この記事でわかること・結論
- 社会保険と国民健康保険の違い
- 社会保険から国民健康保険への切り替え手続き・注意点
この記事でわかること・結論
会社員である場合は社会保険ですが、退職した場合は国民健康保険への切り替えが必要です。支払う保険料や、国民健康保険への切り替え手続きについて理解しておけば、退職後にスムーズに対応できます。
そもそも社会保険と国民健康保険にはどのような違いがあるのでしょうか。この記事では、国民健康保険への切り替えについて基本的な保険該当や切り替え手続きフロー、そして切り替え時の注意点など解説します。
目次
社会保険から国民健康保険への切り替えについて解説する前に、社会保険と国民健康保険の違いについておさらいしておきましょう。
社会保険とは、国民の生活を生涯守るセーフティネットとして設けられている社会保障制度のひとつとしてあります。
社会保険は、国民が業務外のけがや病気、出産や老齢などを原因とした保険事故に遭った場合、一定の給付などをおこない生活を支援する強制加入の保険制度です。たとえば以下のような制度が社会保険に含まれます。
高齢化や障害または死亡によって、加入者本人および遺族を経済的な保障をする制度。
誰もが安心して医療を受けられることを目的とした制度。国民が病気やけがなどで病院を利用もしくは入院などをした際に、一定額の給付金を利用できます。
介護サービスを利用する際などに、給付金を利用できる制度。
社会保険は、基本的に給与所得者である会社員などが加入する保険制度です。ですが社会保険の加入条件を満たしている場合であれば、パートタイム・アルバイトの方でも加入することが可能です。
保険者として社会保険を運営しているのは「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や「健康保険組合」という団体であるのも特長のひとつです。
対して国民健康保険とは、社会保険に加入していない方や生活保護を受けていない方などが対象者となる保険制度です。会社を退職した方やフリーランスなどの自営業者は、国民健康保険の被保険者となります。
国民健康保険では、国民の疾病や負傷などについての給付金が設けられています。また、社会保険と異なり保険者である市区町村および国保組合が国民健康保険の運営をおこなっています。
上記を踏まえて、社会保険と国民健康保険の主な違いをまとめました。
社会保険 | 国民健康保険 | |
---|---|---|
保険者 | 全国健康保険協会(協会けんぽ) 健保組合 |
市区町村 |
保険料負担 | 事業主と折半 | 全額本人負担 |
被保険者 | 適用事業所の正社員 条件を満たす短時間労働者 |
社会保険へ加入できない方 生活保護を受けていない方 |
扶養 | あり | なし |
社会保険の健康保険と国民健康保険は、自身で選んで加入することができません。社会保険の加入条件を満たしている適用事業所に雇用されている方が社会保険に、社会保険以外の方が国民健康保険に加入します。
仮に社会保険と国民健康保険を切り替えるという場合は、タイミングや手続きについてよく理解しておく必要があります。詳しくは次項で解説します。
社会保険から国民健康保険へ切り替えるタイミングは、会社の退職時です。退職すれば会社側が、健康保険等資格取得(喪失)証明書というものを発行してくれます。
その他本人確認書類などを持って、退職から14日以内に管轄の役所で社会保険から国民健康保険への切り替え手続きをおこなう必要があります。
社会保険から国民健康保険への切り替えは、退職日から14日以内におこなわなければなりません。仮に14日以降での手続きとなる場合や、本人の意思で健康保険へ未加入のままでいる場合は以下のような影響があるため注意しましょう。
健康保険への加入は義務であるため、お住まいの市区町村の条例に応じて過料を科されることがあります。また、延滞金及び還付加算金としてさらに支払うことになってしまうケースもあるでしょう。
今後、退職して休養期間に入る予定の方や自営業者への転換などを予定している方は、社会保険喪失後14日以内に手続きをするということを必ず覚えておきましょう。
退職したら基本的には、社会保険から国民健康保険への切り替えが必要ですが、社会保険を継続して加入できる「健康保険の任意継続手続き」をすることもできます。
任意継続被保険者として以下2つの条件をどちらも満たしている場合に、2年間の継続加入が認められます。
注意点として、任意継続被保険者の場合は社会保険でありながらも保険料は全額自己負担となります。期限までの納付が確認できない場合は、任意継続被保険者としてみなされなくなることもあわせて覚えておきましょう。
社会保険から国民健康保険への切り替え手続きについて、事業主側と労働者側の対応をあわせて流れを解説します。
社会保険から国民健康保険への切り替え手続きの流れ
事業者側は従業員が退職した際には「被保険者資格喪失届」を、退職日より5日以内に年金機構へ提出する必要があります。また、従業員へはすみやかに「資格喪失証明書」を発行してあげましょう。
国民健康保険の被保険者となる方は、退職後にまずは在職中の健康保険証を会社に返却します。資格喪失証明書を会社から受け取ったら、退職日より14日以内に以下の必要書類などを持参してお住まいの市区町村役所に行きましょう。
上記の手続きが完了次第、国民健康保険証を受け取ることができます。病院など利用する際は、国民健康保険証を提示して医療費を支払いましょう。
また、手続き完了後に国民健康保険料の納付書が郵送で届きます。忘れずにポストをチェックしておきましょう。納付書に気付かずに滞納してしまうと延滞金が発生する可能性もあるため注意が必要です。
社会保健から国民健康保険への切り替え時には注意点があります。
会社で発行した健康保険証は退職日翌日より効力が無くなるため使用できないため、会社を退職した場合はすみやかに健康保険証を返却しましょう。
国民健康保険への切り替えをおこない、国民健康保険証を発行してもらうまでに時間があるからと言ってそのまま使用しているとトラブルになるケースもあります。
すでに失効済みの健康保険証を使うと、不正使用や無資格受診とみなされるため医療費などを返還する必要があります。また、長期におよび使い続けていると詐欺罪になってしまうこともあり得ます。
上記のような問題に発展する前に、退職したらすぐ必ず在職していた会社に健康保険証を返還しましょう。事業者側も従業員が忘れている場合を懸念して、催促しても良いでしょう。
先述したとおり、社会保険から国民健康保険への切り替え手続きは退職日(資格喪失日)より14日以内におこなう必要があります。万が一、14日を超えてしまう場合は国民健康保険第127条に基づき、10万円以下の過料を科される場合があります。
また、退職後に国民健康保険へ加入していないことで、その間病気などしてしまった際は医療費を全額自己負担することになります。入院など仮にした場合は、かなり多額になってしまうため速やかに加入手続きをすることをおすすめします。
社会保険と国民健康保険は、主体となる運営団体や保険料負担などが異なります。社会保険は基本的に正社員の方が被保険者となるのに対して、国民健康保険は自営業者やフリーランスの方が被保険者となります。
そのため、会社を退職したタイミングなどで社会保険と国民健康保険を切り替えする必要があります。その際は会社ではなく、自身で役所へ出向いて適正な手続きをしなければなりません。
また、切り替え手続きには期限があることや支払う保険料の変化なども把握しておくと安心です。本記事の内容を参考に、トラブルのないように社会保険と国民健康保険の切り替えを対応しましょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
詳しいプロフィールはこちら