- 従業員の退職時
- 年末調整後
- 従業員から求められたとき
源泉徴収票は従業員への発行が義務づけられている重要な書類です。
年末調整後はもちろんのこと、従業員の退職時や従業員から要請があった場合にも発行しなければなりません。
そのため、発行に携わる人事・総務担当者は、源泉徴収票の書き方をよく理解しておく必要があります。
本記事では、源泉徴収票の項目別の書き方や源泉徴収税額の計算方法などについて解説します。
源泉徴収票とは、会社が1年間に従業員に支払った給与・賞与額と、源泉徴収税額を記載した書類です。
また源泉徴収とは、会社が給与から所得税を差し引いて代わりに納付する制度です。
会社は源泉徴収した金額と正確に算出した所得税額を比較し、所得税の過不足を精算する年末調整をおこなう義務があります。
そのため年末調整をおこなう際に、源泉徴収税額を算出するために源泉徴収票を作成し、従業員に発行します。
給与支払報告書とは、従業員に給与を支払った場合に市区町村に提出するための書類です。
給与支払報告書は、給与を支払った事業所が、従業員の住んでいる市区町村に提出します。
源泉徴収票と給与支払報告書は記載内容が似ていますが、違いは提出先と提出する目的です。
源泉徴収票は所得税の納付を証明するために税務署へ提出する一方で、給与支払報告書は住民税・国民健康保険の計算のために市区町村へ提出します。
源泉徴収簿とは、従業員に支給した給与・賞与や、控除額を記載する帳簿です。
年末調整の計算を不備なくおこなうために用いられます。
そのため源泉徴収票とは異なり、源泉徴収簿は提出する義務がありません。
あくまでも正確に所得税額を算出し、源泉徴収票を不備なく発行するために作成する帳簿です。
源泉徴収票の作成は会社の義務ですが、作成するタイミングは主に以下の3つです。
従業員が退職する際は必ず源泉徴収票を発行しなければなりません。
源泉徴収票は基本的に年末に従業員に交付しますが、年の途中で退職する従業員は交付を受けられないからです。
退職者への源泉徴収票の発行は、退職日から1カ月以内が原則です。
源泉徴収票を発行することが最も多いタイミングは、年末調整の計算が完了した後です。
12月、または1月の給与明細とともに従業員に源泉徴収票を交付することが一般的です。
なお、年末調整後に発行する源泉徴収票は従業員に交付する1部以外に、税務署に1部、市区町村に2部提出するため、計4部作成する必要があります。
源泉徴収票は、ローンを組むときや賃貸契約を交わすときなどに、所得を証明する書類の一つとして用いられます。
そのため、従業員が所得を証明する必要がある際に、源泉徴収票の発行を求められることがあります。
源泉徴収票の主な項目は以下のとおりです。
そのほか、配偶者・扶養親族の有無や受給者本人の該当事項各欄など、金額以外に記載しなければならない項目もあります。
項目別の書き方については下記にて解説します。
ここからは源泉徴収票の書き方を項目別に解説します。
従業員からの提出書類や年末調整の書類などを見ながら、一つひとつ記載していきましょう。
「支払いを受ける者」には、住所やマイナンバー、氏名など、従業員本人の情報を記載します。また役職や職務の名称も併記しましょう。
ただし、従業員に交付用の源泉徴収票については、マイナンバーは記載しなくても構いません。
「種別」には支払ったお金の種別を記載します。従業員であれば「給与・賞与」、役員なら「報酬」などと表記します。
「支払金額」には、支払った総額を記載しましょう。
「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」には、支払った金額から給与所得控除額を引いた金額と、控除した所得控除の合計額を記載します。
なお、所得控除にはいくつか種類がありますが、「医療費控除」「寄附金控除」「雑損控除」を適用したい場合は、従業員が確定申告しなければなりません。
「配偶者・扶養親族の有無」には、控除対象配偶者や控除対象扶養者などの有無や人数を記載します。
従業員の家族構成によって、それぞれ記載する部分や内容が異なります。
「社会保険料等の金額」や「生命保険料の控除額」などには、適用した控除額と内訳をそれぞれ当てはまる欄に記載します。
控除対象配偶者や控除対象扶養者、16歳未満の扶養親族などの控除対象がいる場合は、それぞれの氏名とマイナンバーを記載します。
また、日本国内に住所または1年以上の居所を有していない非居住者については、区分欄に〇をつけます。
従業員が未成年者や外国人などの場合は、それぞれ当てはまる欄に〇をつけます。
従業員が年の途中に就職・退職した場合は、「就職」「退職」の欄に〇をつけ、就職・退職した年月日を記載します。
「受給者生年月日」には、従業員本人の生年月日を記載します。
「支払者の住所又は所在地、氏名又は名称」には、会社の住所・所在地・氏名・電話番号・法人番号(法人ではない場合はマイナンバー)を記載します。
源泉徴収票を作成・交付する目的の一つは、従業員に源泉徴収した額を通知することです。
ここからは源泉徴収税額の計算方法について解説します。
まず、給与収入から給与所得控除額を差し引いた「給与所得」を算出します。
給与収入とは1年間に支払った給与・賞与などの合計額を、給与所得控除額とは収入金額から概算される経費を指します。
次に給与所得から所得控除を差し引きます。
所得控除とは、一定の要件に当てはまる場合に所得から一部金額を差し引ける制度です。
所得控除には以下の15種類が存在します。
給与所得から所得控除を差し引いた後は、所得税率をかけて所得税額を計算しましょう。
累進課税制のため、所得税率は所得が増えるほど高くなります。
なお、所得税率は国税庁のWebサイトで確認できます。
復興特別所得税とは、東日本大震災に対する復興支援を目的とした特別税です。
復興特別所得税は、前項で算出した所得税率に復興特別所得税率の2.1%をかけることで算出できます。
最後に所得税と復興特別所得税を足すことで源泉徴収税額を算出できます。
つまり、全体の計算式は以下のとおりです。
源泉徴収票を作成する際は、以下のポイントに注意する必要があります。
源泉徴収票は、従業員がローンを組むときや賃貸契約を交わすときに提出することがあります。
そのため、個人情報保護の観点から従業員に交付する源泉徴収票にはマイナンバーを記載する必要はありません。
そもそも従業員に交付する源泉徴収票にはマイナンバーを記載する欄はありませんが、間違えて記載しないように注意しましょう。
ただし、税務署に提出するための源泉徴収票には記載が必要です。
源泉徴収票には1年間従業員に支払った総額を記載する欄がありますが、この支払金額に通勤手当は含まれません。
通勤手当は非課税であるため、源泉徴収の対象にならないからです。
源泉徴収票を税務署に提出する必要があるかどうかは、給与の金額や支払い対象によって異なります。
まず、年末調整したものについては、以下に当てはまるケースが提出対象です。
また、なんらかの理由で年末調整をしなかったものについては、以下のいずれかに当てはまると提出対象となります。
源泉徴収票は従業員の承諾があれば、電子データで交付できます。
ただし、電子データが改ざんされていないことを証明するために、電子証明書を添付することが推奨されています。
源泉徴収票の項目ごとの書き方や、源泉徴収税額の計算方法などについて解説しました。
源泉徴収票は、会社が従業員に支払った給与・賞与額や源泉徴収税額を記載した重要な書類です。
従業員への交付が義務づけられており、最低でも1年に一度は必ず作成しなければなりません。
記載を誤らないためにも、本記事を参考に源泉徴収票の書き方を改めて理解しておきましょう。