この記事でわかること・結論
- 年末調整と確定申告はどちらも所得税に関する手続きという点では同じ
- 年末調整と確定申告の大きな違いは、年末調整は従業員の代わりに事業者がおこない、確定申告は本人がおこなう手続き。
- 年末調整していても副業の所得が年間20万円を超える場合は、確定申告も必要
この記事でわかること・結論
年末調整は、要件を満たした従業員がいる場合に会社がおこなうことが義務づけられています。一方、確定申告は従業員が自らおこなうものであり、必要かどうかは個々で異なります。本記事では、年末調整と確定申告の違いや手続きの流れ、重複することなどについて詳しく解説します。
目次
年末調整とは、源泉徴収によって天引きした所得税を確定し、過不足を確認する手続きです。毎月の概算と実際の所得税を比較し、年末に従業員に対して過不足分を追加徴収または還付します。
給与所得者は、月々の給与やボーナスから所得税が徴収されます。これを源泉徴収といい、一般的な会社員であれば誰もが対象です。源泉徴収では一律の税率で徴収するため、年末時点で所得税が確定した際に過不足があれば、従業員に還付または追加徴収する必要があります。
年末調整は義務化されているため、年末調整しないと多くのデメリットがあります。年末調整しないとどうなるかは以下の記事で詳しく解説しています。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を翌年の2月16日から3月15日までに税務署に報告し、所得税の確定および納付または還付を受ける手続きです。
給与所得者は年末調整で所得税が確定していますが、要件を満たした場合は確定申告も必要です。また、個人事業主のように給与所得以外の所得がある場合も確定申告が必要です。個人事業主も取引先から源泉徴収されている場合があるため、確定申告によって払いすぎた所得税が還付される可能性があります。
年末調整と確定申告には、さまざまな違いがあります。
目的は所得税の確定および納付・還付ですが、上記のように分解するとさまざまな違いがあります。それぞれ詳しく解説します。
年末調整は、対象者がいる場合に事業者がおこないます。年末調整をおこなうことは法律で義務づけられているため、例外はありません。ただし、対象者が1人もいない会社の場合は年末調整は不要です。
一方、確定申告の手続きをするのは本人です。会社は確定申告の手続きに必要な源泉徴収票
を配付するものの、確定申告に一切関わりません。そのため、確定申告の対象者かどうか調査して、従業員にアドバイスすることも不要です。
年末調整の対象期間は1月1日~12月31日です。この時期の所得にかかる所得税額を確定し、納付・還付について確認します。一般的には、年度最後の給与を支払う12月に年末調整をおこない、翌年の1月の給与支払いの際に還付または追加徴収します。
一方、確定申告も年末調整と同じく対象期間は1月1日~12月31日です。申告期間は翌年の2月16日~3月15日が通例で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のような特殊な事態では申告期間が延長される場合があります。
なお、確定申告の必要がないケースにおいて所得税の還付が必要な場合、翌年の1月1日から5年間が期限です。
年末調整と確定申告の対象者は次のとおりです。
年末調整の対象者は以下のとおりです。
年末調整の対象者の要件を満たしていても、1年間の給与総額が2,000万円以上、または災害減免法によって所得税と復興特別所得税の源泉徴収猶予や還付を受けた人は年末調整の対象外です。
確定申告の対象者は次のとおりです。
たとえば、年間所得20万円以上の個人事業主、副業で年間所得20万円以上の従業員なども確定申告をおこなう必要があります。また、年末調整の対象者ではなく、年間20万円以上の給与所得を得ている人も確定申告が必要です。
ただし、年間の給与所得が103万円以下の場合は、給与所得控除と基礎控除によって課税所得が0円になるため、所得税がかからないことから確定申告は必要ありません。
年末調整と確定申告では、適用できる控除の種類が異なります。それぞれ詳しく解説します。
このように、確定申告は年末調整よりも多くの種類の控除を適用できます。たとえば、医療費控除や寄付金控除をおこなえば、所得税が還付される可能性があります。
年末調整は、事業者がおこなわなかった場合に罰則を受ける可能性があります。確定申告は、期限までに申告や納税をしなかった場合に追加で税金の納付が求められます。それぞれの罰則について詳しく見ていきましょう。
年末調整をおこなわなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。また、年末調整をおこなったものの追加納付分を徴収し、納付しなかった場合は、10年以下の懲役または200万円以下の罰金、あるいはその両方が課せられる可能性があります。
ただし、従業員の過失によって年末調整ができなかった場合は、本人が確定申告することで所得税を確定させます。
確定申告をおこなわなかった場合、次の税が追加で発生する可能性があります。
無申告加算税は、確定申告期限後に申告を怠ったり、無申告のままだったりした場合に発生する税金で、税額に応じて課税されます。納税額が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。税務調査の通知がくる前に自主的に申告した場合は、課税割合が最大5%まで軽減されることがあります。
延滞税は、期限までに税金を納めなかった場合に追加で支払う税金で、最高税率は年14.6%です。期限後に申告した場合、延滞税が納税が遅れた日数分だけ加算されます。
年末調整と確定申告の手続きの流れについて詳しく見ていきましょう。
年末調整で所得税額が確定しているものの、確定申告も必要なケースがあります。該当する人について詳しく解説します。
年末調整後、源泉徴収票が発行されたら、確定申告のための申告書を作成します。この申告書には年末調整で精算された所得税額も含まれるため、正確な納税額を計算するには所得金額や給与額などの情報が必要です。配付された源泉徴収票を大切に保管しておくことが重要です。
会社員は年末調整を受けているものの、給与以外の所得が20万円以上の場合は確定申告が必要です。副業解禁により、多くの企業が副業を許可しています。副業で月17,000円程度の収入を得ている場合、年間の給与以外の所得が20万円を超えます。
給与以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。
年末調整は、1人につき1社でしか受けることができません。たとえば、A社とB社の2社から給与や賞与による所得を得ている場合、A社で年末調整をするとB社では年末調整がおこなえないと定められています。この場合、B社からの所得を確定申告する必要があります。
一般的には所得が多い会社で年末調整されます。
1月1日~12月31日までの総収入が2,000万円以上の場合、年末調整の対象外です。この場合は、本人による確定申告が必要です。2,000万円以上の収入があることが判明している場合は、確定申告が必要な旨を従業員に伝えておくとトラブルを防げるでしょう。
同族会社の役員が給与以外に貸付金の利子や不動産の賃貸料を受け取っている場合、年間所得が20万円以下でも確定申告が必要です。また、親族をはじめとする役員と特殊な関係にある人にも同じ要件が与えられます。
災害により住宅や家財が被害を受け、税金の支払いが困難な状況に陥った人は、災害減免法の規定により所得税の軽減または免除が適用される可能性があります。
災害減免法の適用を受けるには、確定申告書に被害状況と損害金額を記載する必要があります。被災者はこれらの条件を満たす場合、所得税の源泉徴収が猶予されたり還付を受けたりできます。
年末調整と確定申告は、どちらも所得税を確定するための手続きです。会社員は一般的に年末調整のみでよいものの、医療費控除や寄付金控除を利用したい場合や所得の要件を満たしている場合は確定申告が必要です。今回、解説した内容を参考に年末調整と確定申告の違いを理解し、適切に対応しましょう。
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