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業務委託でのシフト提出は可能?違法となる可能性と対策

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企業は人手不足を補う目的、あるいは専門スキルを利用する目的で、外部に業務委託を依頼します。業務委託先にシフト提出を求めることは可能でしょうか。
本記事では、業務委託契約におけるシフト提出の違法性や、偽装請負となった場合の罰則・リスク、判断基準や対策について解説します。

この記事でわかること

  • 業務委託でのシフト提出は違法となるのか
  • 偽装請負で科せられる罰則とは
  • 偽装請負を防ぐための対策
監修者
蓑田 真吾

みのだ社会保険労務士事務所 社会保険労務士
https://www.minodashahorou.com/

大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。 約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。 社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。

業務委託でのシフト提出は違法(偽装請負)か

業務委託でのシフト提出は違法(偽装請負)か

業務委託でのシフト提出すべてが違法になるとは限りません。そもそも「業務委託契約」は「雇用契約」と異なり、指揮命令権をもちません。委託先の働く場所や時間を基本的に指定、管理できず、請負人の意思で決められます。

飲食店や運送会社など、時間の制約が関係している業種では、委託先にシフト提出を求めることがあるかもしれません。「何時にこの場所にいてもらいたい」という要望もあります。
しかし、業務を委託に進めるために、おおよその都合を確認することはできても、細かな時間指定を求めることは違法となりかねません。

休みの日に連絡や休日出勤を求められる?

たとえば、通信業の例です。「シフトでは休みとなっていた日に電話がかかってきて別現場へのヘルプに呼ばれたが、『移動に1時間かかる』と伝えたところ、業務拒否だとして謹慎処分を受けた」というケースでは、発注者に指揮命令権があるとされ、偽装請負となる可能性が高いです。

業務委託先が示している休日に、業務を無理強いできません。また、休日に電話をかけて出なかったとしても、委託先を責められません。もし、連絡や休日出勤を強制した場合には、指揮命令権をもつとの認識になるでしょう。

偽装請負となった場合の罰則・リスク

偽装請負となった場合の罰則・リスク

偽装請負とは、実質的には労働者として働かせているにもかかわらず、業務委託として契約を偽装する違法行為です。「労働者派遣法」や「職業安定法」で禁止されています。先ほどの例にあったような指揮命令権をもつ業務委託は、偽装請負に該当する可能性が高まるでしょう。

偽装請負として認められれば、以下の罰則を科されるかもしれません。

労働者供給となった場合の権利侵害リスク

偽装請負として労働者を雇用していると認められた場合には、労働基準法などに基づいて、労働者がもつ権利を侵害していることにもなりかねません。
具体的には、以下のような権利を守る必要があります。

・1日8時間、週40時間の「法定労働時間」を超えた時間の残業代を支払う
・都道府県の定める最低賃金以上を支払う
・健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を一部負担する
・条件を満たした労働者には、有給休暇を付与する
・客観的・合理的な理由なく、相当な理由がなければ、労働者を解雇できない
・業務で使用する器具や機械を準備する

業務委託でも偽装請負を疑われる判断基準

業務委託でも偽装請負を疑われる判断基準

偽装請負の判断基準は、「指揮命令権があるかどうか」です。
そもそも指揮命令権とは、雇用契約に基づき、雇用主が労働者に対して業務に関する指示や命令を出す権利のこと。雇用契約を結んでいれば、業務上の指示・命令を出せますが、業務委託先に対して、契約の範疇を超えた指示・命令を出せません。

偽装請負であるかどうかは、業務委託の仕方によって総合的に判断されます。
具体的なポイントを絞って見ていきましょう。

・指揮命令権がない
(業務委託となる)
・指揮命令権がある
(労働供給となる)
業務依頼の諾否 ・諾否できる ・諾否できない
拘束性 ・拘束性はない ・拘束性がある

業務依頼の諾否

業務を依頼したときに、受ける・受けないを本人が判断できるかどうかは、もっとも重要なポイントです。
通信業の例のように、仮に休日出勤を断ったとしても、それを理由に謹慎処分を下すことは、指揮命令権があると認める行為といえます。一般の従業員が雇用主から休日出勤を求められた場合は、基本的に対応しますが、それを業務委託先に求めることはできません。

拘束性

業務の時間・場所を指定、管理することは、指揮命令権を行使するものとなり得ます。時間・場所を拘束しない場合は業務委託となる可能性が、時間・場所を拘束する場合は労働供給となる可能性が高まるでしょう。

シフト提出は、時間・場所の指定、管理に該当すると考えられます。
「平日の月曜日〜木曜日に作業できる」程度のシフト提出なら問題ないかもしれません。しかし、「22日と25日の10時〜15時に作業してください」と細かな時間を指定するシフト提出は、業務委託の範疇を超える可能性が高くなるかもしれません。

偽装請負に当たる具体例

シフト提出に限らず、偽装請負に当たるケースはさまざまです。
厚生労働省東京労働局は、偽装請負の代表例を下記4つに分類しています。

偽装請負を防ぐための対策

偽装請負を防ぐための対策

では、偽装請負を防ぐためにはどのような対策を講じればいいのでしょうか。

指揮命令権をもたないことを契約書に明記する

業務委託契約書を結ぶ際に、指揮命令権を有さないことを明記しましょう。「発注者は指揮命令権をもたない」と抽象的に記すのではなく、「他の従業員のように、就業規則が適用されない」「業務時間や時間配分、場所、業務の進め方を委託先に委ねる」といった旨を明記してください。

業務の実態についてヒアリングする

契約書上では、「指揮命令権をもたない」と明記しても、現場で指示や命令を出していては、意味がありません。経営陣の知らないところで、無理な指示・命令がおこなわれている可能性もあります。

現場担当者などにヒアリングして、聞き取り調査をおこないましょう。現場担当者が指揮命令権について十分に理解しないまま、業務を進めているケースもあるでしょう。

抜き打ちの現場チェックをおこなう

「現場担当者が楽をしたい」「ノルマを達成したい」など、理由はさまざまですが、経営陣に隠して意図的に現場担当者が指示・命令を出している可能性もゼロではありません。

通達なしに抜き打ちの現場チェックを実施してはいかがでしょうか。実施の際には、偽装請負の該当性を判断するためのチェックシートを作成し、現場に赴いて直接チェックすることが効率的でしょう。

まとめ

業務委託でのシフト提出は、指揮命令権を行使しているかがポイントです。飲食店や運送会社など業種ごとの事情はある程度考慮されるかもしれません。しかし、細かく時間指定する、休日出勤を求めると指揮命令権の行使となる可能性もあります。偽装請負とならないよう、本記事でお伝えした対策を講じてはいかがでしょうか。

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