最近は副業を認めている企業が多く、徐々に副業をする人が増えてきました。
それに伴って、年末調整で「自社だけで仕事をしている従業員と複数の仕事をしている従業員では、なにか違いがあるのだろうか?」と疑問を持たれる年末調整担当者が増えています。
この記事では、副業をしている従業員の年末調整について解説します。
目次
従業員が自社以外で仕事をしている(副業をしている)場合、いくつかのケースが考えられます。
個人事業を営んでいる場合、自社だけで仕事をしている従業員と全く同じ手続きをおこなっても問題ありません。
所得税については自社で年末調整をおこない、源泉徴収票を発行すれば、従業員がそれをもとに確定申告をおこないますし、自社で社会保険に加入していれば個人事業を営んでいても新たに加入する必要はありません。
他の会社で役員や従業員となっている場合も、自社だけで仕事をしている従業員と全く同じ手続きをおこないましょう。
所得税については自社で年末調整をおこない、源泉徴収票を発行すれば、従業員は他の会社でも発行してもらった源泉徴収票をもとに確定申告をおこないます。
社会保険に関しては、従業員自身が年金事務所に手続きをする必要があります。会社とは関係ありませんが、手続きの必要があることを教えてあげると親切でしょう。
自社が副業な場合は、自社だけで仕事をしている従業員とは異なる手続きをする必要があります。この記事では、こちらのケースを想定して解説します。
複数の会社に勤務している方の場合、本業となるどれかひとつの会社で年末調整を受けることになります。どの仕事を本業とするか厳密には決まっていませんが、一般的には最も収入が多かったり、最も勤務時間が長かったりする勤務先を本業とします。
実務上は従業員が「扶養控除等(異動)申告書」を提出した勤務先が本業となり、年末調整をおこないます。
従業員はこの書類を同時にひとつの勤務先にしか提出できませんから、提出を受けた場合には他の会社に提出していないかどうか確認し、万が一提出している場合には、自社に提出する必要がないことを伝えましょう。
ただし、10月にA社を退社して11月にB社に入社したような場合には、同時に提出しているわけではありませんからA社・B社の両方に提出しても問題ありません。
副業勤務でも年末調整は必須です。年末調整しないとどうなるかは以下の記事で詳しく解説しています。
従業員が自社に副業として勤務している場合、年末調整のほかに源泉徴収票、社会保険の手続きも自社だけで仕事をしている方とは異なります。
従業員が他社に「扶養控除等(異動)申告書」を提出した場合、自社で年末調整をおこなう必要はありませんが源泉徴収票を発行する義務はあります。
この場合には年末調整をしていない源泉徴収票を発行するので、年末調整をした通常の源泉徴収票と書類は同じですが内容が少し異なります。
この際、自社での所得が20万円を超えている場合には確定申告をする必要がある可能性がありますので、従業員に源泉徴収票を渡す際に伝えてあげるといいでしょう。年末調整と確定申告の違いについてはこちらの記事で解説しています。
従業員が2つ以上の会社で社会保険に加入することとなった場合には「健康保険・厚生年金保険所属選択・二以上事業所勤務届」を従業員が年金事務所に提出しなければいけません。
従業員が提出しなければならない書類ですから、会社には直接関係ありません。しかし、この書類を提出する必要があることを知っている従業員の方は多くありませんので、教えてあげたほうがいいでしょう。
従業員が自社に副業として勤めている場合は、注意点が2つあります。
従業員が複数の会社に勤務している場合、
などを確認し、書面にしておくことをおすすめします。もし自社での勤務が他社の就業規則に違反している場合、その従業員が急な退職を余儀なくされるかもしれません。
さらに同業他社に勤務している場合、他社のノウハウや顧客名簿を自社が知らないうちに流用している可能性があります。同業他社に勤務している方の採用には慎重さが必要となります。
1日の勤務時間を超えて従業員に業務をおこなわせてはならず、どうしてもおこなわせる場合には事前に36協定の締結が必要です。
従業員が複数の会社に勤務している場合には、勤務時間が通算されることはご存じでしょうか?
たとえばA社で8時間労働し、その後B社で4時間労働した場合、B社での4時間の労働はすべて残業時間となります。このケースで、もしB社が36協定を締結していない場合、労働時間の最初から違法な残業をさせてしまっています。
もし従業員がA社で働いていることをB社に知らせていなかったらどうなのか、残業代はA社とB社のどちらが支払うべきなのかという問題に法的な結論が出ていませんが、このような問題があることは頭の片隅に入れておいたほうがいいでしょう。
他社に勤務しながら自社で働くことを認めることで、通常はなかなか入社してくれないような有能な人材が来てくれたり、自社ではなかなか気づくことができない視点から提案をしてもらうことができたりといったメリットが生じます。
一方、それまでには生じなかったさまざまな問題が生じる可能性もありますので、専門家のアドバイスを受けながら制度を整えることが必要です。
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