従業員がいきなり退職をしたら、どの様な手続きが必要かご存知でしょうか?何かの拍子で「今日付で退職します。明日から出社しません」と言われて、退職願も提出されず、保険証も回収できなかったとしたら…。
そもそも退職の意思は口頭のみで良いのでしょうか?従業員からいきなり退職を申し出られても慌てずに手続きができるように、この記事では会社側がおこなうべき年金事務所への手続きのポイント、従業員から未払い分の給与の請求があった際の対応方法などを解説します。
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退職届や退職願を提出せずに口頭のみの意思表示でも、法律上は有効となります。しかし、ここで問題なのは、後に退職の有無についてトラブルが発生する可能性があることです。退職の意思は必ず書面に残してもらいましょう。
従業員から退職の意思を口頭で伝えられた場合、会社側は以下の二つの方法で対処します。
弊サイトでは退職届の無料テンプレートを公開しています。退職届や退職願の社内様式がない場合は、下記からダウンロードの上、ご自由にご活用ください。
ただし、従業員に「退職願を提出してほしい」と伝えても、本人が書面での提出に応じない場合もあるでしょう。そんなときは、口頭で退職の申し出がされた日に、本人より退職の意思表示がなされたものとして企業側が処理しても特に問題はありません。臨機応変に対応をしましょう。
退職者から健康保険証を回収できない場合には、以下の方法があります。
被保険者資格喪失届は、資格喪失日から5日以内に届け出る必要があります。
このときに、なぜ回収できないのか、回収を催促した状況などを詳しく記入する「被保険者証回収不能届」も添付しましょう。そのほか、退職する者が保険証を無くしてしまっている場合は「被保険者証滅失届」を資格喪失届に添付して提出します。
資格のなくなった健康保険証は、使用できません。資格を喪失したときは必ず健康保険証を返却しなくてはいけない決まりになっています。70歳~74歳の方は、高齢受給者証も返却します。保険証は、退職する事業主へ返却することが義務付けられています。
離職票を作る際に、いきなり会社を辞めた退職者からの署名と捺印がもらえない場合、どうすれば良いのか悩みますよね。退職者と退職後も連絡を取ることができれば問題ないのですが、必ずしも連絡が取れるとは限りません。
退職する社員が離職票の記載内容を確認して押印するのがベストですが、連絡がとれないときは代表者の印などいつも使っている事業主印で代印して提出可能です。
退職者本人の署名や捺印もなく、事業主印も捺印されていない書類は無効となりますので注意してください。退職者の自己都合で退職する際は、特に何の問題も生じないでしょう。
受領印は通常、離職票発行の際に押印しますが、郵送による手続などの場合はあらかじめ押印しておくとスムーズでしょう。そして離職理由ですが、基本手当が受給できる日数に影響してくる大切な記入箇所となりますので、後々何かしらのトラブルになるのを避けるためにも、退職届・退職願は必ず提出してもらいたいものですね。
退職者から賃金の給与の未払い請求の「内容証明」が届いた場合、これは法律的にも効力のある書類になり、会社側は未払いを認めなければなりませんので、その内容証明に不備がなければ早急に支払いを進めることが重要です。
退職月の給与計算方法に関しては「退職月の給与計算の方法とは?ケース別の計算方法やポイントを解説」の記事で詳しく解説しています。
退職者が労働基準監督署に申告した場合、裁判沙汰にまで進展してしまいます。その場合、未払い分だけでなく「損害遅延金」や「付加金」も同時に請求されます。スムーズな対応を心がけましょう。
この2年間という時効が成立すれば、未払い分の給料を支払う必要はなくなります。しかし、労働基準監督署の調査などが入った場合には、それも通用しません。他と同様に支払いをすることを迫られる場合もありますので注意しましょう。これは、保険料を徴収する権利が2年間で時効となってしまうために強いられるものです。
突然の退職者が出ると、人事労務の担当者として戸惑うことも多いかと思います。しかし、退職の事実を確認して、年金事務所の手続きや未払い給与の清算等、一つ一つの手続きを順番に行って行きましょう。
多いトラブル事例としては退職者が新しい会社に就職したときに、前の会社の退職手続きが完了しておらず、新しい会社の資格取得手続きができないことがあります。法律で決められた期限までに着実にこなして行きましょう。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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