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業務委託とは 労務担当者が注意したい契約形態(請負契約・委任契約)や偽装請負のリスク、注意点を解説

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専門性を持ち、高度な知識や経験を持つ人材への業務委託は事業を促進する上では、欠かせない手段となります。

一方で、多様な人材の確保を促進させている企業の中には、従来の雇用契約だけでなく、業務委託を含む副業人材を登用する企業も増えています。

今回は、近年増えている業務委託について、解説します。

この記事でわかること

  • 業務委託の概要や契約内容の違い
  • 雇用契約との業務委託の活用について
  • 業務委託とさまざまな労働形態との違い
監修者
難波 聡明

なんば社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
https://www.namba-office.osaka.jp/

ワークスタイルコーディネーター。社会保険労務士
社会保険労務士の中でも10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛けるの社会保険労務士。

業務委託とは

業務委託とは

業務委託とは、業務の委託者とは雇用関係を結ばずに対等な立場で業務をおこなう契約形態です。

個人事業主やフリーランスといった個人と法人との契約形態と思われていますが、法人間の業務委託契約も含まれます。

業務委託は一般的に専門性の高い業務を必要な時に依頼でき、人件費などのコストも低く抑えることができます。

業務委託契約には、請負契約、委任(準委任)契約の2種類があります。

請負契約・委任契約の違い

請負契約・委任契約の違い

請負契約とは、依頼主から依頼した仕事を請負人が完成させ、その結果に対して報酬を支払う契約です。成果物が未完成および依頼主の要求水準に達していない場合、報酬を支払う義務はありません。

また、成果物に対して欠陥があった場合、依頼主は修正の依頼や損害賠償請求が可能です。

委任契約とは、当事者の一方が契約などの法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾してはじめて、効力が生じる契約です。(民法643条、旧民法643条)

法律行為とは、契約を締結するための意思表示を指し、代理人契約が該当します。

また、委任契約には準委任契約があり、委任契約とは法律行為の内容が異なります。
準委任契約は事実行為を指し、主に事務処理が該当します。

請負契約と委任契約(準委任契約)には、報酬・完成責任・業務内容の3つに大きな違いがあります。

請負契約・委任契約との違い
項目 請負契約 委任契約
報酬 成果物に対する対価 遂行する業務自体への対価
完成責任 ある ない
業務内容 製作行為に関する業務 法律行為に関する業務

準委任契約は業務内容が法律行為以外の業務を担う場合の契約形態です。

請負契約や委任契約は、会社員や契約社員とは労働条件が異なります。

会社員・契約社員は提供するものが労働力である一方、業務委託では成果物業務の遂行が提供物となります。

その他、指揮命令権の有無や労働時間の制約、社会保険の有無に違いがあります。

雇用契約か業務委託契約どっちを選ぶべき?

雇用契約か業務委託契約どっちを選ぶべき?

新規事業の創設、既存事業の拡大において、人材の確保は不可欠です。

人材の確保には、中長期的にプロジェクトを推進する人材を雇用するか、専門性の高い外部人材を登用するかのどちらかとなります。

雇用契約と業務委託契約との大きな違いの一つに、労働保険(労災保険および雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務およびその保険料の負担の有無が挙げられます。

雇用契約の場合、企業は労働保険(労災保険および雇用保険)および社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務があるとともに、これらの保険料を負担しなければなりません。

一方で、外部人材の登用では、派遣社員や日雇いなども活用できますが、専門性の高い高度な知識・経験が必要なため、業務委託契約で人材登用する企業が増えています。

(委任契約以外の)業務委託契約は、成果に対して報酬を支払うことが多く(業務委託契約は成果報酬だけではありません)、雇用契約のように依頼主(企業)は労働保険および社会保険への加入義務がありません。従って、これらの保険料を負担する必要もありません。

しかし、そもそも(委任契約以外の)業務委託は成果に対して報酬を支払う契約形態です。

そのため、基本的には人材確保の手段として活用することは不適切とされる可能性があります(偽装請負認定のリスク)。

従って、人材確保を目的の場合、直接雇用・労働者派遣が望ましいといえます。

近年では、優秀な人材を雇用契約で確保する一方で、ビジネス戦略上、成果や迅速な改革を重視する、多様な人材からビジネス機会を創出する場合は業務委託契約による外部人材の登用を導入する企業が増えています。

業務委託の注意点は

業務委託の注意点は

企業の経営戦略上、業務委託契約を推進する場合、3つの注意点を押さえておきましょう。

業務委託の注意点

  1. 常駐における偽装請負
  2. 業務委託と労働者派遣との違い
  3. 業務委託と出向との違い

常駐における偽装請負

偽装請負とは、実質的には労働者派遣に該当するにもかかわらず、業務委託を偽装している違法行為です。

偽装請負は、本来は労働者派遣契約を締結しなければいけない「直接業務遂行に関する指示等をおこなう業務」を依頼している場合に該当します。

また、労働者派遣契約の締結回避の目的がなかったとしても、その実態が労働者派遣に該当する場合、偽装請負となってしまいます。

労働者派遣契約の実態があるにもかかわらず、業務委託契約をおこなうと偽装請負になる可能性がある

業務委託と労働者派遣との違い

業務委託と労働者派遣では、目的内容が異なります。

業務委託の目的は人材確保ではなく、成果物の納品です。そのため、人材確保の手段としては望ましくありません。

一方で、労働者派遣は会社の人材不足を補うために人材を派遣し、労働力を確保することを目的にしています。

業務委託と出向との違い

出向とは、会社の業務命令で他の会社や役所の仕事につくことです。

出向は出向元と出向先で出向契約を締結し、出向先の指揮命令系統に従って、業務をおこないます。

主に人事異動に伴う契約形態です。

また、出向契約は出向元の雇用契約の一部を出向先に譲渡する雇用形態です。そのため、出向社員は出向元と出向先と二重の雇用契約を締結している点が、業務委託契約とは大きく異なります。

業務委託契約は依頼主と受託者との契約になるが、出向は出向元と出向先との二重契約になる

業務委託:まとめ

業務委託契約は、成果物に対して報酬を得る契約形態です。

そのため、人材確保を目的にした業務委託契約は指揮系統の有無によって、偽装請負に認定されるリスクがあります。

中長期的に事業を成長させるためには、企業が求めるスキルとマッチした優秀な人材と雇用契約を締結することが望ましいといえます。

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