この記事でわかること・結論
- 扶養控除等(異動)申告書とは、扶養控除の計算が必要かどうかを確認する書類のこと
- 扶養控除等(異動)申告書を提出しない場合、扶養控除ができず還付に影響がでたり、所得税の課税区分で不利になる可能性がある
- 国税庁のWebサイトからダウンロードすることで入手できる。基本的に会社が従業員に渡す
この記事でわかること・結論
扶養控除等(異動)申告書とは、条件を満たした従業員を雇用する事業者が期限内に所定の窓口へ提出する必要があります。提出しなければ年末調整や源泉徴収などに影響がおよぶため、確実に手続きを進めることが大切です。
本記事では、扶養控除等(異動)申告書の役割や提出先、書き方、提出期限などについて詳しく解説します。
目次
扶養控除等(異動)申告書とは、正式名称を「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といい、給与所得者が扶養控除を受ける際に事業者が所定の窓口へ提出する書類のことです。
給与所得者が配偶者や親族を養っている場合、所得控除の一つである扶養控除を受けることができます。所得税や住民税は所得をもとに計算するため、扶養控除を受けることで税負担を軽減できます。
従業員から扶養控除等(異動)申告書の提出を受けたものの、扶養控除の対象となる親族に誤りが見られる場合があります。扶養親族と控除対象扶養親族について確認しておきましょう。
扶養親族とは、その年度の12月31日の時点で4つの要件を満たしている親族のことです。
続いて、扶養控除の対象となる控除対象扶養親族について見ていきましょう。控除対象扶養親族とは、該当年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族のことです。
ただし2023年分からは、国内に住居を持っていないか継続して1年以上の住居を持っていない「非居住者」の扶養親族については、以下のいずれかに該当する人のみ控除対象扶養親族となります。
共働きの場合、子供を控除対象扶養親族として申告できるのは、夫と妻のいずれかのみです。両親ともに控除対象扶養親族に子供を申告し、より多くの扶養控除をおこなうことは認められていません。
扶養控除等(異動)申告書の提出期限は、該当年度の最後の給与を支払う日の前日です。これは、従業員が事業者に提出する期限です。また翌年分の扶養控除等(異動)申告書は、最初の給与を支払う日の前日となっています。
ただし、年末調整や源泉徴収などの業務が圧迫する恐れがあるため、提出期限を別で設けることが重要です。本来の提出期限は様式の裏面に記載されているため、説明しなければその期限までに提出すれば良いと判断される可能性があります。
年末は業務が多忙になりやすいため、適切な提出期限を従業員へ確実に伝えましょう。
扶養控除等(異動)申告書の入手方法は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。基本的に会社が従業員に渡します。何らかの事情で渡すことが難しい場合は、国税庁の扶養控除等(異動)申告書のダウンロードページを案内しましょう。
扶養控除等(異動)申告書は、扶養控除の計算が必要かどうかを確認する書類です。扶養控除の計算が必要なのは年末調整のときです。そのため、年末調整の対象者は扶養控除等(異動)申告書を提出しなければなりません。
年末調整とは、所得税の過不足を精算する手続きのことです。給与所得者は、所得税を源泉徴収の仕組みによって会社が代わりに納税しています。源泉徴収では一律の割合を納税するため、実際に納付が必要な税額よりも高くなったり低くなったりします。
その過不足を計算し、追加で納付または還付するのが年末調整です。年末調整の対象者は以下のとおりです。
子供や学生でも、上記に当てはまる場合は扶養控除等(異動)申告書の提出が必要です。扶養控除等(異動)申告書は、転職先で上記の条件に当てはまる場合は改めて提出しなければなりません。
令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書をダウンロードする>>
扶養控除等(異動)申告書は、提出が必要なケースに該当していても以下にも該当する場合は提出が不要です。
扶養控除等(異動)申告書を提出しない場合、次の問題が起こります。それぞれ詳しく解説します。
扶養控除等(異動)申告書は、扶養控除の有無やその金額計算などに使用します。従業員が提出しない場合、会社は年末調整を適切におこなえません。本来ならば控除できる金額を控除できなくなり、所得税の還付や追加納付などに支障をきたします。
扶養控除の金額は次のとおりです。
区分 | 控除額 |
---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
特定扶養親族 | 63万円 |
老人扶養親族(同居老親等以外の者) | 48万円 |
老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 |
このように多額の所得控除を受けられず、所得税が高くなる恐れがあります。
扶養控除等(異動)申告書は、扶養控除の有無の確認だけでなく、所得税の課税区分を決定する重要な書類です。
扶養控除等(異動)申告書の提出があれば、従業員の課税区分は源泉徴収税額表の「甲」欄が適用されます。提出がない場合は「甲」欄に比べて所得税が高い「乙」欄の適用となります。
従業員が所得税を通常よりも多く納めることになるため、その旨を伝えて提出を求めることが大切です。
扶養控除等(異動)申告書の書き方について、以下のポイントを押さえておきましょう。
扶養控除等(異動)申告書の作成時には、以下2点を確認しておきましょう。
2016年1月以降分の扶養控除等(異動)申告書には、従業員と控除対象扶養親族のマイナンバー(個人番号)の記載が必要です。
従来では提出者の押印が必要でしたが、2021年から廃止されました。
扶養控除等(異動)申告書は、以下の区分に分かれています。
それぞれの書き方について詳しく解説します。
基本情報には、以下の項目を記載します。
源泉控除対象の配偶者がいる場合、その情報を記載する欄です。
控除対象扶養親族について、以下の情報を記載します。
従業員本人や扶養親族が障害者、寡婦、ひとり親または勤労学生の場合にチェックします。障害者には以下3つの区分があります。
身体障害者の等級や療育手帳のレベルなどの基準があります。該当する扶養親族に詳細を確認しましょう。
一つの世帯に複数の所得者がいる場合、誰がどの扶養親族を申告するかは自由です。ただし、扶養親族を重複して申告することはできません。同じ世帯の別の所得者と扶養親族を分けて申告する場合は、その情報を記載します。
住民税に関する事項は、下記に該当する場合にのみ記入します。
扶養親族の状況が変わったことで扶養控除等(異動)申告書の内容に変更が生じた場合は、次の給与支給日の前日までに新たに作成した申告書の提出をする必要があります。ただし、提出済みの申告書の該当欄を修正する形でも問題ありません。
従業員は、扶養親族の状況が変わった際に申告書の再提出や訂正が必要なことを知らない可能性があります。そのため、あらかじめ扶養親族の状況が変わった際は速やかに申告するように伝えておくことが大切です。
扶養控除等(異動)申告書は、年末調整や源泉徴収を適切におこなうために必要な書類です。従業員に様式を渡し、期日を決めて提出を求める必要があります。今回、解説した内容を参考に、扶養控除等(異動)申告書を適切に取り扱いましょう。
30歳で税理士試験5科目合格(簿記論、財務諸表論、法人税、相続税、消費税)。複数の会計事務所に勤務し、個人商店から売上100億円企業まで税務顧問していた実績あり。短期的な目線で物事を判断せず、社長の頭の中をアウトプットし可視化することで、本当にやりたいことや、やるべきことを明確にし、実現するために実行支援を行っている。
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