労務SEARCH > 人事労務管理 > 福利厚生 > 退職金に税金はかからない?税金の計算方法と一律課税案について
退職金に税金はかからない?税金の計算方法と一律課税案について

退職金に税金はかからない?税金の計算方法と一律課税案について

監修者:稲田 光浩 稲田光浩税理士事務所
詳しいプロフィールはこちら

この記事でわかること

  • 退職金にかかる税金と所得控除額の計算方法
  • 退職金にかかる税金のおすすめな納付方法
  • 退職金の課税強化策である「一律課税案」について

2022年10月18日に開催された税制調査会において、退職金の課税を勤続年数問わず一律とする案が提案されました。

2024年3月現在、退職金にかかる税金は勤続年数が長くなるほど優遇される制度となっています。ではなぜ、一律課税案を提案する意見が出ているのでしょうか?

本記事ではいま退職金を受け取ったらいくら税金がかかるのか、その計算方法や税金がかからないケース・所得控除額の求め方、そして退職金一律課税案が提案された背景についてまで解説します。

退職金と退職所得の違いを理解しよう

退職金と退職所得の違い

退職金には税金がかかりますが、勤務年数が長いほど控除額が大きく、税金が少なくなります。また、老後の生活資金を支える重要な収入として税金が優遇され、結果的に税金がかからないケースもあります。

まずは、退職金にかかる税金を考えるときに重要である、退職金と退職所得の違いについて見ていきましょう。

退職金と退職所得の違い

退職金とは

退職金とは、勤務先から退職するときに支払われるお金です。退職金の受け取り方は、主に以下の3パターンがあります。

なお退職金は、年収には含まれません。退職金を年収に含めると、給与とともに総合課税(累進課税)され、多額の納税が必要となってしまいます。

老後の生活や転職活動中の生計費である退職金(一時金)は、総合課税とは別の計算をおこなうことで、税金を軽くできるように考慮されています。

退職所得とは

退職所得とは、退職によって受け取るお金の合計額から控除額を差し引いた額のことです。計算式は次のとおりです。

退職所得=(退職に伴う収入の合計―退職所得控除)×2分の1

「退職に伴う収入の合計」には、勤務先から受け取る退職金のほかに含まれるものがあります。

なお、確定給付企業年金制度で勤務期間に従業員が負担した保険料は、退職に伴う収入から差し引くことができます。

退職所得控除の計算方法

ポイントは勤務年数が「20年以下」か「20年超」か

退職所得控除は、勤務年数が20年以下か20年超であるかによって大きく変わります。

勤務年数が20年を超えると退職所得控除の金額が急増し、以後勤務年数とともに控除額が増加するため、退職金にかかる税金が少なくなります。退職所得控除の計算式は、下記のとおりです。

勤務年数 退職所得控除額の求め方
20年以下 40万円×勤務年数(合計が80万円に達しない場合は、80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数―20年)

勤務年数については、1年に満たない月数は1年に切り上げします。このため、短期退職所得の基準である5年と、退職所得控除の計算式が変わる20年の節目については注意が必要です。

退職所得控除の5年ルールとは

退職金を計算するときにはよく「5年ルール」が用いられます。

5年ルールとは

退職金(一時金)を複数回(または複数か所)に分けて受け取るとき、5年以上の間隔をあけると、その度に通常の退職所得控除を受けられることを指します。

注意点は、退職金(一時金)にかかる退職所得控除の5年ルールであるため、iDeCoなどには適用できないことです。

つまり、iDeCoを受け取ってから5年以上の間隔をあけて退職金(一時金)をもらうことにすれば、iDeCoを受け取るときと退職金(一時金)をもらうときの2回とも、原則的な退職所得控除を受けられます。

反対に、退職金(一時金)をもらってから5年あけてiDeCoを受け取ると、iDeCoの受け取り時には原則的な退職所得控除が受けられません。

2022年1月に改正!従業員の短期退職手当等が新設

2021年の税制改正によって、2022年1月1日以降を退職日とする退職金から、退職金の考え方と計算式が改正されています。

勤務年数が5年以下の従業員の場合、退職金について「短期退職手当」という考え方が新設され、退職金にかかる税金の計算も変更されました。改正後の退職金は、次の4つの種類に分けて考えます。

勤務年数5年以下 勤務年数5年超
従業員の場合 短期退職手当(新設) 一般退職手当
役員などの場合 特定役員退職手当 一般退職手当

勤務年数5年以下の従業員の場合は「短期退職手当」となり、退職所得を計算するときの2分の1の減額を300万円まで(300万円を超える部分は2分の1にならない)とすることに改正されています。

とくに経営層や経理・労務担当者の方は、人件費を適切に把握するためにも改正内容を正しく理解しておきましょう。

退職金にかかる税金の計算方法|税金がかからないケースとは?

退職金にかかる3つの税金

退職金には、以下の3つの税金がかかります。

冒頭でお伝えした通り、退職金は給料と異なる取り扱いをすることで、税金の負担が軽くなるように設計されています。そのため、結果的に退職金に税金がかからないこともあります

退職金よりも退職所得控除が多いと税金はかからない

退職金よりも退職所得控除が多いと退職所得は0となり、税金はかかりません。退職金は受け取り方によって、課税方法も異なります。勤務先の退職金の決まりを事前に確認しておきましょう。

退職金にかかる税金の計算方法・シミュレーション

具体的な退職所得の計算例と退職所得がある場合の税率は、次のとおりです。

1. 退職金から、勤務年数に応じた退職控除額を差し引きします。
2. 退職控除額を差し引きした金額に2分の1をかけて、退職所得を計算します。

3. 退職所得に応じた税率をかけて、所得税額を計算します。(求める税額=A×B-C)

▼令和4年分所得税の税額表

A 課税退職所得金額 B 税率 C 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

4. 所得税額に所得税額の2.1%の復興特別所得税を加えると、税金が計算できます。

退職金を一時金で受け取る場合の税金は分離課税で計算

退職金を一括でもらう一時金方式の場合は、給料とは別に扱う「退職所得」として取り扱います。退職所得は分離課税となり、退職所得控除などを行って、単独で税金を計算します。

退職金を年金で受け取る場合の税金は総合課税で計算

退職金を、毎年分割で受け取るなどの年金方式の場合は「雑所得」として総合課税の対象となります。雑所得の対象である、公的年金や副業による収入のうち、公的年金に該当するためです。

退職金を年金方式でもらうときは、収入である退職金(年金)から公的年金控除額を差し引いて計算します。公的年金控除は公的年金の合計金額によって変わるため、退職金(年金)以外の年金を含めて計算する必要があります。

退職所得控除が勤務年数を問わず一律に?退職金一律課税案について

退職金に関する税金の特長は、勤務年数が長いほど退職控除額が大きくなる点です。つまり、

  • 税金が優遇されている
  • 一時金方式で受け取る場合と年金方式で受け取る場合によって課税方法が異なる

の2点です。退職金一律課税案では「勤務年数や退職金の受け取り方法にかかわらず、退職金額によって一律の税率にしてはどうか」という議論がなされています。


「退職金」一律課税案の概要

議論の背景には、

  • 転職の増加
  • 退職金がない代わりに給料が高めになっている会社の増加

などがあります。現時点ではあくまでも検討の段階であるため、今後の議論によって、退職金にかかる税金の考え方が大きく変わることもあり得ます(2023年4月時点)。


2023年11月8日日経新聞より

自民党の宮沢洋一税制調査会長は8日、退職金課税の見直しには10〜15年の猶予期間が必要になるとの見解を明らかにした。退職後の所得にかかわる年金制度改革とともに2024年以降に議論する。2023年12月22日の税制改正大綱でも触れられておらず、見送りとなった。


退職金にかかる税金の納付方法

退職金にかかる税金の納付

退職金にかかる税金は、年末調整で納付する源泉徴収が簡便ですが、確定申告をおこなったほうがよい場合もあります。

源泉徴収で退職金にかかる税金を納付するなら申告書の提出が必要

退職金にかかる税金は、源泉徴収で納付することができます。退職金をもらうまでに勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することが必要です。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職金をもらうときに、退職金の支給金額(税引き前)に一律20.42%の税金が差し引かれます。この場合は、確定申告により払いすぎた税金の還付を受けることが可能です。

退職金を受け取り後に確定申告した方が望ましい3つの例

退職金をもらった年について、確定申告をしたほうが望ましい例は、主に次の3つのケースです。

例1.「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないとき

退職所得控除などの計算がされていないため、税金を払いすぎの状態になっています。払いすぎた税金については、確定申告で還付を申告する必要があります。

例2. 退職した年の年収が、退職した年の前の年収より下がっていたとき

年の途中で退職して年末調整がおこなわれていないときは、確定申告で税金が還付される可能性があります

例3. 退職後に健康保険を任意継続している、医療費控除を受けたいとき

退職後に支払っている健康保険の任意継続保険料について社会保険料控除を受けたい、医療費控除を申告したいなどの場合は、確定申告が必要です。

確定申告をしないとどうなる?

退職金を受け取るまでに「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、確定申告は不要です。前述のとおり確定申告をしたほうが良い例は、確定申告をしないと納めすぎた税金は返ってこないためです。

まとめ

従来、終身雇用を前提とした働き方にあわせて、退職金にかかる税金の考え方が決められてきました。しかし、近年の雇用の流動化や働き方の多様化に伴い、退職金への課税の考え方が大きく変わる可能性があります。

退職金は、老後の生活を支える重要な収入であり、退職金にかかる税金は、会社だけでなく従業員も関心が高い事柄です。従業員自身も事業者も、今後の退職金制度のあり方や税制の見直しについては注意することが大切です。

稲田光浩税理士事務所 監修者稲田 光浩

30歳で税理士試験5科目合格(簿記論、財務諸表論、法人税、相続税、消費税)。複数の会計事務所に勤務し、個人商店から売上100億円企業まで税務顧問していた実績あり。短期的な目線で物事を判断せず、社長の頭の中をアウトプットし可視化することで、本当にやりたいことや、やるべきことを明確にし、実現するために実行支援を行っている。
詳しいプロフィールはこちら

本コンテンツは労務SEARCHが独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツ制作ポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合は報告フォームよりご連絡ください。

この記事をシェアする

労務SEARCH > 人事労務管理 > 福利厚生 > 退職金に税金はかからない?税金の計算方法と一律課税案について