年末調整をしなかった場合のデメリット
- 税金の過払いが発生する
- 控除の申告ができない
- 罰則が科せられる
年末調整とは所得税額を正確に算出し、過不足なく納付するための手続きです。
基本的にすべての従業員に実施することが義務づけられていますが、何らかの事情で年末調整ができないことも稀にあります。
しかし、年末調整をおこなわないまま放置していると会社としての信用を失い、罰則が科せられる恐れもあるため、迅速に対応する必要があります。
本記事では年末調整をしなかった場合に発生するデメリットや対処法について解説します。
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目次
会社は給与や賞与を支払う際に、従業員が確定申告する手間を省くために源泉徴収をおこなう義務があります。
ただし、源泉徴収で差し引く額はあくまでも概算です。
そのため、年に一度、1年間の所得や控除額を再計算し、過不足を精算する手続きをおこない、調整する業務を年末調整といいます。
再計算後に正確な所得税額が源泉徴収額よりも少なければ差額を従業員に還付し、反対に多ければ不足分を従業員から徴収します。
一部のケースを除き、従業員に対して年末調整をおこなうことは会社の責務です。
年末調整を実施する際は、まず11月頃に従業員に必要となる書類を提出してもらいましょう。
書類を回収した後は、記入事項をもとに従業員一人ひとりの税額を計算します。次に計算した税額と源泉徴収税額を照らし合わせ、過不足を清算します。
最後に源泉徴収票や法定調書を作成し、翌年1月31日までに税務署や市区町村に提出すれば完了です。
年末調整で必要となる主な書類は以下の3つです。
なかでも「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は必ず必要であり、提出されていなければ年末調整を実施できません。
年末調整は基本的にすべての従業員におこなう必要があります。
仮に実施しなかった場合、以下のデメリットが発生する恐れがあります。
年末調整をしなかった場合のデメリット
それぞれ詳しく見ていきましょう。
年末調整は、毎月源泉徴収で差し引いた所得税を再計算し、過不足を精算する制度です。
そのため年末調整をしなかった場合は、所得税が過払いになっていたとしても従業員は還付を受けられません。
基本的には正確な所得税額よりも源泉徴収額の方が多くなることがほとんどであるため、従業員の負担が増加し、モチベーションの低下を招く可能性が高いです。
年末調整は正確な所得税額を計算するために、所得だけでなく各種控除の申告もおこないます。
年末調整時に受けられる主な控除は以下のとおりです。
年末調整時に受けられる主な控除
しかし、当然ですが年末調整をしなかった場合はこれらの控除を受けられません。
そのため、従業員の所得額が多く算出されてしまい、支払わなくてはならない所得税額も高くなります。
年末調整は基本的にすべての従業員に対しておこなう必要があり、所得税法で義務が課せられています。
故意に年末調整を実施していなかったことが発覚した場合、「1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」、さらに悪質だと判断された場合は「10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」といった罰則が科せられます。
また、不適切な処理が発覚したことで社会的信用や従業員からの信頼を大きく失いかねません。
業績の大幅な悪化や倒産につながる恐れもあります。
基本的に年末調整はすべての従業員が対象となります。
具体的には以下の条件に当てはまっている従業員が年末調整の対象です。
年末調整が必要となるケース
上記の条件に該当する従業員に対しては、一部のケースを除いて雇用形態や勤続年数にかかわらず年末調整を実施する義務があります。
そのため正社員のみならず、アルバイトやパートタイム社員なども年末調整の対象です。
会社の義務である年末調整ですが、一部不要となるケースもあります。
具体的には以下の条件に当てはまる従業員は年末調整の対象外です。
年末調整が不要となるケース
年間の給与額が2,000万円以上の場合は、年末調整の対象外となります。この場合、従業員が確定申告をおこないます。
一方で、年間の給与額が103万円以下の場合はそもそも所得税が課税されないため、確定申告を実施する必要もありません。
ただし源泉徴収をしていた場合は、年間の給与額が103万円以下でも還付するために年末調整を実施する必要があります。
会社が年末調整をおこなうためには、従業員から「給与所得者の扶養控除等(移動)申告書」を提出してもらう必要があります。
そのため、書類を提出していない従業員は年末調整の対象外となります。
仕事のかけもちや副業などで、2か所以上から給与を受け取っている場合でも、年末調整はどこか一つの勤務先のみで実施します。
そのため、ほかの勤務先で年末調整を受けることを選んだ従業員に対しては、年末調整を実施する必要がありません。
年末調整はあくまでも給与を支払っている方が対象となります。
業務委託契約を結んでいる方の場合は給与ではなく報酬を支払うことになるため、年末調整の対象外です。
ここからは万が一何らかの事情で年末調整ができなかった場合の対処法を解説します。
年末調整をしていないまま放置していると、会社としてより大きなダメージを受けることになるため、迅速に対応しましょう。
会社が年末調整をできなかった場合は、従業員が確定申告をおこなう必要があります。確定申告の期限は翌年2月16日から3月15日までです。
会社は速やかに確定申告時に必要な源泉徴収票を発行し、なるべく従業員の負担を軽減できるようにサポートしましょう。
還付申告制度とは正確な所得税額よりも多くの税金を納めている場合、申告することで還付を受けられる制度です。
確定申告や年末調整に似ていますが、還付申告制度は課税年度の翌年から5年間までが期限です。
そのため、年末調整や確定申告が間に合わなかったとしても、還付申告制度を利用することで従業員は税金の過払いを防げます。
還付申告制度は確定申告と同様に従業員個人がおこなう必要があるため、年末調整ができなかった場合は制度を周知しておきましょう。
年末調整をしなかった場合に発生するデメリットや対処法について解説しました。
年末調整は会社の義務であり、実施しなかった場合は脱税とみなされて罰則を受ける可能性があります。
また会社としての信頼を失い、業績に大きな影響を与える恐れもあるため、必ず忘れずに実施しましょう。
万が一年末調整ができなかったとしても、そのまま放置せずに迅速に対処し、ダメージを最小限に抑えることが大切です。