インボイス制度とは?目的やポイントについてわかりやすく解説

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平成28年の税制改正において、消費税の複数税率制度に対応するためにインボイス制度の導入が決まりました。
納税額の計算が容易になるといったメリットもある一方で、対応するためには事前の準備や導入後の想定が重要です。
また、そもそもインボイス制度がどういった制度なのか、あいまいな方も多いかもしれません。
本記事では、インボイス制度の概要や導入する目的についてわかりやすく解説します。

監修者
労務 SEARCH

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インボイス制度とは

インボイス制度とは

令和5年10月1日より、新たな仕入税額控除の方式である「インボイス制度」がスタートします。導入後は、さまざまな企業や個人事業主に影響をおよぼすと考えられます。
導入直前に慌てないように、今のうちから概要や仕組みについて理解しておきましょう。

インボイス制度の概要

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」です。請求書などの記載事項が変更となり、取引内容や消費税率などの記載要件を満たした請求書等(インボイス)を発行・保存する制度です。要件を満たした請求書を発行・保存しておくことで、消費税の仕入額控除を受けられます。

インボイス制度は売り手・買い手の双方に影響をおよぼします。売り手側は買い手側にインボイスを求められた際は交付しなければならず、また買い手側は交付されたインボイスを保存しなければなりません。

適格請求書

インボイス制度で求められる記載要件を満たした請求書などのことを「適格請求書」と呼びます。つまり、インボイス=適格請求書です。

具体的には下記6項目の記載が必要となります。

また、小売業、飲食店業などの不特定かつ多数の人々に対して販売やサービス提供をおこなっている場合は、適格請求書の代わりに下記5項目の記載のみで発行できる「適格簡易請求書」が認められています。

インボイス制度を導入する目的

インボイス制度を導入する目的

インボイス制度を導入する目的は、消費税額・消費税率を正確に把握することです。
令和元年に消費税が10%に引き上げられ、また軽減税率が導入されたことにより、8%と10%の消費税が混在するようになりました。

消費税の納税額を正しく算出し、取引上のトラブルを避けるために、複数税率が記載されたインボイスを発行・保存することが義務づけられました。

インボイス制度導入による影響

インボイス制度の導入は買い手・売り手の双方に以下のような影響をおよぼすと考えられます。

インボイス制度導入による影響

  • 適格請求書発行事業者しかインボイスを発行できない
  • 仕入税額控除の要件が変更される
  • 新たな事務作業が発生する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

適格請求書発行事業者しかインボイスを発行できない

インボイスを発行するためには、税務署に適格請求書発行事業者登録の申請をおこなわなければなりません。

登録番号の通知を受けて、適格請求書発行事業者になることでインボイスを発行できます。

インボイス制度は令和5年10月1日より導入されますが、それまでに登録を受けるためには令和5年3月31日までに登録申請をおこなう必要があります。

また、課税売上高が1,000万円に満たない免税事業者は適格請求書発行事業者への登録申請ができず、インボイスを発行できません。

仕入税額控除の要件が変更される

そもそも仕入税額控除とは、課税売上の消費税額から課税仕入れの消費税額を控除することを指します。

しかしインボイス制度の導入後は、適格請求書発行事業者の登録番号や税率ごとに区分した消費税額等を記載しなければ、仕入税額控除を受けられません。

新たな事務作業が発生する

インボイス制度の導入は、買い手と売り手の双方に新たな事務作業が発生します。

売り手側はまず、適格請求書発行事業者への登録申請をおこなわなければなりません。また、インボイスを発行するためのシステムやツールの導入も検討する必要があります。

買い手側は請求書がインボイスの要件を満たしているのか、また取引先が適格請求書発行事業者かどうかなどを確認しなければなりません。一方でインボイス対応のシステムを導入した場合は、複数税率を計算する手間をかなり軽減できます。

売上1,000万円以下の中小規模事業者への影響

売上1,000万円以下の中小規模事業者への影響

インボイス制度の導入は、特に売上1,000万円以下の中小規模事業者への影響が大きいと考えられています。
売上1,000万円以下の中小規模事業者は免税事業者であることが多いですが、免税事業者はインボイスを発行できません。

そのため、以下2つの影響が予想されています。

消費税分の減額を要求される恐れがある

免税事業者が売り手側の場合はインボイスを発行できないため、取引相手は仕入額控除の要件を満たすことができません。つまり、免税事業者と取引した際に買い手側は支払った消費税を納税する必要があります。

そのため、売り手側の免税事業者は本来買い手側が仕入額控除を受けられるはずだった金額分の減額を要求される恐れがあります。

売上1,000万円以下の中小規模事業者でも課税事業者になることは可能です。しかし、課税事業者になると消費税の納税義務が発生します。

いずれにせよ負担が生じるため、免税事業者はメリット・デメリットを見極めて慎重に判断しなければなりません。

取引先が減少する可能性がある

上述のとおり、インボイスが発行できない免税事業者と取引する際は、買い手側は仕入額控除を受けられません。
そのため仕入額控除を重視した結果、免税事業者との取引を中止する企業が増える可能性があります。

もしくは取引先から課税事業者になることを要求されることも考えられますが、負担が大きいため、容易に決断できることではありません。
インボイスの発行を求める事業者との取引が多い免税事業者は、課税事業者になることや消費税の納税義務に耐えられる事業の基盤作りなどが重要です。

インボイス制度に対応するためのポイント

インボイス制度に対応するためのポイント

インボイス制度に対応するためには、制度について理解した上で実際に導入される令和5年10月1日までに以下2つのポイントを押さえておくことが大切です。

登録申請書を提出する

インボイスを発行するためには税務署に登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者の登録をしなければなりません。

ただし、制度が導入される令和5年10月1日までに登録を受けるためには、令和5年3月31日までに登録申請をおこなう必要がある点に注意してください。

なお、令和5年3月31日までになんらかの理由で登録を受けることが困難な場合は、令和5年9月30日までに登録申請書に事情を記載して提出しましょう。

そうすることで適格請求書発行事業者の登録を受けた際に、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされます。

また、免税事業者が適格請求書発行事業者になるためには、まず「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者になる必要があります。

インボイス制度に対応したシステム・ツールを導入する

インボイス制度が導入されると「請求書に記載しなければならない要件が追加される」「課税事業者と免税事業者の識別が必要となる」などの事務作業が増加します。

そのため、現在使用している請求書発行や受発注システムなどがインボイス制度に対応していない場合は、システムの改修や入れ替えをおこなう必要があります。

すでにクラウドサービスを利用している場合はアップデートで対応できることが多いようですが、念のため開発・実装予定を確認しておきましょう。

まとめ

今回は、インボイス制度の概要や導入する目的などについてわかりやすく解説しました。

インボイス制度は、消費税額・消費税率を正しく把握するために記載項目が追加された請求書等(インボイス)を発行・保存する制度です。

インボイスを発行しなければ買い手側は仕入税額控除を受けられず、自費で消費税を納税しなければなりません。

買い手・売り手双方に対応が必要であり、特に売上1,000万円以下の中小規模事業者への影響が大きいため、導入前にしっかりと制度について理解する必要があります。

本記事を参考に、導入後に慌てないようにインボイス制度における対応・準備を進めましょう。