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育休中も年末調整が必要です! 控除の種類や給付金・手当が年末調整の対象になるのか徹底解説!

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育児休暇中には給付金や手当が支給されます。

一方で、育児休暇中の社員は、通常の労務管理とは異なる対応が必要です。

今回は育児休暇中の従業員の失業保険の扱いや給料金、扶養控除から年末調整を中心に解説します。

この記事でわかること

  • 育児休暇の概要と産前産後休暇との違い
  • 育児休暇での失業保険の取り扱い
  • 育児休暇中の従業員の年末調整や控除について
監修者
難波 聡明

なんば社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
https://www.namba-office.osaka.jp/

ワークスタイルコーディネーター。社会保険労務士
社会保険労務士の中でも10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛けるの社会保険労務士。

育児休暇とは

育児休暇とは

育児休暇とは、原則として子供が1歳に達するまで子供の養育を目的にした休暇です。
仕事と子育ての両立を目的にしており、社会全体への育児休業への理解を深める役割を担っています。

保育園への入所ができない場合や、本人もしくは配偶者に何らかの問題(病気、離婚、死別等)があれば、2歳までの延長が可能です。
※1歳6カ月まで、2歳までと2段階での延長申請となります。

産前産後休暇との違い

 産前産後休暇との違い

産前産後休暇とは、母体保護の見地から認められる休業です。労働基準法では、出産予定日を基準として産前6週間と産後8週間の休業が必要と定められています(産後の8週間は労働基準法で就業することが認められていません)

ただし、産休後6週間が経過し、本人の申請があり、医師が就業に支障がないと認めれば就業することが可能です。産後の6週間は、たとえ本人が希望しても就業は認められません。

産後休業と育児休業の違い
産後休業 育児休業
産前56日(8週間)まで
健康保険法の守備範囲
産後57日
雇用保険法の守備範囲
違反による罰則

6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

育児休業から貰える手当とは

育児休業から貰える手当とは

育児休業中は、失業保険含め、さまざまな手当てが用意されています。

育児休業取得後の失業保険について

従業員が育児休業を取得後、会社を退職した場合、失業保険の受給が可能です。

育児休業中は会社に在籍し、雇用保険被保険者になっています。そのため、失業保険の受給対象者となります。一方で、以下のケースも考えられます。

失業保険受給の注意点

所得が減っているため、支給される金額が減る可能性がある
退職して育児に専念する場合、失業保険が支給されない可能性がある
失業保険は就職の意思があるものの就職できないときに支給されるという趣旨であるため

自己都合による離職の場合は3カ月間の待期期間があり、支給中はハローワークの担当者と定期的な面談が必要です。
失業保険の支給は、退職日からではなく、手続きの完了日からとなります。

失業保険による支給は、所得に含まれません。

育児休暇中の給付金・手当について

産休・育児休暇中にもらえる給付金には、出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金があります。

育児休暇中の給付金・手当
出産育児一時金 妊娠4カ月(85日)以上の方が出産したときは、一児につき42万円が支給される給付金です
産前産後休業中に貰える給付金です
出産手当金 出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間を対象として支給される給付金です
産前産後休業中に貰える給付金です
育児休業給付金 1歳未満の子どもを養育する必要のある者が育児休業を取得したときに、要件を満たせば受け取れる支給金です

これら給付金や手当は所得に該当しないため、税金はかかりません。

そのため、年末調整の手続きには当てはまらず、1月~12月の期間内にこの手当のみしか収入がない場合、申告は不要です。

育児休暇中の従業員も年末調整が必要です

育児休暇中の従業員も年末調整が必要です

育児休業中の社員にも事業主が年末調整をおこないます。その際、社員から扶養控除等申告書を受け取ります。

出産・育児を理由に退職した労働者には、確定申告を自身でおこなってもらう旨を伝えます。

育児休暇中の年末調整で可能な控除

育児休暇中の年末調整で可能な控除

育児休暇中でも年末調整に関わる控除が利用きるため、人事労務担当者として年末調整で可能な控を知っておきましょう。

その他の控除は申告制です。控除に関する内容は把握し、従業員には事前に伝えておきましょう。

育児休暇中に利用できるその他の控除
住宅ローン控除 103万円以上の所得がある配偶者は控除が可能です。源泉徴収税額に負担する所得税の記載があれば、控除が可能です
生命保険料控除 生命保険に加入している場合、10月頃に発送される生命保険料控除証明書を提出することで、年収に応じた所得税・住民税の控除が可能です(その他、個人年金保険料、医療保険料も含む)
地震保険料控除 生命保険料控除と同様、年収に応じた所得税・住民税の控除が可能です
社会保険料控除 産休・育休ともに休業の「開始月」から「終了前月」までが社会保険料免除

近年、夫婦の収入合算による住宅ローンやペアローンを組んでいる方が増えています。

分担割合の内訳において、育児休暇中の本人の割合が多く、育児休暇中に所得が下がった場合、住宅ローン控除の利用ができなくなります。また、その住宅ローン控除を、配偶者に移して適用することもできません。

その他の年末調整における注意点

年末調整期間に「子供が生まれた」と連絡があった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在で16歳以上である場合に限られるため、もし年末調整期間に子どもが増えたとしても対象にはなりません。

年末調整の還付は、一般的に12月の給料日となります。

事業主側が手続き期間中に書類が揃わず、年末調整が間に合わない場合、過去5年分までであれば、確定申告で還付申告が可能です。

育児休暇とは:まとめ

育児休暇は原則、子供が1歳に達するまで子供の養育を目的にした休暇です。

育児休暇を取得している労働者がいる場合、異なる労務手続きをおこなわなければなりません。

近年、税制改革や労働者保護を目的にした働き方改革関連法案の施行が続いているため、法改正における迅速な対応が必要です。また、育児休暇を希望する従業員がいる場合はその都度、対応が必要です。

被保険者の申告が必要な手当もあるため、事前に育児休暇に関しての情報を周知しましょう。

スムーズな対応ができるよう、内容を把握しておくことに加え、気軽に質問ができる専門家を手配しておくことをおすすめします。

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