この記事でわかること・結論
- 雇用保険は条件を満たせば被保険者となるため、派遣社員でも加入できる
- 派遣社員は「週の労働時間」や「雇用見込み」などの加入条件を満たす必要がある
- 企業側は条件を満たしている派遣社員を雇用保険に加入させる義務がある
この記事でわかること・結論
雇用保険は、雇用形態にかかわらず条件を満たしている労働者は加入する義務があります。そのため条件さえ満たしていれば派遣社員でも雇用保険に加入しなければなりません。
企業側も対象の労働者について雇用保険の加入手続きをする義務があるため、加入条件を再度確認しておく必要があります。
本記事では、雇用保険について派遣社員における加入条件や、雇用保険の基本手当である失業保険(失業手当)の受け取り方などについて解説します。
目次
結論から言うと、派遣社員でも雇用保険に加入することは可能です。雇用保険は社会保険のひとつですが、1人でも労働者を雇用している事業所は適用事業所となり社会保険が適用されます。そして、適用事業所に雇用される労働者は原則、社会保険に加入する必要があります。
派遣社員やパートタイム、アルバイトなどのフルタイム労働者ではない場合は、適用事業所に雇用されており、一定の条件をすべて満たしている場合に雇用保険に加入する義務が生じます。
労働者を1人でも雇用している事業所は、どのような業種であれ適用事業所となります。その適用事業所に雇用されており、後述する加入条件をすべて満たしていれば派遣社員でも雇用保険に加入しなければなりません。
加入条件を満たしていれば派遣社員だけではなく、契約社員やパートタイム・アルバイトなどの雇用形態でも雇用保険へ加入することが可能です。また、雇用保険料は事業主と被保険者となる労働者が折半で負担します。実際の加入条件を解説する前に、雇用保険についておさらいしておきましょう。
雇用保険とは、失業した労働者の生活を支えることや雇用安定および就職促進を目的とした強制保険制度です。雇用保険の加入者が利用できる給付金には、主に以下があります。
上記のように雇用保険は失業者や育児をする労働者、職業訓練を受ける労働者などに向けたさまざまな制度を設けています。
雇用保険は政府が管掌する制度です。事業者は、加入条件を満たしており被保険者となる労働者について雇用保険の加入手続きをする義務があります。
事業者は、雇用する労働者で被保険者資格のある者を雇用保険に加入させる義務があります。被保険者資格がある労働者の加入手続きをしないなど、上記義務を怠る場合は、雇用保険法第83条に基づき「懲役6カ月以下もしくは罰金30万円」が科せられる可能性があります。
冒頭でも触れたとおり、雇用保険は加入条件さえ満たしていれば正社員や派遣社員、パートタイムやアルバイトなど雇用形態に関係なく、また企業や労働者の意思に関係なく加入対象となります。
派遣社員の場合は、労働時間や雇用契約期間などの加入条件が定められているため次で解説する「雇用保険の加入条件」をよく確認しておきましょう。
具体的な雇用保険の加入条件は下記のとおりです。適用事業所に雇用される派遣社員で以下をすべて満たしている場合は、雇用保険の被保険者となります。
上の2つの加入条件について、もう少し詳しく解説します。
厚生労働省の資料によれば「31日以上の雇用見込みがあること」とは、31日以上雇用が継続しないことが明確である場合以外が該当するとされています。この場合の雇用契約は、派遣先ではなく派遣会社との契約のことを言います。
雇用契約期間が31日未満でも、
などの場合は、原則として31日以上の雇用見込みがあるものとして雇用保険が適用されます。
1週間の所定労働時間が20時間以上であることも雇用保険の加入条件です。1週間の所定労働時間が「20時間未満」の場合は、加入対象とはなりません。
また、1週間の所定労働時間とは雇用契約書などで定められている時間のことを指します。残業や夏季休業、休日出勤などの臨時的な労働時間はカウントしないため注意しましょう。
失業保険(失業手当)は労働者が失業した場合、一定期間において給付金を受けられる制度のことです。失業によって収入がなくなった労働者の生活を支援するために設けられています。
雇用保険に加入していれば利用できますが、失業保険(失業手当)を受けるには受給要件を満たしている必要があります。失業保険(失業手当)の受け取り方とあわせて解説します。
失業保険(失業手当)は、退職理由によって区分され受給要件も異なります。自己都合や起業、独立などが退職理由の「一般被保険者」における受給要件は、以下のとおりです。
また、退職理由が倒産や解雇などの特定受給資格者や、心身の障害や出産などの特定理由離職者は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある場合でも可能とされています。
給付日数や給付額については、退職理由や年齢などに応じて個人差があります。詳しくは失業保険(失業手当)の記事で解説しています。
失業保険(失業手当)を実際に受け取る流れは以下となります。
失業保険(失業手当)を受け取る流れ
まずは、退職後ハローワークから発行される雇用保険被保険者離職票をもってハローワークで求職手続きをします。このとき「個人番号確認書類・本人確認書類・印鑑・証明者写真2枚・本人名義の普通預金通帳」などを持参します。
手続きでは、日時指定で雇用保険受給者初回説明会の案内があるため参加します。そして、一定回数の求職活動をおこない失業認定を受けます。失業認定を受けてから1週間ほどで、指定の金融機関へ失業保険(失業手当)が振り込まれます。詳細は以下の記事を参考にしましょう。
雇用保険は、適用事業所で雇用されており加入条件を満たしていれば派遣社員でも加入することが義務となります。「31日以上の雇用見込みがあること」や「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」が派遣社員における雇用保険の加入条件です。
また、失業保険(失業手当)など雇用保険の制度について利用方法をよく確認しておきましょう。企業は被保険者資格のある派遣社員を雇用保険に加入させる義務があるため、漏れのないように注意が必要です。
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