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業務委託の勤怠管理とは?労務管理における注意点について解説

業務委託の勤怠管理とは?労務管理における注意点について解説

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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この記事でわかること

  • 業務委託契約では社員と異なり指揮命令権がなく、契約種類によって報酬計算方法が異なるため、勤怠管理に特有の注意が必要
  • 偽装請負のリスクがあり、業務委託契約は雇用契約とは異なるため、契約内容の明確化がトラブル防止に重要
  • 労務管理でトラブルを避けるためには、業務委託契約書の作成が必須

近年、働き方の多様化が進み、会社務めだけではなく、フリーランス(個人事業主)として働く人も増えています。
そのため、直接雇用のある社員だけではなく、個人事業主との業務委託によるビジネスを取り入れる企業も増えてきています。
業務委託による契約は、社員との扱いが異なるため、勤怠管理や労務管理において、いくつか注意点があります。
業務委託における勤怠管理および労務管理について解説します。

業務委託とは

業務委託とは

業務委託(契約)とは、企業が外部の業者や、個人事業主・フリーランスに、「業務を委託する」際に結ばれる契約形式です。
近年ではビジネスの場で当たり前のように用いられている「業務委託(契約)」ですが、民法には、業務委託(「請負契約」や「委任契約」)についての規定はあるものの、「業務委託契約」という名称の契約は存在しません。
そのため、「業務委託契約」という契約名であっても、内容は、次に紹介する「請負契約」や「委任契約(準委任契約)」の性質を有しています。

業務委託の契約の種類

業務委託は3つの種類に分類されます。

・請負契約
請負契約とは、指定の成果物の提出に対し、報酬が支払われる契約のことです。
提出納期や方法は、企業と個人事業主(フリーランス)間で自由に定めることができます。

・委任契約
委任契約とは、一定期間に一定の業務をおこなうことに対し、報酬が支払われる契約のことです。
請負契約が成果や納品物をあげることを目的としていることに対し、委任契約は、業務を遂行することを目的としています。
委任契約は、民法643条で、「当事者の一方が法律行為をおこなうことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる」とされています。

・準委任契約
準委任契約とは、委任契約と同じく、業務遂行を目的とした契約形式です。
委任契約が「法律行為」を受託する契約であることに対し、準委任契約では、法律行為以外の事実行為(事務処理)を受託します。
また、準委任契約には、2020年4月1日に施行された民法改正により、成果完成型と履行割合型の類型があることが明文化されました。

業務委託と雇用契約の違い

業務委託は雇用契約と違い、使用者・労働者の関係性がありません。
通常、企業においては、企業が労働者を雇い、使用者と労働者という関係性のもと、雇用契約が締結され、企業(使用者)から労働者への指揮命令権が発生します。
しかし、業務委託による契約は、事業者同士の契約であり、業務を委託する企業側に、指揮命令権は発生せず、対等な立場での契約となります。

業務委託の勤怠管理における注意点

業務委託の勤怠管理における注意点

業務委託による契約の場合、契約を締結した個人事業主(フリーランス)を、社内で雇う労働者と同じように扱うことができないため、勤怠管理においても、いくつか注意点があります。

指揮命令を出してはいけない

業務委託を締結している個人事業主(フリーランス)に対し、企業側は指揮命令を出せません。そのため、「作業開始時刻や作業終了時刻」など
の指定ができないため、「勤怠管理ができない」ということとなります。
そのため、企業側は、作業の進め方はすべて、個人事業主(フリーランス)自らが設定して動くという点に注意し、リスクなども考慮したうえで、依頼する必要があります。

偽装請負に注意

偽装請負とは、個人事業主(フリーランス)と業務委託契約を締結しているにもかかわらず、実質的に通常の社員(雇用契約)と同等の扱いをしていることをいいます。
雇用契約の場合、原則として企業は、労働者を解雇することができず、社会保険料の負担義務が発生するなど、業務委託契約に比べ、責任や負担が大きくなります。
そのため、雇用契約ではなく業務委託契約を結び、業務委託の契約内容に反する業務を遂行させ、企業の負担を少なくしようとする偽装請負が発生してしまうこともあります。
偽装請負は、労働基準法をはじめとする労働関連法に違反する行為であり、場合によっては「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられることもあります。
企業の社会的信用を守るためにも、偽装請負にならないように注意しましょう。

契約種類によって報酬計算方法が異なる

業務委託における勤怠管理(労務管理)では、契約種類によって報酬計算方法が異なる点にも注意が必要です。
請負契約の場合、成果物に対して報酬を支払うため、比較的計算は容易であるといえますが、委任契約(準委任契約)の場合、業務の遂行に対して報酬を支払うため、どのように報酬を算出するのか、あらかじめ定めておく必要があります。
委任契約(準委任契約)では、受注数などに応じた成果報酬型や、単発の案件ごとに報酬を支払う単発業務型が採用されています。
また、業務委託による契約は、働き方の柔軟性が高いため、企業に常駐するタイプの働き方も多くみられます。そのような場合、時間給制による報酬計算が採用されることがありますが、労働時間を管理するため、雇用契約と混同されやすく、注意が必要です。
トラブルにならないために、事前に契約書などを通し、認識をすり合わせておくことが大切です。

業務委託の勤怠(労務)管理でトラブルを回避するためには

業務委託の勤怠(労務)管理でトラブルを回避するためには

業務委託における勤怠および労務管理で、トラブルを回避するためには、「業務委託契約書」などを作成・締結し、契約内容や報酬の計算方法などについて、認識をすり合わせておくことが重要です。

業務委託契約書を作成する

業務委託契約書を作成せず、業務委託に業務を遂行することも不可能ではありませんが、リスクが伴い、トラブルも発生しやすくなります。
個人事業主(フリーランス)や外部の業者に業務を委託する際は、必ず業務委託契約書を作成しましょう。
業務委託契約書では、主に以下の内容を記載します。

・業務内容
・報酬
・支払条件
・秘密保持
・契約期間
・禁止事項
など

まとめ

働き方の多様性に合わせ、多くの企業では、個人事業主(フリーランス)との業務委託による契約で、業務を委託する機会が増えています。
業務委託の場合、社員との雇用契約とは異なる契約内容であるため、業務委託における労務(勤怠)管理では、いくつか注意しなければなりません。
業務委託をおこなう際は、トラブルや違反行為を防止するためにも、「業務委託契約書」を作成し、双方が安心して委託・受託できる関係を築きましょう。

みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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