この記事でわかること・結論
- 嘱託社員とは非正規雇用かつ有期雇用契約で働く労働者のこと
- 主に定年後再雇用された労働者のことを言う際に使われる
- 契約社員などと似ているが契約期間や労働時間などの決め方が異なる
この記事でわかること・結論
嘱託社員は非正規雇用として決められた期間を働く労働者のことを指します。嘱託社員という雇用形態は法律に明記がなく、各企業が就業規則に基づき採用しているケースがほとんどです。
そのため、嘱託社員の意味は広く「定年後の再雇用で働く労働者」を指すこともあれば、「有期雇用契約かつフルタイムでは難しいので短時間で働く労働者」を言う場合もあります。
本記事ではそんな嘱託社員について、基本内容から契約社員との違いや給与形態など雇用するうえで覚えておきたいポイントを中心に解説していきます。
目次
嘱託(しょくたく)社員とは「正式な雇用関係や任命によらず、業務への従事を依頼された労働者」のことを指します。また、正規社員とは異なり有期雇用契約(非正規雇用)として働きます。
正社員とは異なる雇用形態として、アルバイトやパート・派遣社員や契約社員などと同じ非正規雇用に区分されますが、嘱託制度は法律で明記されているわけではないため労働基準法の範疇で、企業が独自にその内容を決めることができます。
嘱託社員と似ている言葉に委嘱(いしょく)社員があります。「委嘱」も「嘱託」同様に、特定の仕事を一定の期間、他者に任せることという意味があります。
ですが嘱託社員と委嘱社員は、実際に言葉として用いられるシーンや対象者が異なります。
嘱託社員は非正規雇用社員に対して使われる言葉であり、主に「定年後再雇用している労働者」を指す場合に用いられます。対して委嘱社員は、単に特定業務を外部に依頼するなどの際にその受託者に用いられる言葉です。たとえば「税理士や会計士を委嘱する」という風に使われます。
委嘱については、行政機関などでも用いられている言葉でありその点でも嘱託と異なります。
嘱託社員は非正規雇用であり有期雇用契約という働き方ですが、その雇用形態について給与や休日、社会保険の有無などについて確認しておきましょう。
定年後再雇用制度によって定年を迎えた労働者は、希望すれば同一企業で働くことが可能であり、この制度によって再雇用された労働者のことを「嘱託社員」と呼ぶことがほとんどです。
高年齢者雇用安定法が2013年に改正され、企業には高年齢者雇用確保措置として「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」という3つの措置実施が義務づけられました。
そのため、1年という有期契約で65歳まで毎年更新するケースを採用している企業や、5年契約でその後65歳以上は心身を考慮して、希望であれば合理的な年数の雇用契約を結ぶというケースを採用している企業があります。
嘱託社員は法的な拘束力は存在していないため、企業がその処遇などを決めることが可能です。そのため、正社員のときと同様の業務量そして給与・賞与を採用しているところもあります。
一方で、職責や労働時間などを減らして雇用することも多く、その際は責任や業務量などに応じて給与も減少することがあります。正社員と同様に、嘱託社員でも働き方や責任によって変動のある決め方となります。
嘱託社員の休日は、労働基準法の範疇で労働者本人の希望やスキルなどを考慮して個別に決めることができます。
嘱託社員として雇用される際の「嘱託就業規則」にて、年間休日について決めたことを明記しておく必要があるため忘れないようにしましょう。
年次有給休暇は、労働基準法第39条にて企業への付与義務が明記されています。同一企業で6カ月以上働き、8割以上出勤していれば雇用形態にかかわらず取得が可能です。
また、定年後すぐに1日も空けることなく嘱託社員として雇用される場合は、定年前にあった年次有給休暇の残日数がそのまま付与されます。その際は、勤続年数についても引き継ぐことになります。
嘱託社員で雇用されている場合でも、各社会保険の加入条件を満たしているのであれば加入しなければなりません。しかし、嘱託社員では労働時間や給与などが減少しているケースもあるでしょう。そのような場合は、加入対象外となる社会保険もあります。
嘱託社員は非正規雇用社員として有期雇用契約で働く労働者のことを指しますが、実際に正社員とどのような違いがあるのでしょうか。
また、似ている雇用形態である契約社員との違いもおさえておきたいポイントです。ここでは嘱託社員と上記2つの雇用形態との違いを解説します。
嘱託社員と正社員の違いは「雇用期間が決められているかどうか」です。どちらも法律で明記されている雇用形態ではなく、業務内容や職責なども企業によって異なるため同様の働き方になる可能性もあります。
ですが、正社員の場合は問題がない限り企業は解雇することができず、一方で嘱託社員は有期契約での雇用になるため契約更新がなければ雇用期間満了となります。
契約社員も同じ非正規雇用という形態ですが、嘱託社員とは「無期転換ルールについての対応」が異なります。
契約社員やパートタイム・アルバイトなどの場合は、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときに、有期雇用契約ではなく無期労働契約に転換する申し込みをすることができます。
ですが嘱託社員と呼ばれる定年後再雇用の労働者においては、有期雇用特別措置法によって以下に該当する場合は無期転換申込権が発生しないという特例が適用されます。
定年後、引き続いて同事業主に雇用される有期雇用労働者および、その事業主が適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主である場合
そのため嘱託社員を5年以上、引き続き同じ労働契約で雇用したい場合は事業主が本社・本店を管轄する都道府県労働局に認定申請をする必要があります。
また、契約社員は基本的にフルタイムで雇用されるのに対して、嘱託社員は非常勤などで雇用されるケースがあるという違いもあります。
ここでは嘱託社員のメリットについて、企業側と労働者側の双方に分けて解説します。
嘱託社員は、正社員時よりも給与を抑えた労働条件で雇用している企業がほとんどです。そのため人件費を削減することができるというメリットがあります。
また、嘱託社員であれば有期期間での雇用であるため人員調整をやむを得ずしなければならないという状況でも対応することが可能です。
嘱託社員は労働日数や労働時間などが、本人希望で調整できることがメリットの一つです。フルタイムで働くことが難しいという場合にワークライフバランスを考慮することができます。
また、正社員時に得たノウハウやスキルをもってそのまま活躍できる場が設けられるため、定年後も社会と隔離されず充実感を得られるでしょう。
年次有給休暇を引き継ぐことも可能であることや、労働時間を調整して社会保険の負担を減らせることもメリットとして挙げられます。
嘱託社員は、有期雇用契約として働く雇用形態の一つであり多くの企業では定年後に再雇用された労働者のことを指します。
法律では特に決まりがないため、労働者と企業とで、希望の労働時間や日数、待遇などを決めて嘱託雇用契約を結びます。
契約社員やパートタイム・アルバイトとは労働条件や契約期間などが異なります。定年から嘱託社員に切り替わる方がいる場合は正確に対応できるようにしておきましょう。
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