この記事でわかること・結論
- 企業は対象労働者の雇用保険の加入手続きをする義務がある
- 対象労働者が未加入の場合、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科される可能性がある
- 雇用保険に入ってない労働者は各種手当を受けられないなどの大きな影響がある
この記事でわかること・結論
雇用保険とは加入している労働者が各種給付金などを受けることができる制度です。加入条件を満たしている労働者には、企業が雇用保険に加入させてあげなければなりません。
また、雇用保険料は労使折半となるため被保険者となる労働者分における半分の保険料を企業も負担する必要があります。ですが、会社が加入手続などせず、雇用保険に未加入であった場合はどうなるのでしょうか。
本記事では、雇用保険に入ってない場合にどのような罰則や影響があるのか解説します。また、仮に雇用保険への未加入が発覚した場合はどんな対応をすべきなのかも解説するため最後までチェックしておきましょう。
目次
雇用保険について、会社は被保険者の対象となる労働者に対して加入させる義務があります。まずは内容を理解しておくためにも、雇用保険について簡単におさらいしましょう。
そして、本来加入させなければならない労働者の雇用保険について未加入のままでいる場合はどのような罰則を企業が受けるのかを続けて解説します。
雇用保険とは、被保険者である労働者が失業したり育児をしたりする際に給付金を支給する保険制度です。失業手当・育児休業給付金・再就職手当など聞いたことのあるこれらの手当は雇用保険制度の給付金です。
適応事業所に属している労働者であり、かつ以下の条件をすべて満たす場合は企業や労働者の意思に関係なく加入対象です。正社員だけでなく、契約社員やパートタイム・アルバイトなど雇用形態に限らず適用されます。
適用事業所である企業側は、上記を満たす労働者について雇用保険の加入手続きをしなければなりません。怠るとこれから解説する罰則を受けてしまう可能性があるためよく覚えておきましょう。
企業は雇用する労働者の雇用保険については、雇用保険法第7条に基づき被保険者となる加入手続きをハローワークおよび厚生労働省大臣に届出を提出する義務があります。
もし届出をせず未加入のままでいる場合は、雇用保険法第83条に準拠して6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科される可能性があります。
事業主(中略)は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者に関し、当該事業主の行う適用事業(中略)に係る被保険者となつたこと、当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことその他厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。一 第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合
企業に対してのペナルティを受けてしまうと社会的信用度が下がります。信用が下がることによってクライアントなど取引先との仕事自体がなくなってしまう可能性もあるでしょう。
また、会社のネームバリューも下がるため採用時に悪影響をおよぼすかもしれません。会社にとって存続が危ぶまれるほどの影響が出るため、特に雇用保険の加入条件などはよく理解しておきましょう。
雇用保険法に違反となってしまった場合は、企業に対して罰則があることがわかりました。しかし、企業への罰則以前にそもそも雇用保険に加入させていない労働者に対して多くの影響が生じるためここで解説します。
雇用保険に未加入である場合は、労働者が失業した際に失業手当を受給することができません。雇用保険に問題なく加入できていれば、離職日翌日より給付が受けられます。受給日数は離職事由や勤務年数・年齢などに応じて個々に異なります。
離職票(雇用保険被保険者離職証明書)は、失業手当を受けるための手続きにて労働者がハローワークに提出する必要書類の一つです。ですが雇用保険に入っていない場合は、そもそも失業手当の受給資格がないため離職票が交付されません。
育児休業給付金は、加入者であれば育児休業取得に応じて子供が原則1歳になるまでの期間に給付金が支給される制度です(パパ・ママ育休プラス制度の利用時は1歳2カ月になる日の前日まで延長)。
しかし、企業が対象労働者を雇用保険に加入させていない場合は、失業手当と同様に育児休業給付金も当然受けられません。育児はパートナーとの経済的な事情や、自身のキャリアなども関連するため未加入ではかなり大きな負担となってしまいます。
雇用保険では被保険者である労働者が失業した際に、再就職するまでの期間を対象にさまざまな給付金を設けています。
上記の手当はまとめて「就業促進手当」とも呼ばれ、就職した際にもらえる給付金や6カ月以上雇用され離職前の賃金より低下している場合にもらえる給付金などが主な内容です。
これらの手当についても、離職前の会社で雇用保険に加入していない労働者は対象外となってしまいます。
労働者は雇用保険に入っていないとさまざまな給付金などを受けることができません。加入手続きは企業がおこなうため把握が難しいですが、自身が雇用保険にちゃんと加入できているのかを確認する方法もあるため解説します。
給与明細には、給与や賞与のほかにも社会保険料の記載もあります。そこに「雇用保険料」と書いてあり、差し引かれていることが確認できれば加入している可能性は高いと言えるでしょう。
ですがあくまで企業が作成するものであるため、実際は加入していないというケースも考えられます。あくまで確認方法の一つという認識でいましょう。
企業は雇用保険の加入について労働者へ都度周知することが理想ですが、日頃から労働者が自身で幅広く確認などできるようにWeb給与明細などフォーマットを整えておきましょう。
ハローワークでは「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」を、ダウンロードして記入・提出することで、雇用保険の被保険者であるかどうかを確認することができます。
個人に割り振られた雇用保険番号がある場合は、ちゃんと雇用保険に加入できている証拠です。会社情報を管理している管轄のハローワークにて伺ってみると良いでしょう。
実際に企業において雇用保険の未加入が発覚した場合はすぐに所属する企業に言いましょう。企業は申し出があったら、対象労働者における雇用保険の加入手続きを迅速に対処します。
また、雇用保険料は労使折半であるため労働者も負担しますが、加入期間によってどのくらい各種手当が受給できるのか異なります。
そのため、基本的にはあとから被保険者となる場合はさかのぼって加入することになります。原則2年以内までさかのぼって加入することができます。
失業手当や育児休業給付金など、労働者の生活を支えるような制度である雇用保険は企業が対象労働者分の加入手続きをしてあげる義務があります。
法令で決まっているため未加入のままでいると企業が法令違反として罰則を受けることになります。労働者も雇用保険に入ってないと各種手当が受けられずに大きな負担となってしまいます。
労働者および企業が適宜、雇用保険の未加入がないかを確認して適切な労働環境を作りましょう。
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