この記事でわかること
- 最新の雇用保険の加入条件を確認できる
- 適用事業と暫定任意適用事業の違いについて
- 雇用保険に関わる制度や注意点について
近年、雇用保険を含む社会保険の適用範囲を拡大する法改正が続いています。
特にパートやアルバイトも雇用保険の加入条件を満たした場合、事業主は雇用保険に加入させなければなりません。
今回は、人事・労務担当者がおさえておくべき雇用保険の加入条件やパート・アルバイトの取り扱いについても解説します。
この記事でわかること
みのだ社会保険労務士事務所 社会保険労務士
https://www.minodashahorou.com/
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。 約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。 社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。
目次
雇用保険とは、労働者が失業して所得の源泉を喪失した場合、生活および雇用の安定並びに就職などの促進のため「失業等給付」「育児休業給付」「雇用保険二事業」で構成される強制保険制度です。
雇用保険の被保険者は、法人の代表者以外の者で、適用事業所に雇用される一定の条件を満たした労働者です。
また、雇用保険の被保険者の種類は4種類あります。
▼雇用保険の被保険者の種類
類型 | 詳細 |
一般被保険者 | 高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の3類型に該当しない、正社員・パート・アルバイトの労働者 |
高年齢被保険者 | 65歳以上の高齢労働者 継続雇用の有無にかかわらず、加入条件が満たされていれば、新規雇用保険も可能 |
短期雇用特例被保険者 | 期間を限定して雇用され、雇用契約が4カ月を超え1年未満かつ週所定労働時間が30時間以上の労働者 |
日雇労働被保険者 | 日雇いで雇用されるまたは、30日以内の期間を定めて雇用される労働者 |
雇用保険は以下の3つの加入条件を満たした場合、事業主・労働者の意思に関係なく(正社員や契約社員、パート・アルバイトなど雇用形態に限らず)、すべての労働者が雇用保険の加入対象となります。
雇用保険の加入条件
同一の事業主の適用事業に継続されることも必要です
31日間以上働く見込みは、雇用形態にかかわらず、すべての労働者が適用されます。
31日間以上雇用が継続しないことが明確である場合は除く
労働者の所定労働時間が週20時間以上の場合、雇用保険の加入条件のひとつを満たすことになります。
契約上の所定労働時間が週20時間未満の場合は、一時的に所定労働時間が週20時間以上に達したとしても要件を満たしません。
1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合には、当該1周期における所定労働時間の平均を1週間の所定労働時間とします。
原則として、昼間学生は雇用保険に加入できません。
しかし、以下の条件を満たした場合、雇用保険の加入対象となります。
また、定時制、通信教育、夜間に限らず、学生が雇用保険の加入対象です。
原則、昼間学生は対象外です。一般的には一部の例外的な学生のみ対象です。
雇用保険の適用事業とは、労働者が雇用される事業であり、原則、労働者を一人でも雇用していれば、業種にかかわらず雇用保険の適用事業となります。
雇用する労働者に関して、保険関係が成立する事業を指し、保険料は事業主と労働者が負担します。
暫定任意適用事業とは、常時5人未満の労働者を雇用する個人事業の農林水産業のうち、一定の農林・畜産・養蚕・水産業(一定の船員が雇用されているものは除く)を指します。
保険料はその一部を労働者が負担することから、暫定任意適用事業につき雇用保険が成立するには、その事業に使用される労働者の2分の1以上の同意を得て、厚生労働大臣に雇用保険加入の申請をおこないます。
厚生労働大臣から認可を受けた日に雇用保険関係が成立し、この認可の権限は、各都道府県の労働局長に委任されています。
雇用保険の加入手続きは以下の書類が必要です。
雇用保険の加入手続きに必要な書類
上記の書類は法人の場合に限ります
個人事業の場合は、そもそも登記簿謄本が存在せず、他の書類が必要です。
事業主は、新たに雇用保険に該当する労働者を雇い入れた場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」を雇入れ日の翌月10日までにハローワークに提出する義務があります。
また、雇用保険の適用事業所を新たに設置した際は、事業所設置の翌々日から10日以内に雇用保険適用事業所設置届と保険関係成立届の提出が必要です。
「雇用保険適用事業所設置届事業主控」「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」の交付後、「雇用保険被保険者証」を従業員本人に渡します。
事業者が被保険者資格を有する労働者を雇用保険に加入させる義務を怠った場合、懲役6カ月以下もしくは罰金30万円が科せられるという規定が雇用保険法83条1項1号に定められています。
雇用保険の加入義務を怠った事実が労働局などに申告がなされ、労働局の調査により義務違反の事実が認められた場合、労働局より指導、勧告が繰り返され、違反を是正しない悪質な企業に罰則規定が適用される可能性があります。
指導・勧告があった場合、速やかに加入申請をおこないましょう。
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申し出をおこなうことで、申し出をおこなった日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となれる制度です。
多様な働き方が広がり、65歳以上の高齢者の就業機会が増える中、雇用保険を含む社会保険の適用範囲が広げる法改正が続いています。
今後も社会保険の適用範囲は拡大されることが予想されるため、労務関係の法改正に基づき、適切に対応しなければなりません。