アンケート調査結果
- 71.1%の男性が育休を「取得していない」
- 育休を取得しなかった理由の第1位は「社内の男性の育休制度が十分に整備されていない/前例がない」
- 男性の育休期間の理想は「1カ月以上3カ月未満」
更新日:
アンケートアンケート調査結果
近年、男性の育休取得が注目されています。実際に男性の育休取得率は増加傾向にあり、2023年には過去最高の取得率を記録しました。
しかし政府が目標としている取得率にはまだ達しておらず、今後は各企業がより一層、男性社員が育休を取得しやすい環境を整えなければいけません。
そこで弊サイトでは、子をもつ20代以上の男性180名を対象に、育休に関するアンケート調査を実施しました。育休を取得しなかった理由や理想とする育休期間など、気になる点を調査しています。
目次
まずは、男性の育休(育児休業)の取得状況に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
最初に「職場で男性向けの育休制度は導入されていますか?」と質問してみました。その結果、「導入されている」が64.4%、「導入されていない」が28.9%、「わからない」が6.7%の結果となりました。
回答者が勤務する6割以上の企業においては、男性向けの育休制度が導入されているようです。
では、実際にその制度を利用して育休を取得した男性はどのくらいいるのでしょうか。
次に「育休を取得しましたか?」と質問してみたところ、「取得していない」が71.1%、「取得した」が28.9%の結果となりました。やはり男性の育休取得状況は、取得する方より取得しない方のほうが圧倒的に多いことがわかります。
なお、前問で「(職場で男性向けの育休制度が)導入されている」と回答した方のうち、育休を「取得した」方は42.2%、「取得していない」方は57.8%でした。男性向けの育休制度が導入されていても、利用者は少ないことが伺えます。
ただし、育休制度を利用していないからと言って、男性が男性の育休取得に反対しているわけではないようです。
次の「男性が育休を取得することについて、賛成ですか?反対ですか?」という質問には、「賛成」と回答したのが79.4%、「どちらでもない」が16.7%、「反対」が3.9%の結果となりました。
次に、男性の育休期間に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
育休を「取得した」と回答した方に向けて「どのくらいの期間取得しましたか?」と質問してみたところ、第1位が「1週間以上2週間未満」で25.0%、第2位が「2週間以上1カ月未満」で21.2%、第3位が「1カ月以上3カ月未満」で17.3%の結果となりました。
育休を取得した方のうち、7割以上が1カ月未満の回答を選択していることから、男性の育休取得期間は1カ月未満と短めなことが伺えます。しかし中には、「1年以上」育休を取得した方が1.9%、「6カ月以上1年未満」の育休を取得した方が5.8%いました。
男性が取得できる育休は、原則、子どもが1歳に達するまで(最長2歳まで)取得できる育児休業制度に加え、それとは別に子どもの出生後、最長4週間の休業を取得できる”産後パパ育休“があります。
つまり男性は子どもの出生後、産後パパ育休と育休の両方を取得することで、1年と4週間(最長2年)の休業を取得できます。
しかし、産後パパ育休の知名度はまだ低いようです。
「産後パパ育休を利用しましたか?」という質問には、「利用していない」が45.0%、「制度を知らなかった」が43.9%、「利用した」が11.1%の結果となりました。
産後パパ育休は、2022年10月に創設された制度です。父親が子どもの出生後8週間以内に最長4週間の休業を、分割して取得することもできます。
企業は労働者から(本人または配偶者の)妊娠・出産などの申し出があった場合、個別に産後パパ育休についても周知した上で、育休の取得意向を確認しなければいけません。育児・介護休業法上で定められている具体的な周知事項は、下記のとおりです。
妊娠・出産などの申し出後の周知事項
これは育休の取得を円滑におこなえるようにするためです。労働者は(本人または配偶者の)妊娠・出産の事実があれば必ずその旨を企業側に伝え、企業は個別周知・意向確認を徹底しましょう。
次に、育休を「取得していない」と回答した方に向けて「育休を取得しなかった理由を教えてください」と質問してみました。
その結果、第1位は「社内の男性の育休制度が十分に整備されていない/前例がない」で25.0%、第2位は「社内で男性が育休を取得しづらい雰囲気がある」が23.4%、第3位は「仕事が忙しい/業務内容が多い」で21.9%の結果となりました。
前述の「職場で男性向けの育休制度は導入されていますか?」という質問には、64.4%の方が「導入されている」と回答したことから「前例がない」ことが男性社員が育休を取得しない大きな原因となっているのかもしれません。
また、男性向けの育休制度が導入されていても制度が整っていない場合は、育休を取得しにくいと感じる社員が多いでしょう。
では、育休を取得しない選択をすることが多い男性からみて、男性の育休期間はどのくらいが妥当だと考えているのでしょうか。
「男性の育休期間はどのくらいが妥当だと思いますか?」という質問には、「1カ月以上3カ月未満」が28.3%と最も多く、次に「2週間以上1カ月未満」が20.0%、続けて「3カ月以上6カ月未満」が16.1%の結果となりました。
実際に取得した育休期間の質問においての最多回答は「1週間以上2週間未満」でしたが、ここでは「1カ月以上3カ月未満」が最も多い回答となったことから、多くの男性は現状の育休期間に満足していないことが伺えます。
次に、職場の育児支援制度に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
職場の育児支援制度とは、リモートワーク勤務やフレックスタイム制、時短勤務などの柔軟な勤務制度のことを指しています。
「職場で育児支援制度は導入されていますか?」という質問には、「導入されていない」が47.8%、「導入されている」が40.0%、「わからない」が12.2%の結果となりました。
次に、前問で「導入されている」と回答した方に向けて、「育児支援制度は利用されましたか?」という質問をしてみました。
その結果、「利用していない」が55.6%、「リモートワークで勤務した」が22.2%、「時短勤務をした」が11.1%、「フレックスタイム制で勤務した」が9.7%の結果となりました。
半数以上が育児支援制度を利用しておらず、この「利用していない」と回答した方のうち、62.5%は育休も取得していません。つまり育休制度や支援制度が導入されていたとしても、子どもの出生前と変わらない勤務体系で働き続ける男性が多いことが伺えます。
次に、男性の育休中のリスキリングに関する調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
まず「育休中にリスキリングを実施しましたか?」という質問には、「実施していない」が93.9%、「実施した」が6.1%の結果となりました。
リスキリングとは新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践すること・学び直しをすることを意味します。男性の育休期間は短い傾向にあるためか、ほとんどの方がリスキリングを実施していないようです。
次に、前問で「(リスキリングを)実施した」と回答した方に向けて、「具体的に何を行なったか教えてください」という質問をしてみました。
その結果、「資格の取得」が37.5%と最も多く、次に「復帰後に向けた勉強」と「副業」が同率2位で18.7%ずつ、第4位が「語学の勉強」で12.5%、続けて「ボランティア/インターン」と「育児中の方向け勉強会・イベントへの参加」が同率5位で6.3%の結果となりました。
弊サイトが女性を対象におこなった産休・育休に関するアンケート調査でも、育休中のリスキリングとしても最も多かったのは「資格の取得」であり、人気が高いことが伺えます。
「育休中のリスキリングに賛成ですか?反対ですか?」という質問には、「賛成」と回答したのが55.0%、「どちらでもない」と回答したのが35.0%、「反対」と回答したのが10.0%の結果となりました。
2025年4月から、従業員数が100名を超える企業においては、男性の育休取得率の目標値を設定し、公表することが義務づけられます。これは男性の育児参加の促進と、育児と仕事の両立ができる環境づくりを目指すためです。
近年は、このような男性の育休取得率を上げるためのさまざまな対策が施行されており、今後男性の育休取得が義務化されることもあるかもしれません。
そこで次に、男性の育休の取得義務化に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
「男性の育休の取得義務化について、賛成ですか?反対ですか?」と質問してみたところ、「賛成」が65.0%、「どちらでもない」が23.3%、「反対」が11.7%の結果となりました。
現時点(2024年4月)で育休の取得は義務化されていませんが、政府は男性の育休取得率について、2025年までに50%・2030年までに85%を目指す方針を発表しています。
「もしこれからお子さんが生まれるとしたら、育休を取得したいと思いますか?」という質問には、「取得したい」が52.8%、「どちらかと言えば取得したい」が32.2%、「どちらかと言えば取得したくない」が11.7%、「取得したくない」が3.3%の結果となりました。
8割以上の男性が、今後は育休を「取得したい」もしくは「どちらかと言えば取得したい」と回答しています。
前問で「どちらかと言えば取得したくない」もしくは「取得したくない」と回答した方に向けて、「その理由として最も近いものを一つ選んでください」と質問してみました。
その結果、「仕事への影響が心配」が33.3%と最も多く、次いで「収入を減らしたくない」が26.0%、「社内で男性が育休を取得する理解が不足している」が18.5%、「仕事への責任感やプレッシャーがある」が14.8%の結果となりました。
育休を取得したくない理由として「仕事への影響が心配」を選んだ方が最も多い結果となったことから、男性社員の育休取得を促進するには、社内で育休社員をカバーできる体制を整える必要がありそうです。
最後に「今後、育休を取得する際に会社に望む支援やサポートがあれば教えてください」という質問をしてみました。その結果、大きく分けて8個の要望が集まりました。
企業が男性の育休取得を促進するためには、ただ取得を促すだけでなく、休業できる職場づくり、復帰後のサポートなどが必要不可欠です。
今回のアンケート調査では、今後育休を取得したくない理由として、仕事への影響を心配する声が最も多く上がりました。企業は必要に応じて、育休社員に仕事の進捗状況を定期的に共有するなど、独自の対応をおこなえるとより良い職場環境につながるでしょう。
2022年4月の育児・介護休業法の改正などにより、男性の育休取得は以前より容易になっています。しかし容易になっているものの、育休取得は「労働者本人が申し出をした場合」や「労働者本人が希望する範囲で」と定められており、現時点(2024年4月)では取得が義務づけられていません。
今回のアンケート調査では、71.1%の男性が育休を取得しておらず、取得した方でも7割以上が1カ月未満の育休であったことがわかりました。
取得しなかった理由の第1位は「社内の男性の育休制度が十分に整備されていない/前例がない」であり、男性社員の育休取得率を向上させるためにはこの課題を解決しなければなりません。今回のアンケート調査結果を参考に、企業は男性も育児参加しやすい職場を目指しましょう。
調査名 | 育休に関するアンケート |
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調査対象者数 | 180名 |
調査対象 | 20代以上の育休が付与される条件を満たす男性 |
調査期間 | 2024年2月16日~2024年2月29日 |
調査方法 | インターネット調査 |
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