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社会保険料控除とは?対象保険料と年末調整や確定申告での手続きを詳しく解説

社会保険料控除とは?対象保険料と年末調整や確定申告での手続きを詳しく解説

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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この記事でわかること・結論

  • 所得控除のうちのひとつであり利用することで所得税や住民税を軽減することができる。
  • 配偶者や子供の扶養分などの社会保険料を支払っている場合は、会社の担当者へ自己申告が必要
  • 年末調整は翌年1月31日が提出期限
  • 確定申告は翌年の2月16日から3月15日の間が提出期限

社会保険料控除とは、所得控除のうちのひとつであり利用することで所得税や住民税を軽減することができます。給与所得者であれば毎年の年末調整時に手続きをすることで社会保険料控除が受けられます。

本記事では、社会保険料控除についての基本的な内容や手続きでの必要書類などを解説します。ぜひ参考に正しく社会保険料控除を利用できるようにしておきましょう。

社会保険料控除とは

社会保険料控除とは

社会保険料控除とは所得控除のうちのひとつであり、年間(1月1日〜12月31日)で支払った社会保険料がある場合は控除を受けることが可能です。

社会保険にかかる保険料を会社との折半である社会保険料は自己負担分のみが社会保険料控除の対象となります。

POINT

所得税や住民税の税額をおさえることができる

社会保険料控除は、所得税や住民税を計算するときに用いる「所得金額」から差し引きます。そのため、各種税額のかかる金額を減らすことができるため所得税や住民税を節税することができます。

社会保険の扶養内のパートナーや子供(正確には生計を一にする配偶者や親族など)がいて、その人達の分まで社会保険料を支払っているという場合はその負担分についても社会保険料控除を受けられます。

たとえば配偶者や子供の分など支払う場合

配偶者の国民健康保険分や満20歳以上である子供の国民年金分などを負担している場合は、社会保険料控除を受けることができます。適用する際は、各種保険料の支払い金額がわかるものを用意しましょう。

また、各種社会保険料のなかでも、社会保険料控除の対象となるものが決まっているため次で解説します。

社会保険料控除の対象となる社会保険料

社会保険料控除を適用するために、対象の社会保険料を国税庁の公式Webサイトを参考に例をまとめました。

社会保険料控除の対象となる
社会保険料の一例

  • 健康保険料や厚生年金保険料
  • 国民健康保険料
  • 国民年金保険料
  • 国民年金基金
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 労働者災害補償保険料(特別加入
  • 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
  • 独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料
  • 存続厚生年金基金の加入員として負担する掛金
  • 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、恩給法等の規定による掛金または納金等

などがあります。ほかにも詳細に区分されており14項目の社会保険料が対象となります。詳しくは国税庁の「No.1130 社会保険料控除」を参考にしてみましょう。

また、パート・アルバイトや自営業者・フリーランスなどでの対象の社会保険料を負担しているのであれば社会保険料控除を利用することが可能です。

上記の社会保険料を支払っており、社会保険料控除を利用したい場合は本人からの申告が必要になるケースもあるため次で解説します。

社会保険料控除を年末調整で受けるための手続き

社会保険料控除を年末調整で受けるための手続き

社会保険料は、会社側が労働者の給料からを差し引いているため基本的には社会保険料控除の手続きは会社の担当者がやってくれます。

しかし、パートナーや子供の扶養分などの社会保険料を支払っている場合は、会社の担当者へ自己申告および年末調整書類の該当箇所への記入などが必要です。

年末調整で必要な書類

  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 該当する社会保険料控除証明書

上記のなかでも「保険料控除申告書」と「扶養控除(異動)申告書」は会社から配られるはずであるため、会社が把握していない社会保険料があるのであれば内容を記入して提出しましょう。

会社から天引きされていない社会保険料控除など予定している場合は、該当する「社会保険料控除証明書」も用意しましょう。

配偶者や親族分は、その人の社会保険料控除証明書が必要なこともある

もし配偶者や親族の社会保険料を負担していて、社会保険料控除を利用したいという場合は、本人ではなく配偶者や親族宛てに送付される社会保険料控除証明書が必要なケースもあります。たとえば国民年金保険料などは必要であるため、あらかじめ配偶者や親族に周知しておくと良いでしょう。

もし国民年金保険料などの控除証明書が手元になかった場合は、管轄の年金事務所へお問い合わせすることで再発行してもらえます。ただし1週間以上を要することもあるため早めに確認しておくと安心です。

また、同様に年の途中で会社に入った方なども、入社するまでに支払っていた社会保険料を記入しなければならないため覚えておきましょう。

年末調整で申告するときの記入方法

給与所得者の保険料控除申告書

会社から天引き以外の社会保険料を控除したい場合は、上記「給与所得者の保険料控除申告書」が交付されたら赤枠で囲っている範囲内を記入しましょう。

主に記入する項目は以下となります。スムーズな記入や提出をするためにも、特に保険料などは配偶者や親族にすぐ確認が取れるようにしておきましょう。

保険料控除申告書の記入項目

  • 社会保険料の種類
  • 保険料支払先の名称(日本年金機構など)
  • 保険料を支払うことになっている人(本来支払うべき人と、提出者との続柄)
  • あなたが本年中に支払った保険料の金額
  • 合計(控除額)

上記項目を記入したうえで、該当の社会保険料(国民年金保険料)控除証明書と一緒に会社の担当者へ提出しましょう。

給与所得者でも確定申告が必要なケース

実は、給与所得者であっても扶養など関係なく、そもそも自身で確定申告が必要であるケースもあるため解説します。

給与所得者のなかでも以下に該当する方は、自身の社会保険料についても会社側の年末調整ではなく確定申告が必要です。

給与所得者でも確定申告が必要な人

  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • ダブルワークや副業などで年間20万円以上稼いでいる人
  • 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
  • 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

上記に該当する給与所得者の方は、年末調整のタイミングではなく翌年の確定申告で社会保険料控除の手続きをしましょう。会社側は忘れずに、該当年の源泉徴収票を交付してあげましょう。

確定申告時に必要となる書類は以下です。これは上記の該当給与所得者だけではなく自営業者やフリーランスなどの方も同じであるため確認しておきましょう。

確定申告時の必要書類

  • 確定申告書
  • 該当社会保険料の支払い金額が確認できる書類

確定申告の時期は、翌年の2月16日から3月15日までの期間中です。年末調整シーズンから少し期間があるため忘れないようにしましょう。

社会保険料控除を受ける際の注意点

社会保険料控除を受ける際の注意点

社会保険料控除を受けるための注意点を解説します。

年末調整や確定申告は期限に気をつける

年末調整と確定申告は必ず期限内に提出をしましょう。年末調整は会社担当者が翌年1月31日を期限としているところが多いため間に合うように提出、もしくは会社で言われている期限を守りましょう。

確定申告は、翌年の2月16日から3月15日の間に済ませましょう。3月の終わり際は税務署などが混み、提出にかなり時間がかかることもあるため計画的に進めることをおすすめします。

扶養内である家族や親族の書類が必要

家族や親族の社会保険料を代わりに負担している場合、年末調整や確定申告時に支払った保険料金額の証明や該当の社会保険料控除証明書などが必要です。

これらの書類は、社会保険料控除の適用者(書類提出者)ではなく扶養内の家族や親族宛に届く書類などが必要になるため、スムーズに集められるように動きましょう。

社会保険料控除の業務なら給与計算システムがおすすめ

従業員拡大に伴い、ひとりひとりの給与や社会保険料の管理がかなり大変になってきます。そんな時は給与計算システム」などの業務システムを導入することで自動的に管理ができるようになります。

POINT

業務システムは普段の業務をデジタル化できる

給与計算や勤怠管理など各業務分野で存在する業務システムは、手入力や手動計算などの業務をデジタル化してくれます。各システムを連携して使用することで、大きな業務効率化を実現することも可能です。

たとえば、授業員の給与や税金の計算などの自動化や、役所などへ提出する書類の自動作成などが可能です。電子申請を利用すれば役所に行く手間も省けます。

導入の目安は「従業員が増えてきた頃」です。既に大規模な企業でまだ導入していない場合はぜひ検討することをおすすめします。年末調整時の社会保険料控除についても、12月にバタバタすることなく済むでしょう。

社会保険料控除に関するよくある質問

社会保険料控除に関するよくある質問

社会保険料控除は支払った社会保険料について全額控除となりますか?
社会保険料控除は該当年の1月1日から12月31日までに支払った、対象社会保険料に負担分が全額控除されます。扶養者などがいる場合でも、適用したい本人が代わりに負担しているのであればその分の金額も社会保険料控除の対象となります。
従業員の社会保険料負担などはどのように調べますか?
対象従業員の社会保険料負担に関しては、主に源泉徴収票で調べることができます。しかし転職前に会社に属していた場合、前の会社から天引きされた社会保険料分のみとなります。転職期間中に国民健康保険や国民年金などで支払っていた従業員に関しては、年末調整時の書類に記入してもらう必要があります。
社会保険料控除について、従業員における年末調整時の対応を教えてください。
時期になると会社から年末調整に関する書類が交付されます。会社から天引きされている社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)だけである場合は特に記入する必要はありません。その場合は自動的に毎月給与から差し引かれている社会保険料分の控除が受けられます。その他、配偶者の社会保険料負担分などがある場合は、該当箇所に必要項目を記入するおよび該当社会保険料の控除証明書などが必要です。配偶者など宛に届く書類なども支払った金額を確認するために用意する必要があるため覚えておきましょう。

まとめ

社会保険料控除とは、所得控除のひとつであり利用することで所得税や住民税などを下げることができます。適用される社会保険料には種類があり、毎月給与から差し引かれている社会保険料分などは会社が年末調整で処理してくれます。

自営業者などであれば、必ず年間の社会保険料負担を翌年の確定申告で再計算しなければなりませんが、会社勤めの方でも毎月支払っている社会保険料以外のものを負担していたり扶養家族がいたりする場合は自己申告が必要です。

税金の負担を減らすことができるため自身が支払った分の社会保険料についてはしっかりと把握しておくと良いでしょう。本記事を参考にぜひ、対象の保険料負担がある場合は社会保険料控除を利用してみてください。

みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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