この記事でわかること・結論
- 従業員が退職や死亡時に、事業者が健康保険・厚生年金の資格喪失を届け出る必要がある
- 資格喪失届は退職日の翌日から5日以内に提出し、70歳以上で資格喪失の自動処理がされる
- 定年後の再雇用も資格喪失届の提出が必要で、手続き上一度脱退して再加入する流れが必要
この記事でわかること・結論
健康保険・厚生年金の被保険者資格喪失届とは、従業員が退職や死亡したときに健康保険・厚生年金の資格を喪失した証明として、会社が提出する書類です。
資格喪失日のような扱いに注意が必要な項目もありますが、保険料の算定にも影響するため、しっかりと理解しなければなりません。
今回は健康保険・厚生年金の被保険者資格喪失届の手続き方法や60歳以上の再雇用手続きを中心に解説します。
健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届とは、従業員が退職または死亡を理由に従業員が健康保険・厚生年金保険の資格を喪失する場合に事業者が提出する書類です。
日本では国民皆保険、皆年金が原則です。そのため、自営業者や個人事業主には医療を担う「国民健康保険」と、年金を担う「国民年金」への加入が義務付けられています。
一方で、会社員は会社を通じて医療保険は「健康保険」、年金は「厚生年金保険」に加入します。
両制度は、保険料の全額を被保険者本人が負担する国民健康保険や国民年金とは異なり、保険料の半額を会社が負担します。
退職をはじめとする資格喪失事由が生じた際は、退職が生じた日から5日以内に被保険者資格喪失届を提出する必要があります。具体的な資格喪失事由とその手続きをすべき期間の起算日(資格喪失日)は以下となります。
資格喪失事由 | 期間の起算日(資格喪失日) |
---|---|
適用事業所に使用がなされなくなった場合 | 退職日の翌日 |
被保険者から適用除外される事由がおこった場合 | 左記事由が発生した翌日 |
従業員が死亡した場合 | 左記事由が発生した翌日 |
任意適用を受けている事業所が任意脱退を申請して認可を受けた場合 | 左記事由が発生した翌日 |
ただし、これらの前日に他の事業所で使用され被保険者となった場合は、その日に被保険者でなくなります。また”被保険者から適用除外される事由”とは、一定の年齢に到達することを指します。
健康保険では、75歳に達すると後期高齢者医療制度の被保険者となるため、資格を喪失します。70歳以上の雇用者は、厚生年金保険の資格喪失処理及び70歳以上被用者該当処理が自動でおこなわれます。
平成31年4月に70歳以上の厚生年金保険に関わる「厚生年金保険被保険者資格喪失届 70歳以上被用者該当届」の提出が不要となりました。
正確な資格喪失日は、健康保険は75歳誕生日の当日、厚生年金は70歳誕生日の前日となります。この違いが生じる理由は、医療保険である健康保険と後期高齢者医療制度は引き続く必要があり、誕生日の当日となります。
厚生年金は70歳以降、被保険者でなくなるため誕生日の前日で終了します。また、任意適用を受けている事業所が任意適用の取り消しについて認可を受けた場合は、従業員の健康保険被保険者証を添付し「被保険者資格喪失届」を提出します。
従業員が前項でご紹介した事項に該当する場合、使用者は健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を日本年金機構に提出しなければなりません。
また、健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届は原則的に従業員の資格喪失日から5日以内に事業者が提出をしなければならないと決められています。従業員は基本的に手続きを行わず、事業者が必ず手続きをしなければなりません。
健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届を提出する際には、添付書類が必要です。従業員本人、従業員に被扶養者がいる場合は、全員分の健康保険被保険者証を提出しなければなりません。
また、資格喪失者が高齢受給者証や健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証、そして健康保険特定疾病療養受給者証を交付されている場合は、これらの資格証も添付する必要があります。
届出書の提出年月日が資格喪失日より60日以上経過している場合、または被保険者が役員でない場合は、退職した月の賃金台帳の写しと出勤簿の写しを提出します。被保険者が株式会社(特例有限会社を含む)役員の場合は、株主総会の議事録または役員変更登記の記載がある登記簿謄本の写しなどの、事実発生日の確認ができるものが必要です。
継続雇用制度とは、定年年齢を65歳未満としている事業主が高年齢者従業員の希望に応じて、定年後も引き続き雇用を続ける再雇用制度です。
継続雇用制度を適用して継続雇用すれば被保険者の資格も継続できるため、健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届の提出は必要ないのではないかと思う人も多いと思います。
しかし、定年後の再雇用であっても健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届の提出は必要です。定年になった段階で一度社会保険から脱退してもらい、その後新たに社会保険に加入することになります。
実際は1日も空くことなく継続して再雇用となるので、厳密には脱退になるわけではありませんが、手続き上、一度脱退の手続きを行ってから再加入する手順が必要です。この流れを「同日得喪」といいます。
再雇用手続きの場合、通常の資格喪失手続きの際の添付資料に加え、就業規則や退職日の確認ができる退職辞令の写し、継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書の写し、事業主の証明を提出します。
事業主の証明は、退職した日・再雇用された日が記載されており、事業主印が押印されているものであれば、様式は指定されません。法人の役員等が対象の場合は、役員規定や取締役会の議事録など役員を退任したことがわかる書類、及び退任後継続して嘱託社員として再雇用されたことがわかる雇用契約書、または事業主の証明を添付して提出します。
【参考】厚生労働省 高年齢者の雇用
健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届とは、従業員が退職または死亡を理由に従業員が健康保険・厚生年金保険の資格を喪失する場合、事業者が提出する書類です。
健康保険・厚生年金 被保険者資格喪失届は退職が生じた日から5日以内に提出する必要があります。期間の起算日(資格喪失日)は従業員の退職事由によって異なるので、注意しましょう。
70歳以上の被保険者の場合、厚生年金保険の資格喪失処理および70歳以上被用者該当処理が自動でおこなわれます。
日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら