この記事でわかること
- 年末調整の提出期限・スケジュール
- 年末調整の提出が遅れた場合や、提出後に内容を変更する場合の対応
- 年末調整を怠った場合の罰則
この記事でわかること
年末調整は書類の提出期限に遅れると、従業員に確定申告をおこなってもらわなきゃいけなくなる場合があります。
また社内で年末調整を終えた後も、書類内容を変更することはできますが、1月31日以降の場合だと従業員が確定申告をしなければなりません。そのため担当者は、しっかりと提出期限を把握しておくことが重要です。
この記事では年末調整の提出期限がいつまでなのかや、提出が遅れた場合の対処法など詳しく解説します。
目次
年末調整の書類提出期限は翌年1月31日、源泉所得税の納付期限は翌年1月10日です。期限を遵守するために、社内での書類回収や計算は早めに終わらせておくことが大切です。
年末調整では、従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を必ず提出してもらう必要があります。社内での提出期限は、その年の最初に給与の支払いを受ける日の前日(転職者は転職後の最初の給与日の前日)です。
所得控除などに必要な証明書は、11月中旬〜下旬を目処に提出してもらいましょう。チェック作業のために、早めの提出を促すことをおすすめします。
なおパート・アルバイトも年末調整の対象者です。
所轄の税務署から還付金が戻ってくる時期の目安は、12月〜1月です。基本的には年末調整を完了させた時期が早いほど、還付も早くなります。
年末調整関連業務は、おおよそ下記のスケジュールで進めます。
企業 | 従業員 | |
---|---|---|
11月 | ・年内に支払う給与の確定 ・申告書や証明証などを依頼・回収 ・修正依頼等の個別対応 |
・申告書や証明証などの提出 ・不備の修正 |
12月 | ・年末調整の計算 ・所得税の過不足分の還付または追加徴収 ・年末調整関連書類の準備(法定調書・支払調書・源泉徴収票など) |
特になし |
1月 | ・源泉所得税の納付 ・税務署への年末調整関係書類の提出 ・自治体への住民税関係書類の提出 ・年末調整関連書類の保管 |
特になし |
毎月の給与・賞与を含む年間の給与を確定させます。たとえば、末締め翌月25日払いの場合、11月末には年内に支払う給与が確定しているはずです。確定した時点で、従業員に申告書・証明書の提出を促し始めましょう。
従業員に申告書や証明書の記入・提出を促し、回収します。
従業員から提出のあった申告書や証明書に誤り・不備があった場合は、従業員ごとに修正・再提出依頼などの対応をする必要があります。
申告書や証明書から控除額が分かったら、従業員の所得税を計算します。
給与から天引き(源泉徴収)している所得税と、年間所得に応じた正しい所得税の差額を、上乗せまたは差し引いて12月分の給与を従業員へ支払います。
年末調整で確定した所得税を、翌月1月10日までに管轄の税務署に納付します。
『給与支払報告書』を翌年1月31日までに所轄の自治体(市区町村)へ提出します。
年末調整関連書類は、翌年1月10日の翌日から7年間保存することが定められています。税務署長の求めにより、提出が必要となることがあります。
従業員の住んでいる市区町村の数だけ給与支払報告書を作成するため、その数が増えるほど、労務管理の負担は大きくなるでしょう。
通常、退職者の年末調整をおこなうことはありません。従業員が再就職した場合は、再就職先の会社で年末調整をおこないます。しかし以下のケースでは「再就職の見込みがない」と判断できるため、退職時に年末調整をおこないます。
以下の2つを満たす場合、年の途中であっても海外へ出国する日までに年末調整をおこないます。
なお年の途中ではなく、1年間を通して海外で勤務している人(非居住者)は、企業側ではなく本人に確定申告をおこなってもらいます。
従業員による書類提出遅れが原因の場合と、企業側の提出遅れが原因の場合に分けて、対応方法を解説します。
社内で定めている提出期限に遅れても、企業が税務署へ法定調書を提出する1月31日に間に合う場合は、法律上問題はありません。
1月31日に間に合わなかった場合は、従業員個人で確定申告をおこないってもらいます。確定申告の提出時期は、原則2月16日から3月15日です。
確定申告の期限に遅れると、従業員は『無申告加算税』や『延滞税』などのペナルティを科される可能性があります。
ペナルティ | |
---|---|
無申告課税 | 本来の納税額に加え、15%〜20%の追加税を支払わなければなりません |
延滞税 | 年7.3%〜14.6%の追加税を支払わなければなりません |
万が一、企業の提出が1月31日に遅れても、罰則を受けることはありません。数日間の遅れであれば、所轄の税務署へ連絡しておくことで提出を待ってもらえることが一般的です。
大幅に遅れた場合は、従業員一人ひとりに確定申告をおこなってもらわなくてはなりません。
また年末調整を怠った場合、脱税として10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科される可能性があります。年末調整しないとどうなるかは以下の記事で詳しく解説しています。
11月頃に従業員から書類を回収してから12月31日までに状況が変わった場合、年末調整をやり直す必要があります。なお1月1日以降は、翌年の年末調整での対応です。
法定期限の1月31日までに提出に間に合う場合、年末調整のやり直しは可能です。1月31日以降の場合、従業員個人で確定申告をおこなってもらいます。
以下のような所得控除に関する変更があり、還付金が発生する場合には訂正が必要です。
扶養人数の変更 | 結婚・出産・離婚などの理由で扶養人数の変更があった場合、年末調整を訂正 |
---|---|
保険の加入 | 新たに保険に加入し、生命保険料や地震保険料を支払った場合、所得税が増えるため年末調整を訂正 |
一方で、申告書の内容に誤りがあり追加の徴収が発生する場合、直ちに年末調整をやり直し、不足分を納付しなければなりません。
給与・賞与の追加支払いがあった場合は、所得税の不足分を徴収しなければなりません。企業側の都合のため、企業側での処理が基本です。
企業は提出期限に間に合うよう、年末調整業務を進めなきゃいけません。あらかじめ発生しそうなトラブルを想定し、予防策を実施することがおすすめです。
よくあるトラブル
対処方法
また年末調整業務は、会計事務所に代行してもらうことも可能です。会計事務所の業務内容について詳しくは「年末調整も担当!会計事務所での仕事内容をわかりやすく解説|アカウントエージェント」の記事も参考にしてみてください。
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