出勤簿は組織に所属するすべての労働者に関する勤怠情報を管理する帳簿のことを言います。主に出退勤や動労時間などの記載項目を、作成して保存する義務があります。
出勤簿の取り扱いについては、労働基準法でしっかりと規定があるため担当者はちゃんとした理解が必要でしょう。万が一、規定を破ってしまうような状態にある時は法律違反として罰則にもなってしまうため注意しなければなりません。
この記事では、出勤簿についての基礎知識や法律で定められている保存期間、賃金台帳などとの違いについて解説します。
目次
出勤簿とは、従業員それぞれの出勤日数や出退勤時間などの勤怠情報を管理する帳簿のことを指します。会社とって従業員情報は、あらゆる面で大切な資産です。出勤簿をしっかり作成・保存しておくことで、組織としての運営にも大きく影響します。
また、出勤簿は労働基準法で定められている法定4帳簿のひとつであり、適切に作成・保管が事業者に義務づけられています。
上記の法定4帳簿は、事業場ごとに保管しなければならないものとして労働基準法に明記されています。出勤簿は特に、給与計算のベースになる書類であるため重要度が高いでしょう。
出勤簿の内容に不備がある場合や、後述している保存期間を守れない場合は労働基準法違反となり、罰則が科せられるため注意しましょう。
出勤簿に記載しなければならない対象者は、その組織に属しているすべての労働者です。つまり正社員をはじめ、契約社員や派遣社員、パートタイム・アルバイトなども出勤簿に記載する対象者となります。
また「管理監督者」と呼ばれる立場の従業員も同じく対象者となります。管理監督者とは経営者と同等権限のある従業員を指します。厚生労働省の資料では以下のように定義されています。
「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します。
上記のような管理監督者は、2019年4月の労働基準法改正において出勤簿の対象者となりました。また、同時期に労働安全衛生法の改正もあったことで、安全衛生管理の面でも管理監督者についての労働時間管理をする意味が強まりました。
出勤簿にはどんな内容を記載しておくべきなのでしょうか。主に従業員の勤怠情報について、以下のような項目で詳細に記載します。
上記に関して、より詳細な記載でなければ内容不備とみなされてしまうため丁寧に作成しましょう。「何月何日に、どんな勤務体系で、何時から何時まで働いたか」などが分かるようにしておけば問題ないでしょう。
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賃金台帳は、労働基準法第108条で作成と保存が定められている帳簿であり、労働者に関するあらゆる項目を記載します。内容だけ見ると出勤簿と限りなく似ているような気もしますが、どんな違いがあるのでしょうか。
また、労働者の出退勤を打刻して記録しておくタイムカードとの違いもあわせて確認しておきましょう。
出勤簿は記載すべき項目が揃っているならば、フォーマット様式に決まりがありません。賃金台帳には「様式第20号」などが厚生労働省のWebサイトに用意されているため、ダウンロードして使用します。
また、出勤簿と賃金台帳の記載内容はほとんど同じですが、賃金台帳の方には控除項目などが記載されるため少しだけ詳細です。
出勤簿とタイムカードは、似ているようで実は大きく異なります。2019年4月の労働基準法改正とも関連しているため理解しておきましょう。
どちらも出退勤の情報を記載しておくためのものですが、タイムカードは基本的に自己申告であるため労働時間の正確性が保障できるものではありません。労働時間の自己申告制については、2019年の労働基準法改正によってより厳しくなりました。
つまり、出勤簿とタイムカードは「客観的な信用度」において大きく異なると言えるでしょう。実労働時間は大切な情報であるため、適正な記録である必要があるのです。
出勤簿は事業者ごとに作成・保存が義務づけられていますが、どのくらいの期間保存しなければならないのでしょうか。労働基準法第109条では、記録の保存に関して以下のように明記されており5年間の保存義務があります。このなかの「その他労働関係に関する重要な書類」には出勤簿が該当します。
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
また、保存期間の起算日(第1日目となる日)は、賃金台帳は支払期日が最後の記入をした日、完結の日より遅い場合は支払期日となります。ちなみに賃金台帳やタイムカードの保存期間は原則5年(当面の間は3年)です。しかし、賃金台帳と源泉徴収簿を兼用している場合はどちらも7年の保存義務があります。
授業員ごとの勤怠管理はとても複雑化します。出勤簿などを紙で対応している、もしくは手入力でデータを作成しているという場合は、工数をかなり要してしまいます。
打刻や自動計算機能が備わっているため、従業員分の情報をすべて手入力する必要がありません。書類作成に必要なデータが自動集計され、そのまま抽出して書類作成ができるため工数削減にもなります。
また、出退勤がタイムカードからPCや勤怠管理アプリなどになることで、従業員がノンストレスに対応してくれるというメリットもあります。ほかにもメリットや相乗効果が豊富にあるため、気になる担当者の方・企業さまはぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
出勤簿は賃金台帳などと並ぶ法定4帳簿のひとつであり、組織にとって重要な従業員の勤怠情報をあらわした書類です。
労働基準法によって各事業所ごとでの作成・保存が義務となっており、違反すれば罰則が設けられているため、担当者はしっかりと対応する必要があります。保存期間は、従業員の最終出勤日から5年間となるため覚えておきましょう。
記載内容や保存期間のルールをよく理解しながら適切に管理することが求められます。より正確に作成・保管するために「勤怠管理システム」などのソフトを利用するのもかなりおすすめです。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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