高年齢者が会社を退職する際、会社側は雇用保険や社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する手続きをおこなわなければなりません。では高年齢者も高年齢者以外も、退職に関する手続きの内容に違いはないのでしょうか?
この記事では、高年齢で退職する従業員に担当者が手続きを案内する際、気をつけるべき内容について確認していきましょう。
目次
高年齢従業員は、退職するとこれまでの生活が大きく変化するため、不安に思っている人も多いことでしょう。高年齢従業員が退職する際、通常の退職者と同様の退職手続きをおこないます。
このとき特別な手続きは必要ありませんが、担当者としては社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きについて詳しくないという高年齢従業員に対して、丁寧に案内をしてあげるとよいでしょう。
高年齢従業員が退職後にほかの企業に再就職をする場合、健康保険適用事業所であれば従来どおり企業に手続きを任せるのがよいでしょう。一方で、
は次のような選択肢があります。
また、高年齢従業員の年齢によってもある程度手続きに違いが生じます。特に60歳未満の従業員は、退職をするにあたって国民年金への加入が必要となります。そのため、もし退職する従業員が対象となる場合は、しっかりと伝えてあげるようにしましょう。
高年齢従業員が退職する際「年金の手続きはどのようなことを行うのか」という質問をされることが非常に多いようです。このとき、退職者が適切な手続きを行うためにも、次の内容を参考に詳しく回答するよう心掛けるとよいでしょう。
国民年金の被保険者は、以下の3種類に分けられます。
60歳未満で会社を退職して再就職しない、もしくは扶養に入らない場合は国民年金の第1号被保険者となる加入手続きが必要になります。
手続きを行う窓口 | 退職者の住所地の市区役所または町村役場 |
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添付書類 | 年金手帳または基礎年金番号通知書 |
提出期限 | 退職日の翌日から14日以内 |
提出者 | 退職者本人または世帯主 |
令和5年度の保険料はひと月あたり16,520円ですが、保険料は年度によって変動します。保険料の納付が困難である場合に限り「法定免除」または「申請免除」といった免除制度の利用が可能です。
国民年金の第3号被保険者となる加入手続きが必要になります。また、第3号被保険者となるには、被保険者(扶養する側)によって生計が維持されていることが条件となります。
提出先 | 配偶者が勤務している事業所を管轄している年金事務所へ郵送で提出 |
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届出・申請書名 | 国民年金第3号被保険者関係届出書(資格取得届) |
添付書類 | 非課税証明書などの収入確認のための書類、年金手帳または基礎年金番号通知書 |
提出期限 | 扶養に入った日から14日以内 |
提出者 | 退職者本人(事業主経由) |
扶養に入る場合の保険料は、配偶者が加入している厚生年金保険や、共済組合から搬出されるため個別の保険料はかかりません。
老齢基礎年金の受給資格がない、もしくは満額の年金を受けることができない人は、65歳になるまでであれば、国民年金に任意加入をすることができます。
加入手続きと毎月の保険料は、国民年金の第1号被保険者と同様になります。ですが、任意加入の場合は保険料の免除制度は受けられません。
平成29年1月1日より、65歳以上の労働者も「高年齢被保険者」という位置づけで、雇用保険の適用対象となりました。
また、高年齢被保険者として退職される従業員が再就職を希望している場合、受給要件を満たすごとに「高年齢求職者給付金」が受けられます。この高年齢求職者給付金は年金と併給が可能です。
なお、給付金を受けるには離職後に住居地管轄のハローワークへ求職の申し込みをしたうえで、以下の受給資格の決定を受ける必要があります。
詳しくは厚生労働省のホームページより「【重要】雇用保険の適用拡大等について」を、ご参考ください。
高年齢従業員が退職するにあたり、担当者として特別な手続きは必要ありません。ただ、高年齢従業員が退職後に手続きを忘れていた、または誤った手続きをしてしまったことで、不利益を被ってしまってはいけません。
そのため、担当者としては、できるかぎりどのような手続きをしなければいけないのか、給付金の受給資格があるのかを、高年齢従業員に伝えサポートしてあげることが望ましいでしょう。
上場の建設会社にて情報システムの開発、運用、管理を経験した後、人事部に異動して給与計算、社会保険手続きから採用・退職など、人事労務管理に約12年従事。やまもと社会保険労務士事務所の所長、特定社会保険労務士。
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