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インボイス制度の経過措置とは?80%・50%の仕入税額控除を受ける要件を解説!

インボイス制度の経過措置とは?80%・50%の仕入税額控除を受ける要件を解説!

監修者:労務SEARCH 編集部
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2023年10月1日から開始したインボイス制度では、取引先によっては多額の仕入税額控除を受けられなくなる課税事業者もいるため、急激な負担を軽減できるようにインボイス制度の経過措置が設けられています。

この記事では、インボイス制度の経過措置について概要や適用要件などを解説します。特に免税事業者との取引がある事業者は確認しておきましょう。

インボイス制度についておさらい

インボイス制度についておさらい

インボイス制度とは、取引における消費税額をより正確に把握するために適格請求書(インボイス)を導入するというものです。課税事業者が消費税の仕入税額控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)の交付が必須になります。

複雑化する消費税を正しく管理するという目的のもと2023年10月1日より施行されました。適格請求書(インボイス)を発行するためには、適格請求書(インボイス)発行事業者としての登録を済ます必要があります。

適格請求書(インボイス)の発行は課税事業者のみであるため、取引先が免税事業者である場合は、その取引分における消費税の仕入税額控除は受けることができません。

そのため免税事業者の方に、適格請求書(インボイス)発行事業者としての登録をしていただき課税事業者となってもらうのが理想です。

ただし、そうなれば免税事業者であった取引先は課税事業者になり、消費税を納税しなければなりません。免税事業者側からすれば大きな影響であるため、よく話し合ってから対応しましょう。

インボイス制度における仕入税額控除の経過措置とは

インボイス制度における仕入税額控除の経過措置とは

インボイス制度の施行によって、免税事業者からの取引に係る消費税分は仕入税額控除として利用できなくなります。

しかし、課税事業者のなかには免税事業者との取引が大部分を占めているという場合もあるでしょう。そういった課税事業者の急激な負担を緩和するために、インボイス制度における経過措置が設けられています。

免税事業者との取引割合が大きい課税事業者は、その分仕入税額控除の対象外となってしまう額も大きいです。すると、急に多額の消費税を支払うことになってしまうため、その負担を軽減するために経過措置が設けられているということです。

このインボイス制度の経過措置では、課税事業者は適格請求書(インボイス)発行事業者以外からの請求書であっても、一定割合の仕入税額控除を受けることができます。

適用期間や、どのくらい割合が控除できるのか詳しくみていきます。

仕入税額控除における経過措置の適用期間

課税事業者に対する仕入税額控除の経過措置として、適用期間が6年間設けられています。つまりインボイス制度が施行された2023年10月1日から、2029年の9月30日までの取引に関しては経過措置が適用となります。

また、2023年10月1日から、3年単位で控除できる割合が決められており、免税事業者等からの課税仕入れでもそれぞれ80%・50%の仕入税額控除が受けられます。

適用期間 控除割合
2023年10月1日
〜2026年9月30日
仕入税額相当額の80%
2026年10月1日
〜2029年9月30日
仕入税額相当額の50%
2029年10月以降 0%

インボイス制度の経過措置は、対象となるのが適格請求書(インボイス)発行事業者以外の者と取引している課税事業者です。

取引先がたとえ課税事業者であっても、適格請求書(インボイス)発行事業者としての登録をしていない場合は、その取引分の仕入税額控除は経過措置の控除割合が適用となります。

仕入税額控除における経過措置の適用要件

インボイス制度での経過措置を受けるための要件として、帳簿や請求書に記載しなければならない項目があるため確認しておきましょう。

国税庁が公開している資料を参考に、それぞれに必要な記載項目を表でまとめました。

帳簿
・取引相手の氏名/名称
・課税仕入れ日
・課税仕入れに係る支払対価額
・課税仕入れに係る資産/役務の内容および経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
請求書
・請求書作成者の氏名/名称
・課税資産の譲渡日
・税率ごとに合計した譲渡の税込価額
・請求書交付を受ける当該事業者の氏名/名称
・課税資産の譲渡に係る資産/役務の内容および経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨

経過措置として仕入税額控除を一定割合受けるためには、帳簿や請求書に経過措置が適用される取引である旨を記載する必要があります。

記載の仕方は、「※」などを用いて80%控除対象である旨を記載することや「80%控除対象」などを該当取引の詳細に記載することなどが例として挙げられています。

上記の記載がなされた帳簿/請求書を保存していなければ、経過措置の適用にならないため必ず覚えるようにしておきましょう。免税事業者の方も請求書の書き方を理解しておくと取引がスムーズになります。

その他インボイス制度関連の経過措置

その他インボイス制度関連の経過措置

仕入税額控除のほかにも、インボイス制度における経過措置がいくつかあるため紹介します。

小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)

免税事業者が適格請求書(インボイス)発行事業者となった場合、2023年10月1日から2026年9月30日までの期間は、売上に係る消費税額の8割を控除できるという経過措置が設けられています。

この経過措置は通称2割特例と呼ばれています。上記対象期間中の4回分の申告において適用することができます。

しかし、特定期間における売上が一定金額以上ある場合や、新設した法人が一定規模ある場合などは2割特例の対象外となるためよく確認しておきましょう。

また、課税事業者が適格請求書(インボイス)発行事業者となった場合でも、特定課税期間において課税売上高が1千万円以下であれば、2割特例の適用を受けることができるため覚えておきましょう。

一定規模以下の事業者に対する税額控除に関する経過措置(少額特例)

税込1万円未満の少額な課税仕入れについては、適格請求書(インボイス)の保存がなくても、特定項目を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けることができます。つまり適格請求書(インボイス)発行事業者でない免税事業者でも適用となります。

基準期間※における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者が対象であり、2023年10月1日から2029年9月30日までの期間で適用されます。

「基準期間」とは、個人事業者の場合は対象年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のこと。「特定期間」とは、個人事業者の場合は前年1月から6月までの期間、法人の場合は前事業年度の開始の日以後6月の期間のこと。

また、税込1万円未満の課税仕入れとは1回あたりの取引における金額を指しています。そのため同時にいくつもの商品を仕入れて、合計が1万円以上である場合はこの経過措置の適用外となるため注意しましょう。

まとめ

課税事業者によっては、インボイス制度が始まったことにより多額の消費税を支払うことになる可能性があります。これは、免税事業者との取引が大半である場合に起こりうるケースです。

そういった課税事業者が背負う、急激な負担への救済措置としてインボイス制度の経過措置が設けられています。施行から6年間は、免税事業者などからの請求書であっても80%・50%の仕入税額控除を受けることができます。

しかし、帳簿や請求書にはしっかりと経過措置を適用する取引である旨を記載する必要などがあります。お互いのためにも課税事業者はもちろん、免税事業者側もインボイス制度の経過措置についてしっかりと覚えておきましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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