発行や、過去分の明細書の確認作業といったアフターフォローが必要なくなるため、給与明細の管理・運用に必要な労力を短縮できます。

一方で、Web給与明細を導入する際は従業員への周知が必要です。
人事・労務担当者や従業員にとって、使いやすく、確実に利用できるWeb給与明細システムを選びましょう。

給与明細:まとめ

労働保険の保険料の徴収や控除額の通知が企業の義務となっているため、事実上、給与明細の発行は義務となります。

一方で、従業員数が多い、雇用形態が幅広く、人材の入れ替わりが激しい企業はWeb給与明細に移行することで、人的ミスの防止やコスト削減・業務効率化が可能です。

ペーパーレス化による職場環境の改善は、テレワークをはじめとした従業員のワークライフバランスの実現にもつながります。

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