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国民年金はいつまで払う?65歳まで延長はいつから?支払期間と受給額を解説

国民年金はいつまで払う?65歳まで延長はいつから?支払期間と受給額を解説

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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この記事の結論

  • 国民年金保険料は、20歳から60歳までの40年間の支払いが義務づけられている
  • 現在、国民年金保険料の支払い期間を5年延長し、20歳から65歳までとする案が議論されている
  • 2024年度の国民年金の保険料は1カ月あたり1万6,980円
  • 国民年金の受給額は満額で年81万6,000円・月6万8,000円(2024年4月分から)

厚生労働省は国民年金保険料の支払い期間を65歳までと延長する案を検討していますが、2024年7月の年金部会でこの改革案は先送りとなりました。しかし、財政検証の結果をまとめた上で再び年内に実施の可否を判断し、2025年の年金制度改正の議論に取り組む方針です。

この記事では、国民年金保険料は月にいくら支払う必要があり、いつから・満額でいくらもらえるのか、また、65歳までに延長される可能性がある理由とは何なのかなど、2024年度版の最新情報をご紹介します。

国民年金とは

国民年金とは、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての国民が加入を義務付けられている公的年金です。基礎年金とも言い、老齢になったときの経済的な保障だけでなく、障害や死亡など万が一のことが起こったときに安定した生活を送れるようにするための社会保障制度の一つです。

国民年金の被保険者は、下記の3種類に分けられます。

国民年金の被保険者の種類

種類 具体例
第1号被保険者 第2号および第3号被保険者に該当しない自営業者など
第2号被保険者 厚生年金保険や共済組合に加入する会社員、公務員など
第3号被保険者 第2号被保険者の扶養家族である配偶者で、20歳以上60歳未満の方

「3階建て」である日本の年金制度のしくみ

日本の年金制度は「3階建て」です。具体的には、1・2階に国民皆年金という特徴がある公的年金、3階に任意加入の私的年金という構造です。
20歳以上60歳未満の全ての国民に加入が義務付けられていること。

年金制度の仕組み

年金制度 加入対象
1階部分 国民年金
(基礎年金)
日本に住む
20歳以上60歳未満の全国民
2階部分 厚生年金保険 会社員
(公務員、私学教職員を含む)
3階部分 企業年金
個人型年金(iDeCo)など
種類によって異なる

公的年金は、国民年金と厚生年金のことを指します。働いている世代である加入者(被保険者)が一定の保険料を納めることで、働けない世代である高齢者に年金として給付をおこなうという「世代と世代の支えあい」といった考えで公的年金は運営されています。

国民年金はいつまで支払う?

国民年金の支払期間については延長の噂もあり、何歳まで支払えばいいのか混乱している方もいるでしょう。ここでは、2024年度の最新情報をまとめています。

国民年金保険料は60歳になったら支払い義務なし

国民年金保険料の支払い義務

国民年金の保険料は、20歳になってから60歳になるまでの40年間(480カ月)の支払いが法律で義務づけられています。保険料を40年間支払い続けることで、満額の年金を受け取ることが可能です。

60歳になったら、国民年金保険料の支払義務はありません。ただし次に該当する方は、60歳以降も任意加入することができます(厚生年金加入者は除く)。

【最新】国民年金の支払期間が65歳までに延長される?

前述のとおり現時点(2024年8月)では、20歳〜60歳までの40年間が年金の支払期間です。しかし、少子高齢化の進行が速いことや将来の受給金額水準の低下防止のため、厚生労働省は支払期間の5年延長を検討しています

国民年金の納付期間が延長される?

期間が延長された場合は、年金の支払期間が40年間から45年間となり、納付が義務づけられる年齢は20歳〜65歳の方です。

国民年金の支払期間延長案の最新情報

この延長案はかねてより議論されてましたが、2023年10月に開かれた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)において本格的に議論が開始されました。延長案の結論は2024年度末に出し、2025年の通常国会で制度の改正案提出を目指しています。

今回の延長案が現実化すると、第1号被保険者である個人事業主や、60歳になる前に早期退職した人などは、保険料の支払い負担が増えることとなるでしょう。

国民年金の保険料の支払いはいくら?

国民年金は、全加入者が一律の保険料を支払います。毎年見直しがおこなわれるため、金額の変動に注意をしましょう。

国民年金保険料は月16,980円!安くするには?

国民年金の第1号被保険者の保険料は、1カ月あたり16,980円です(2024年度)。納付期限である翌月末までに支払いが必要です。保険料をなるべく安くしたい方は、前払い(前納)をしましょう。まとめて前払いすると割引があり、更に口座振替による割引もあります。

国民年金を前納した場合の割引額は?

国民年金保険料の納付期限は翌月末日

国民年金保険料の納付期限は「納付対象月の翌月末日」です。たとえば8月分の保険料は9月末日が納付期限となります。ただし、月の末日が土日・祝日または年末年始の場合は、翌月最初の金融機関の営業日が納付期限です。

国民年金保険料が未納の場合、障害基礎年金や遺族基礎年金などを受給できない可能性があるため注意しましょう。

国民年金保険料の支払い方法

国民年金保険料の支払い方法は、以下の3つです。

国民年金保険料の支払い方法

一部未対応のクレジットカードもあり

金融機関や郵便局・アプリなどを利用して納付する際には、納付書を用いて手続きをおこなう必要があります。口座振替の場合は保険料は毎月自動で引き落とされ、納め忘れの心配がありません。またクレジットカードで支払う場合は、カード会社が継続的に立て替えて支払います。

国民年金はいくらもらえる?

国民年金の保険料を支払った場合、将来年金はいくらもらえるのでしょうか。なお、国民年金を受け取るには条件があります。ここでは国民年金の受給について解説します。

2024年の年金額(満額)は年81万6,000円・月6万8,000円

国民年金はいくらもらえる?

国民年金(基礎年金)の受給額は、2024年4月分から満額支給で年81万6,000円、月6万8,000円です。2023年と比較して原則2.7%の引き上げられています。
1956年4月1日以前に生まれた方の満額は月額67,808円。

国民年金(基礎年金)としてもらえる額は、毎年変わることを覚えておきましょう。

国民年金をもらうには最低10年の加入が必要

なお国民年金をもらうためには、最低10年(120カ月)以上の加入が必要です。国民年金への加入期間が40年(480カ月)に満たない場合は、支払い回数に応じて、減額された金額がもらえます。
保険料を支払った回数と支払免除や減額納付した回数の合計

国民年金の金額がいくらか求める計算式

国民年金保険料を支払った回数による受給額の計算式は、次のとおりです。

国民年金の年間受給額の計算方法

たとえば国民年金に20年加入し、2024年から年金を受け取る方の年間受給額を求める場合は、下記のように計算します。

例:国民年金に20年加入し、2024年から年金を受け取る場合

816,000円×240÷480回=408,000円(年間受給額)
免除期間等がなかった場合

納付免除や減額納付したことがある場合は、満額支給の金額から減額されます。67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)であれば、計算式は下記のとおりです。

全額または一部の納付が免除された場合

上記は、免除期間が平成21年4月以降の場合の計算式です。平成21年3月分までの免除期間については、全額免除は3分の1、4分の1納付は2分の1、半額納付は3分の2、4分の3納付は6分の5で計算します。

もらえる年金額を増やす3つの方法とは

1. 付加保険料制度の活用

もし年金の受給額を増やしたい場合は「付加保険料制度」の活用がおすすめです。国民年金保険料+任意で付加保険料(月400円)の支払いをすることで、年金支給額が加算されます。加算される付加年金(年額)は、下記の計算式で求めます。

付加年金額の計算方法

例:付加保険料を40年間(480回)納付した場合

200円×480回(支払った回数)=96,000円
⇒年額96,000円を国民年金に加えてもらうことができます。

なお付加保険料を納付することができるのは、国民年金第1号被保険者や任意加入被保険者です。

2. 任意加入制度の活用

上記の付加年金に加入することができる任意加入被保険者とは「任意加入制度」を活用している被保険者のことを指します。任意保険加入制度とは、年金額の増額を希望する場合、以下の条件を満たすことで任意加入できる制度です。

3. 年金生活者支援給付金の活用

国民年金(基礎年金)の受給者で一定の所得条件などに該当する人は、生活の支援のために年金に上乗せして下記の給付金を受け取ることができます。

それぞれ支給条件があり、条件をすべて満たしている方が受給対象となります。

支給要件
老齢年金生活者
支援給付金
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者
・同一世帯の全員が市町村民税非課税
・前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が87万8,900円以下
障害年金生活者
支援給付金
・障害基礎年金の受給者
・前年の所得が472万1,000円以下
遺族年金生活者
支援給付金
・遺族基礎年金の受給者
・前年の所得が472万1,000円以下

国民年金はいつからもらえる?

これまでお伝えしたとおり、国民年金保険料の支払いは60歳までです。では国民年金はいつから受け取れるのでしょうか。この項では、年金を早く受け取りたい・なるべく年金を多く受け取りたい方向けに、繰上げ受給と繰下げ受給についても解説します。

国民年金の受給は65歳から

国民年金をもらえる年齢は、原則として65歳からです。受給する人の希望によって、国民年金を受け取りはじめる年齢を60歳から70歳(または75歳)までの間の好きな受給開始月に変えることができます。

国民年金は繰上げ受給・繰下げ受給も可能

65歳未満で前倒して年金を受け取りはじめることを「繰上げ受給」、66歳以降に受け取りはじめることを「繰下げ受給」といいます。

国民年金は繰上げ受給・繰下げ受給も可能

メリット・デメリット
繰上げ受給 繰上げした年数に応じて年金受取額が最大24%減額
繰下げ受給 受給を遅らせた年数に応じて年金受取額が最大42%(または84%)増額

2022年4月1日以降に70歳となる人(1952年4月2日以降の生まれの人)は、繰下げ受給開始年齢を最大75歳まで延長することが可能となりました。
昭和37年4月2日以降生まれの方

2022年4月以降の繰下げ・繰上げ受給額の割合のイメージ

65歳での満額支給と比較した、繰上げ受給による減額・繰下げ受給による増額のイメージは次のとおりです。

年齢 繰上げ支給時の
支給額の割合
60歳 76.0%
61歳 80.8%
62歳 85.6%
63歳 90.4%
64歳 95.2%
年齢 繰下げ受給時の
支給額の割合
66歳 108.4%
67歳 116.8%
68歳 125.2%
69歳 133.6%
70歳 142.0%
71歳 150.4%
72歳 158.8%
73歳 167.2%
74歳 175.6%
75歳 184.0%

繰上げ受給、繰下げ受給ともに、増減された年金額は一生変わらないため、十分な検討が必要です。

国民年金保険料の支払いが間に合わない場合は?

国民年金保険料を期日内に支払うことが難しい場合は、以下3つの制度・措置を利用しましょう。

1. 免除制度・納付猶予制度

国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度とは、収入減少や失業などにより、国民年金保険料の支払いが難しい場合に救済措置を受けられる制度です。

未納のまま放置すれば一部年金の受給資格を失う可能性がある一方で、免除や納付猶予が承認されると支払いができない期間は保険加入期間としてカウントされます

2. 学生納付特例制度

学生の場合は、在学中に保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が適用できます。学生納付特例制度の適用条件は、以下のとおりです。

申請可能期間は原則4月から翌年3月で、審査の対象となる所得は前年です。たとえば2023年4月から2024年3月までに申請する場合、2023年4月以降の申請となります。

3. 追納制度

国民年金保険料は、追納制度を利用すれば後払い(追納)できます。保険料を後から払うことで、老齢基礎年金の年金額を増やすことが可能です。

免除や納付猶予・学生納付特例の承認を受けた場合、追納しなければ年金額に反映されず、全額納付した場合と比べて受給年金額が減少します。そのため、追納制度を利用し後から支払うことがおすすめです。また追納すれば社会保険料控除を受けられるため、所得税や住民税の負担が軽減されます。

追納ができる期間に注意

ただし、追納ができる期間は追納が認められた月の前10年以内の承認期間に限られます。そのため追納を検討している人は、早めに手続きを進めておきましょう。

まとめ

年金部会での報告内容は、今後の国民年金、厚生年金などの制度改革の方向性を予測する、重要な手掛かりとなっています。もともと年金制度は、5年ごとに制度を検証することになっています。早ければ2024年に改革内容の結論が出て、2025年の通常国会での法改正成立が見込まれています。

今回の国民年金を65歳まで支払う制度改正についてだけでなく、厚生年金や退職金に関する事柄は、経営者や60歳を超えて働く社員の関心も高い分野ですので、今後の議論の方向に注意しておく必要があります。

また、社会保険事務は複雑で、頻繁な法改正の見落としで徴収漏れが発生する可能性があるなど、的確な処理をおこなうためにはコストがかかる業務です。法改正内容をスピーディに把握し、必要に応じて専門家に相談する、クラウドサービスの導入で社会保険事務を効率化するなど、適切な対応が大切です。

みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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