アンケート調査結果
- 個人事業主ら201名のうち、インボイス制度の登録申請をした方は30.8%
- 登録申請をした理由の第1位は「登録しないと仕事が減りそうなため」
- 取引先から課税事業者になってほしいといった要望や、免税事業者に対する契約条件や価格に関する交渉は「今のところない」が最多
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アンケートアンケート調査結果
2023年10月1日に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)。
オンライン署名などによる反対の声を押し切りながら開始されましたが、開始されてからしばらく経った今、個人事業主らにどのような影響をおよぼしているのでしょうか。
弊サイトではインボイス制度に関する意識調査をするため、インボイス制度の影響を受けたとされる201名の個人事業主・フリーランス・自営業者を対象に、アンケート調査を実施しました。
まずは、インボイス制度の登録状況に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
最初にインボイス制度導入に伴い、登録申請をおこないましたか?という質問をしてみたところ、「登録した」が30.8%、「登録していない」が69.2%の結果となりました。
インボイス制度は2023年10月より開始されましたが、回答者のうち約7割がインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の登録をしていないようです(2024年2月時点)。
国税庁の発表によると、インボイス登録件数は増加傾向にあり、2024年2月末時点で登録件数は約441万件です。インボイス制度は法人にも関係がある制度ですが、今回のアンケート調査では、回答対象者を個人事業主・フリーランス・自営業者としています。
次に、前問で「(インボイス制度に)登録していない」と回答した方に向けて、今後インボイス制度の登録申請をする予定はありますか?と質問してみました。
その結果、「登録する予定がない」が51.0%、「わからない/決めていない」が23.7%、「取引先から求められれば検討する」が20.9%、「登録する予定がある」が2.9%となりました。
では回答者の多くが、インボイス制度の登録申請をしなかったのはなぜでしょうか。その理由を調査するため、「(インボイス制度に)登録していない」と回答した方に向けて、インボイス制度に登録していない理由を教えてくださいという質問をしてみました。
その結果、「課税売上高が1,000万円以下なため」が36.5%と最も多く、続けて「登録するメリットを感じないため」が23.6%、「登録する必要がない業種のため」が12.1%、「手続きや事務作業が面倒なため」が11.4%、「主な取引先が免税事業者なため」が5.5%、「消費税を納める負担が生じるため」が4.9%、「その他」が5.5%となりました。
インボイス制度の登録申請は任意です。そのため、年間の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主らは、インボイス制度開始後も仕入消費税の納税義務が免除される”免税事業者“のままな方が多いようです。
なお、第3位の「登録する必要がない業種のため」は、以下のような業種が当てはまります。
インボイス制度に関係ない業種
次に、インボイス制度にすでに「登録した」もしくは「登録する予定がある」と回答した方に向けて、登録した(する)理由を質問してみました。
インボイス制度の登録申請をした理由/登録申請する理由を教えてくださいという質問には、「登録しないと仕事が減りそうなため」が37.9%と最も多く、次いで「消費税の課税事業者だったから/課税事業者となる予定だから」が25.8%、第3位に「取引先に課税事業者が多いから」と「取引先から要求されたから」が10.6%で同率ランクインしました。
インボイス制度の登録申請をしないと、仕入先(取引先)が仕入税額控除をおこなえません。取引先の主な取引相手が課税事業者の場合、個人事業主などが免税事業者のままでいると、取引先から今後の取引を断られる可能性があります。
インボイス制度導入前から課税事業者だった、もしくはこれから課税事業者となる場合は、ほとんどの方がこの仕入税額控除を理由にインボイス制度の登録申請をおこなったでしょう。実際に財務省の資料によると、課税事業者の約97%が登録申請しています。
次にインボイス制度の開始後、免税事業者の取引に変化があったのかを調査してみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
まず、インボイス制度に「登録していない」と回答した方に向けて、取引先から課税事業者になってほしいといった要望はありましたか?という質問をしてみました。
その結果、「今のところない」が87.0%、「あった」が22.7%の結果となりました。約9割の方が免税事業者のままでいても、取引先から特に指摘はなかったということが伺えます。
次に、同じくインボイス制度に「登録していない」と回答した方に向けて、取引先から免税事業者のままでいる場合の契約条件や価格に関する交渉はありましたか?と質問してみたところ、こちらも「今のところない」が最多で84.2%、「あった」が12.2%の結果となりました。
これらの調査結果から、多くの企業はインボイス制度導入前と変わらず免税事業者と取引していることが伺えます。
最後に、インボイス制度に関する意識調査をしてみました。調査結果のポイントは、以下のとおりです。
まずはインボイス制度がスタートして、率直に今どのようにお考えですか?という質問をしてみました。
その結果、「廃止してほしい」が59.2%、「わからない/関心がない」が18.9%、「現状のままで問題ない」が15.4%、「導入を延期してほしかった」が5.5%、「その他」が1.0%となりました。
半数以上の方がインボイス制度に対して「廃止してほしい」と望んでいるようですが、その理由は何でしょうか。最後に回答者全員に対して、インボイス制度について思うことがあれば教えてくださいと質問してみたところ、廃止してほしい理由として主に以下の5つの理由があることがわかりました。
そのほか、インボイス制度に関しては下記のような意見が集まりました。
中にはポジティブな意見もありましたが、大半がデメリットを指摘する声でした。またインボイス制度に関して「よくわからない」「もっとわかりやすくしてほしい」といった声も多く、制度の不明瞭さも明らかとなりました。
今回のアンケート調査で、個人事業主らはインボイス制度の登録申請をしていない方が多いことがわかりました。その理由は「課税売上高が1,000万円以下なため」が最多で、反対にインボイス制度の登録申請をした30.8%の方の多くは「登録しないと仕事が減りそうなため」インボイス発行事業者になったようです。
またインボイス制度開始後、免税事業者のままでいても取引先から課税事業者になってほしいといった要望や、契約条件や価格に関する交渉は「今のところない」方が8割を超えています。
インボイス制度は開始前から廃止を求める声が上がっており、いまだに「廃止してほしい」と望む方が多いことが今回の調査で明らかとなりました。インボイス制度に伴う消費税や業務の負担増が、廃止を望まれる原因となっています。
調査名 | インボイス制度に関するアンケート |
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調査対象者数 | 201名の男女 |
調査対象 | 個人事業主、フリーランス、自営業者 |
調査期間 | 2024年2月15日~2024年2月28日 |
調査方法 | インターネット調査 |
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