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退職手続きの流れと必要書類|会社側が行う雇用保険・社会保険の手続きとは

退職手続きを会社・従業員別に解説!社会保険・雇用保険はどうする?

監修者:難波 聡明 なんば社会保険労務士事務所
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この記事でわかること

  • 従業員が退職する際、会社側は主に社会保険・雇用保険・住民税に関する手続きをおこなう必要がある
  • 退職に伴い、社会保険から国民健康保険へ、厚生年金保険から国民年金へ、住民税が特別徴収から普通徴収へ切り替わる場合は全て退職者が手続きをおこなう
  • 会社側が退職する従業員から回収するのは退職届、健康保険証、貸与品など

従業員から退職の意思表明を受けた場合、会社側は迅速に退職手続きをおこなう必要があります。そこでこの記事では、会社側がおこなうべき退職手続きと、退職する従業員がおこなうべき手続きについて解説します。

各手続きの流れ、必要書類、提出期限などを詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

【会社側】退職手続きの流れ

従業員が退職の意思を表明した場合、速やかな対応が必要です。人事・労務担当者は退職希望者と管理者の双方とコミュニケーションを取りながら、以下のスケジュールで退職手続きをおこないます。

退職手続きの流れ

  1. 退職に伴う引き継ぎや取引先への連絡など業務整理の依頼
  2. 退職届の提出依頼と退職日の決定
  3. 書類の受け渡しと備品の回収
  4. 健康保険・厚生年金の手続き周知
  5. 雇用保険関連書類のハローワーク提出(退職後)

所属する部署が混乱しないように、人事・労務担当者としてサポートをおこないます。

会社側が従業員の退職時におこなう公的手続き

従業員が退職するときに会社側は、社会保険や雇用保険などの公的手続きをおこなわなければいけません。具体的には以下4つの手続きです。

そのほか、該当する場合は退職金の支払い手続きや退職時に未払いの給与、残業代、その他の手当をがある場合は最終精算をおこないましょう。

会社が指定する退職届への記入依頼

まず、従業員が退職することになったら退職届を提出してもらいましょう。退職届は退職の意思を正式に伝えるための文書であり、退職の手続きを円滑に進めるために重要です。法律上の提出の義務はありませんが、会社の就業規則や労働契約に基づいて提出してもらうことが一般的です。

もし退職届の指定されたフォーマットがない場合は、下記からテンプレートを無料ダウンロードの上、自由にご活用ください。

退職届テンプレート

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社会保険および雇用保険の喪失届の手続き

次に、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険の手続きについて解説します。

社会保険に関しては、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届を記入し、管轄する年金事務所に提出します。この際に、退職する従業員から回収した健康保険証を返却することも忘れないようにしましょう。また、退職者に被扶養者がいる場合は、被扶養者の資格喪失届も同時に提出します。

国民健康保険への切り替え手続きは退職者がおこなう

なお、退職後に従業員が社会保険から国民健康保険へ切り替える場合、退職者自身が手続きをする必要があるため、人事・労務担当者がおこなうことはありません。

雇用保険に関しては、雇用保険被保険者資格喪失届を記入し、ハローワークに提出します。特定の法人は電子申請が義務づけられているため注意をしましょう。

提出書類 提出期限 提出先
健康保険
厚生年金保険
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 退職日の翌日(資格喪失日)から5日以内 管轄する年金事務所
雇用保険 雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)
離職者の退職日の翌日から10日以内 管轄するハローワーク

全国健康保険協会の場合、健康保険被保険者証(本人分・被扶養者分)を添付。その他、高齢受給者証や健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証、源泉徴収票が交付されている場合も添付が必要です。

また雇用保険の手続きの際、離職票の発行希望を退職者に確認します。

離職票とは

離職票とは退職者が失業給付(失業手当)を受ける際に必要となる書類です。一般的には雇用保険被保険証とともに発行されます。

退職する従業員より離職票の発行を希望されたら、人事・労務担当者は離職証明書を作成し、ハローワークに提出します。その後、ハローワークから離職票が交付されるため、それを退職者に送付しましょう。

社会保険に関する手続きは、退職する従業員が社会保険の加入条件を満たしていたかどうかで大きく変わるので、個別に要件を確認して続きを進めましょう。

住民税の納付方法の変更手続き

住民税に関しては、退職する従業員が特別徴収をおこなっている場合、特別徴収を終了する手続きをおこなう必要があります。具体的には「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を、退職後10日以内に市区町村へ提出します。

提出書類 提出期限 提出先
住民税 特別徴収に係る給与所得者異動届出書 退職日を含む月の翌月10日まで 従業員が居住する市区町村
源泉徴収票
の発行
最後の給与支払日の前後で交付。中途退職者は退職日から1カ月以内に交付

また退職時に未徴収の住民税がある場合、退職時に一括して徴収することが一般的です。退職後、会社側は源泉徴収票を発行し、住民税に関する情報も含めて従業員に渡しましょう。これにより従業員は、確定申告などの手続きで必要な情報を得ることができます。

退職後の住民税の納付方法の変更手続き

退職後の住民税の納付方法に関しては、従業員が自ら「普通徴収」に切り替える必要があります。

退職後に転職が決まっている場合は切り替え不要

ただし、退職後すぐに他の企業に転職する場合は、新しい勤務先に住民税の特別徴収を依頼できるため、普通徴収への切り替えは通常必要ありません。

これを実現するには、前の勤務先と新しい勤務先の人事・労務担当者が適切に手続きをおこなう必要があります。退職と転職のタイミングや手続きの進行状況によって一時的に普通徴収になる場合もありますが、一般的には特別徴収が継続されるように手続きを進めましょう。

会社側が退職時に発行・回収すべき書類

退職後の従業員の進路はさまざまです。すぐに次の職場に入社する方もいれば、転職活動をこれから始める方、一定期間就職しない方もいるでしょう。

進路によってその後に加入する保険や税金の納付方法が異なってくるため、会社側は退職時に「従業員に渡す書類」と「回収する書類」があります。

会社側が退職者に渡す書類

従業員の退職時に会社側が渡す書類は下記のとおりです。

従業員に渡す書類

1:ハローワークが発行したものを会社が従業員に交付します
2:従業員の希望があった場合

先述のとおり離職票は、退職者が失業手当を受け取るために必要となります。

雇用保険被保険者証とは、退職者が再就職した会社で新たに雇用保険に加入する際に必要となる書類です。もし転職者が以前の事業主から退職して7年以上経過している場合もしくは雇用保険に未加入だった場合、転職先の事業主が新たに雇用保険被保険者証を発行することになります。

また、退職者が退職証明書の交付を請求した場合には、企業には退職証明書の交付が義務付けられています(労働基準法第22条1項)。請求の拒否および理由ない遅延においては、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科せられます。

退職者から回収する書類

従業員の退職時に会社側が回収すべき書類は下記のとおりです。

従業員から回収する書類
  • 退職届
  • 健康保険証
  • 貸与品や備品

回収した健康保険証は、資格喪失届とともに年金事務所に提出しましょう。退職届は無料テンプレートの活用がおすすめです。

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【従業員側】退職手続きの流れ

退職の予定がある従業員は、スムーズに退職手続きがおこなえるよう、必要な手続きを確認しましょう。

目安の期限 やること
2~1カ月前 ・退職の意思決定
・退職希望の申し出および退職日の決定
・退職届の提出
退職日の
決定以降
・担当業務の引継ぎ
2週間前 ・社外(取引先)への挨拶や担当者交代のお知らせ
退職日 ・社内挨拶
・貸与品返却

従業員が退職する場合、企業ではさまざまな退職手続きが発生するため、退職を決めた場合は、すみやかに企業の担当者に申し出ましょう。

法律上では、従業員が退職を申し出てから2週間での退職が認められていますが、多くの場合、従業員が退職を申し出る時期は、希望退職日の1〜2か月前が一般的です。

企業担当者と話し合い退職日が決定した後、退職届や引継ぎ業務の準備をします。担当業務によっては、社外(取引先)への挨拶が必要となる場合もあるため、退職2週間前までには退職の挨拶や、担当者交代の連絡を済ませましょう。

退職日当日は、社内への挨拶や制服や名刺などの貸与品・備品を返却します。

従業員が退職日までにやるべき退職手続き(会社内)

退職日が決定した後、従業員は下記などの手続きや作業をおこなう必要があります。

退職書類の提出

社内規定に従い、退職書類(退職届)を準備します。企業によっては、退職届が不要である場合もありますが、退職届の受理によって退職が認められてから必要な手続きを開始する流れが一般的です。

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引継ぎ資料の作成

従業員の欠員が出ることは、会社にとって負担がかかることであるため、スムーズに引継ぎがおこなえるよう、必要な資料やマニュアルを用意します。

引き継ぎ資料には担当業務・案件の対応事項やフロー、トラブル防止のための注意点などを記載しましょう。

貸与品・備品の返却

退職する際は、貸与品や備品の返却も忘れずにおこないましょう。貸与品、備品を紛失した場合や返却しない場合は、会社側から賠償や罰金を求められる可能性があります。

従業員が退職時におこなう公的手続き

退職者がおこなう退職手続きには、上記で紹介した社内でおこなう手続きのほか、保険や年金など社会保険に関する手続きも必要です。

雇用保険の失業手当の申請

雇用保険の失業保険給付(失業手当)は、条件を満たしているか確認した上でハローワークでの手続きが必要です。満たすべき条件は以下のとおりです。

条件を満たしている場合はハローワークで手続きをおこないましょう。失業保険給付の申し込み~受け取りまでの流れについては、下記をご参考ください。

提出期間日 離職票が交付された日以降
提出先 居住地を管轄するハローワーク
提出書類 ・離職票1
・離職票2
・雇用保険被保険証
・身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証など)
・印鑑
・証明写真(直近3カ月3cm×2.5cm、2枚)
・本人名義の普通預金通帳
・求職申込書
・個人番号が確認できる書類

なお失業保険給付の受給開始期間は、退職理由が自己都合か会社都合かによって異なります。

健康保険の変更

退職後の健康保険加入について、退職者は

  1. 任意継続被保険者制度を利用する
  2. 国民健康保険に加入する
  3. 家族の扶養に入る

の3つのパターンから選択します。

1. 任意継続被保険者制度を利用する

退職前まで企業で加入していた健康保険に引き続き加入する場合「任意継続被保険者制度」を利用します。

任意継続被保険者の条件は、退職日までの健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あることです。対象者は2年間まで利用できます。
提出期間日 退職日から20日以内
提出先 勤務先の企業または健康保険組合(郵送可)
提出書類 ・健康保険任意継続被保険者資格取得申出書
・住民票
・1か月分の保険料

2. 国民健康保険に加入する

都道府県および市町村が運営する、国民健康保険に加入(変更)することも可能です。自治体によって保険料の算出方法や納付方法が異なるため、国民健康保険窓口で確認しましょう。

提出期間日 退職日から14日以内
提出先 居住地にもとづく市区町村役所の健康保険窓口
提出書類 健康保険資格喪失証明書
・各市区町村役所が定めた届出書
・身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証など)
・印鑑

3. 家族の扶養に入る

条件を満たした場合、家族が加入する健康保険の被扶養者になることも可能です。被扶養者になるには「退職者の年間収入が130万円未満であること」などの条件を満たす必要があります。

提出期間日 事実発生から5日以内
提出先 家族が勤務する企業
提出書類 ・被保険者資格喪失証明書
・被扶養者届
・続柄確認書類(住民票など)
・収入確認書類(源泉徴収票など)

年金の種別変更

国民年金の被保険者である20〜60歳の退職者(国民)は退職後、必要な手続きをおこない年金を支払う必要があります。国民年金の被保険者には、

  1. 第1号被保険者
  2. 第2号被保険者
  3. 第3号被保険者

の3種類があり、在職中は「第2号被保険者」の扱いとなりますが、退職後は「第1号被保険者」または「第3号被保険者」への種別変更が必要です。

第1号被保険者に切り替える場合

提出期間日 退職日から14日以内
提出先 居住地にもとづく市区町村役所の年金窓口
提出書類 ・年金手帳
・離職票または退職証明書
・身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証など)
・印鑑

第3号被保険者に切り替える場合

提出期間日 事実発生から5日以内
提出先 配偶者が勤務する企業
提出書類 国民年金第3号被保険者関係届
・続柄確認書類(住民票など)
・収入確認書類(源泉徴収票など)

第3号被保険者に切り替える場合、

  • 配偶者が第2号被保険者であること
  • 退職者の年間収入が130万円未満であること

の条件を満たす必要があります。

まとめ

従業員が退職の意思を表明した際、人事・労務担当者は迅速に退職手続きをおこなわなければなりません。なかでも社会保険の喪失届は提出期限が決まっているため、退職の事実が判明したら、すぐに退職手続きをおこないましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届は電子申請が義務化されている帳票です(特定の法人が対象)。e-Govまたは「オフィスステーション 労務」をはじめとした人事労務クラウドソフトを利用して、提出しましょう。

なんば社会保険労務士事務所 監修者難波 聡明

社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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