接触型ICカード方式
「接触型ICカード方式」は、ICカード表面にある、ICチップと電極が組み込まれた部分を、カードリーダーに差し込み、ICチップの情報を読み取ります。
ICチップ部分をカードリーダーに接触させる必要があるため、不正打刻が起こりにくいことが特長です。
従業員の労働時間の管理や給与計算にかかわる勤怠管理は、企業によってさまざまな方法で管理されています。
従来は「タイムカード」による勤怠管理が主流でしたが、近年は「ICカード」方式による勤怠管理を導入する企業が増えています。
タイムカードとICカードの違いや、メリット・デメリットについて解説します。
目次
タイムカードとICカードによる勤怠管理は一見同じようなものだと思われますが、仕組みや管理方法が全く異なります。
タイムカードによる勤怠管理は紙のタイムカードをタイムレコーダーに差し込み、出勤時と退勤時に打刻します。
打刻されたタイムカードは勤怠締め日に回収され、各従業員の勤務時間を集計し、給与計算をおこないます。
ICカードによる勤怠管理はICカード内に内蔵されている固有の識別番号(および従業員個人情報)をもとにして、ICカードスキャナーで読み込み、出勤・退勤時間を記録して管理します。
勤怠締め日に、機械(システム)に集約されたデータを利用し、給与計算をおこないます。
ICカード方式による勤怠管理は「接触型ICカード」と「非接触型ICカード」の2種類があります。
接触型ICカード方式
「接触型ICカード方式」は、ICカード表面にある、ICチップと電極が組み込まれた部分を、カードリーダーに差し込み、ICチップの情報を読み取ります。
ICチップ部分をカードリーダーに接触させる必要があるため、不正打刻が起こりにくいことが特長です。
非接触型ICカード方式
「非接触型ICカード方式」は、カードの内部にICチップとともに搭載されたアンテナで電波を受信するため、カードが直接カードリーダーに触れなくても情報を読み取れます。
日頃利用する、交通系ICカードや電子マネー(プリペイドカード)などは、非接触型ICカードに該当します。
勤怠管理、特に従来のタイムカードによる勤怠管理の場合、以下の課題・問題点があげられます。
タイムカードによる勤怠管理の場合、一般的に従業員それぞれのタイムカードと、タイムレコーダーは共有スペースに置かれている場合が多いため、以下の「不正打刻」のリスクが高まります。
勤怠管理方法はさまざまな手段がありますが、勤怠締め日の確認時に打刻漏れや不備があった場合、その都度対応しなければならないため、時間と労力がかかり、作業効率が下がってしまいます。
特に手動によるタイムカード打刻は打刻漏れのリスクが高く、手書きによる記録の場合、管理者の承認印が必要となるなど管理が複雑となるため、非効率な勤怠管理となりかねません。
ICカードによる勤怠管理では「業務効率化」や「コスト削減」が期待できます。
ICカードによる勤怠管理の場合、カードリーダーにかざす(または差し込む)のみで打刻(記録)でき、従来のタイムカードのような打刻漏れや打刻ミスが起こりにくいです。
また、タイムカードの場合は手動による打刻位置のズレや、印字がうまくいかない場合もあり、修正や確認に手間がかかります。しかし、ICカードの場合、データとして記録が残るため、そのような修正・確認作業が発生しません。
さらに、タイムカードによる集計に比べ、データ(ICチップ)による管理が可能なため、集計作業も効率よくおこなえ、勤怠管理の業務効率化の向上が期待できます。
従来のタイムカードによる勤怠管理では、従業員ひとりにつき、毎月1枚のタイムカードが必要となります。ICカードの場合、専用スキャナーと従業員ひとりにつき1枚のICカードがあれば管理可能なため、コストをおさえた勤怠管理がおこなえます。
ICカードも、ものによりますが、低コストのカードもあります。初期投資さえすれば、長期的にみた場合、ICカードによる勤怠管理はコスト削減につながります。
ICカードによる勤怠管理について、具体的な管理方法を2つ紹介します。
勤怠情報をスキャナーで読み取る場合、「専用スキャナー」を使用します。
専用スキャナーを使用する場合は、従業員が必ず出入りする、出入り口などに設置することが一般的です。
勤怠情報をタブレッドで読みとる場合は、「従業員共有タブレッド」などを使用します。
ICカードをタブレットにかざすことで打刻が可能です。
ICカードによる勤怠管理の特徴を踏まえ、メリット・デメリットについて紹介します。
ICカードによる勤怠管理には、以下のメリットがあります。
ICカードによる勤怠管理は即時に労働時間が反映・記録されるため、データの集計が簡単かつ楽であることがメリットのひとつです。
手動入力ではなく、自動入力(登録)された勤怠時間のデータのため、入力ミスなど人為的要因による勤怠管理ミスも防止しやすくなります。
ICカードは基本的に個人管理のため、「第三者が本人の代わりに打刻する」などの不正打刻を防止できます。
勤怠管理に使用するICカードの種類はさまざまですが、低コストのICカードの使用や、既に従業員が所有している交通系ICカードを活用することで、勤怠管理にかかるコストをおさえられます。
ICカードによる勤怠管理には、以下のデメリットがあります。
ICカードは基本的に個人管理となるため、紛失してしまう可能性が高くなります。
ICカードを紛失した場合、再発行に時間や費用もかかるため、極力紛失しないように従業員に注意喚起をおこなうなど対策を講じておくことが大切です。
ICカードによる勤怠管理は必ずしも打刻漏れのリスクがゼロではありません。
そのため、打刻漏れがないように1週間など一定期間で管理者がチェックをおこなうなど管理体制を整えることが大切です。
ICカードによる勤怠管理を導入する際は、ICカード専用のスキャナーと従業員それぞれのICカードを揃える必要があるため、初期費用がかかります。
しかし、初期費用は必ず必要となる費用であり、従来のタイムカードのように、毎月紙のタイムカードを購入するような費用は不要であるため、長期的にみた場合は「低コスト」でおさえられます。
ICカードによる勤怠管理を導入する際は、以下のポイントをおさえて検討しましょう。
ICカード方式の勤怠管理システムには、システム対応のICカードのほかにも、交通系ICカードや電子マネー、社員証などさまざまなカードに対応しているものがあります。
たとえば、カード忘れによる「打刻漏れ」のリスクを減らしたい場合は、必ず携帯する「社員証」による打刻が可能なシステムであれば、改善が可能です。
また、「接触型ICカード」と「非接触型ICカード」による違いもあるため、導入・管理のしやすさなどを踏まえ、システムを検討しましょう。
新たなシステムを導入する際は、わからないことも多く初期トラブルも発生しやすいです。
そのため、万が一のトラブルに備え、電話やリモートによるサポートサービスに対応しているかなど、「サポートが充実しているシステム」であることもシステムを選ぶ際のポイントのひとつです。
労働基準法第109条では、勤怠管理に使用した労働時間のデータや書類について、5年間の保管が義務づけられています。
そのため、データや書類を安全に保管するために、セキュリティ対策が万全なシステムを選ぶ必要があります。
また、交通系ICカードなど従業員個人が所有するICカードを活用する場合は、個人情報やクレジット機能の情報も扱うこととなるため、情報が漏れないようにセキュリティ管理に気をつけましょう。
ICカードによる勤怠管理を導入し、効率よく勤怠管理をおこないましょう。
ICカードを利用すれば、勤怠集計も管理しやすくなり、打刻漏れやミスが減るなど業務効率化につながります。
従来のタイムカードによる勤怠管理で「人為的ミス」や「管理のしづらさ」で頭を抱えている企業は、ICカードによる勤怠管理を検討してみてはいかがでしょうか。
勤怠管理(労働時間の管理)は労働基準法や社員の給与にかかわるため、適切におこなわねばなりません。しかし、勤怠管理の方法によっては、ミスが発生しやすいなど問題点を抱えることもあります。
ICカードによる勤怠管理の場合、「不正打刻の防止」や「業務効率化の向上」が期待できるため、今後、勤怠管理制度について改善したいと考えている企業はICカードによる勤怠管理方法がおすすめです。
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