高年齢被保険者が受け取れる給付金
- 高年齢求職者給付金
- 育児休業給付金
- 介護休業給付金
- 教育訓練給付金
65歳以上の労働者は雇用保険の加入対象であり、高年齢被保険者として被保険者資格の取得・喪失手続きが必要です。
今回は高年齢被保険者の定義や雇用保険の扱い、高年齢被保険者の給付金、今後の高年齢者の雇用対策を中心にご紹介します。
目次
高年齢被保険者とは、65歳以上の雇用保険加入者の名称です。
2017年の法改正により雇用保険の年齢制限が撤廃され、65歳以上の労働者も雇用保険の加入条件を満たせば、高年齢被保険者として雇用保険への加入が義務づけられています。
なお高年齢被保険者に該当する65歳以上の労働者がとは、下記の2つを満たす労働者のことです。
雇用保険の加入手続きは、雇い入れ日または労働時間変更日の翌月10日までにハローワークへ雇用保険被保険者資格取得届を提出することで完了します。
なお、64歳未満の雇用保険加入者が65歳に達した後も雇用を続けた場合、自動的に高年齢被保険者に切り替わるため、新たな手続きは必要ありません。
65歳以上の労働者も雇用保険の加入義務が発生してから2020年3月31日まで、高年齢被保険者は保険料の支払いが免除されていました。しかし同年4月からは、他の雇用保険被保険者と同様に保険料を納める必要があります。
雇用保険の保険料は、毎年厚生労働省が発表する雇用保険料率によって変わります。毎月の給与に雇用保険料率をかけて算出しましょう。
高年齢者を雇用している場合、毎年6月1日時点の高年齢者の雇用に関する「高年齢者雇用状況報告」をおこなわなければなりません。
報告時期が近づくと従業員20人以上の事業所には報告用紙が送付されるため、7月15日までにハローワークに返信します。申告は電子申請でも可能です。
高年齢被保険者は、下記4つの給付金を申請・受給できます。給付金の申請は労働者がおこなうため、前もって事業者が準備する手続きはありません。
高年齢被保険者が受け取れる給付金
高年齢求職者給付金とは65歳以上の高年齢被保険者が受け取れる給付金のひとつで、64歳未満の雇用保険加入者が受け取る基本手当に代わる失業手当です。
基本手当との違いとして、高年齢求職者給付金は一時金扱いとなり年金との併給も可能です。
高年齢求職者給付金と基本手当の違い | ||
高年齢求職者給付金 | 基本手当 | |
---|---|---|
受給要件 | 6カ月以上の雇用保険の加入 | 12カ月以上の雇用保険の加入 |
支払方法 | 一時金として一括支給 | 28日分を分割支給 |
受給日数 | 30日もしくは50日 | 90日~360日 |
年金との併給 | 可 | 不可 |
また受給条件も、基本手当よりも緩和されています。
高年齢求職者給付金は、条件を満たせば何度でも受け取れます。65歳以上の労働者が退職する場合、本人の希望にかかわらず企業は離職票を発行するようにしましょう。
なお、高年齢求職者給付金を受給していた方が再就職をし、雇用保険に加入する場合「高年齢再就職給付金」の受給対象になる可能性があります。この給付金は、再就職手当と併給することはできないので注意をしましょう。
育児休業給付金とは、出産と子育てに費やす育児休業期間中に支給される手当です。以下の条件を満たすことで、高年齢被保険者も育児休業給付金を受け取れます。
介護休業給付金とは、1回の介護休業(最長93日)につき支給される給付金です。介護給付金は以下の計算式で算出した給付金が支給されます。
介護休業給付金を受給できる方の条件は、以下のとおりです。
教育訓練給付金とは労働者の主体的な能力開発への取り組みを支援するための制度で、訓練受講で支払った費用の一部を支給する給付金です。受給条件は以下のとおりです。
教育訓練給付金には「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2種類があります。
高年齢者人口が増え人手不足が深刻化する日本社会で、事業主は高年齢者の労働者が働きやすい職場環境・制度の整備が求められています。
事業主が従業員の定年を定める場合、その定年年齢は60歳以上とされています。そのため、定年年齢を59歳以下に引き下げることはできません。
高年齢者雇用安定法の改正により、事業主は以下3つの措置のいずれかを実施する必要があります。
また、再雇用制度の対象者が定年後も雇用を希望する場合、すべての希望者を対象にしなければなりません(従来の労使協定で定めた基準での限定は不可)。
65歳以上の高年齢者が安心して継続的に働けるように、事業所には年齢にかかわらず意欲と能力に応じて働き続けられる制度の導入が求められています。
近年では定年退職をしたシニア層を契約社員として採用し、地方への移住を兼ねた地域の活性化に取り組む業務や、営業・財務などの専門特化型業務を依頼する事業主もいます。
今後高年齢者雇用を進める事業主は、
などが必要です。
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者を雇用する場合、60歳時点の賃金額が75%未満に減額された場合に、最高で賃金額の15%に相当する額を支給する制度です。
2025年から、新たに60歳となる労働者への高年齢雇用継続給付の給付率が10%に変更されます。
現在、2025年4月1日施行に向けて、65歳以上の高年齢者の70歳までの就業確保措置に対する支援を雇用安定事業に位置付けられています。
高年齢被保険者とは、65歳以上の雇用保険加入者の名称です。65歳以上の労働者は雇用保険の加入要件を満たせば、雇用保険への加入が義務づけられています。
65歳未満の雇用保険加入者が65歳に達した場合、自動的に高年齢被保険者となります。新たな手続きは必要ありませんが、事業主は毎年6月1日時点の高年齢者雇用状況報告を提出しましょう。
高年齢被保険者は、高年齢求職給付金や育児休業給付金、介護休業給付金、教育訓練給付金などの各給付金を受給可能です。
今後、高年齢被保険者が増えるため、事業主は65歳以上が安心して働き続けられる制度の確立や職場環境の改善が求められるでしょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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