この記事でわかること・結論
- カスハラとは、顧客による嫌がらせなど不当な迷惑行為のこと
- クレームとの区別や判断基準は企業や業界で異なるものであり、マニュアル化しておくことが理想
- カスハラによって企業ブランド低下や、業績不振になる可能性もあるため対応フローの策定や周知が大切
この記事でわかること・結論
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客によるクレームのなかでも悪意がある著しい迷惑行為のことを指します。
長期間拘束するものや脅迫的なもの、暴力的な言動やインターネットでの中傷などがカスハラ行為にあたります。カスハラがたとえ言いがかりであっても、放置していると真偽を知らない第三者からの印象まで下がってしまう可能性があります。
組織内での業績不振や従業員のメンタル不良などの被害も考えられるため、本記事を参考にカスハラの具体的な行為および事例や、企業ができるカスハラへの対応策を確認しておきましょう。
目次
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客による不当な要求や過度なクレーム、暴言や威圧など従業員に対して精神的苦痛や不快感を与える行為を指します。カスハラの定義は定まっておりませんが、厚生労働省の対策マニュアルにおいては以下のような行為がカスハラに該当するものだとされています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの
上記のうち「顧客」とは、今後利用する可能性がある潜在的な顧客についても含まれます。こうしたカスハラ行為は、近年サービス業を中心に増加傾向にあり、従業員の心理的ストレスの原因となり得ます。
2024年2月には、東京都がカスタマーハラスメント(カスハラ)の防止条例を制定する方針を固めたことが話題となっています。制定されれば全国初となります。
カスハラは、「顧客は神様である」という考え方やサービス業における顧客満足度の重視が根本にあります。
加えてインターネットおよびSNSの普及により、企業へのカスハラが増加していったと考えられます。下記のような流れから、一部の顧客が自己の要求を正当化して商品やサービスを提供している企業の従業員に不当な圧力をかけることが多くなりました。
インターネットやSNSが一般化していくにつれて、顧客が簡単に企業への意見を書き込めるようになりました。SNSでの批判は大人数の目に留まるため、企業側が圧倒されてしまう構図になりがちです。数で負けることや、批判的な意見がどうしても目立ってしまうことなどが、カスハラ行為を増加させた要因だと言えるでしょう。
実際に、厚生労働省が5年間隔でおこなっているハラスメント実態調査(2020年調査)では、過去3年間でハラスメント相談のうち「顧客等からの著しい迷惑行為」に該当するとされる企業が92.7%と最も多いことが分かりました。
また、ハラスメントの種類で見れば、カスハラはパワハラやセクハラよりも新しいものであるため話題になりやすいという点もあります。言葉の認知度が上がることで、発生件数も並行して増える傾向にあるでしょう。
カスハラが起こっている状況であればすぐに対応したいところです。カスハラを放置していると、以下のようなリスクが発生することが考えられます。
カスハラは、正当な意見ではなく不当な迷惑行為や批判ではありますが、当事者ではない第三者の目にも留まるため、企業ブランドのイメージが低下する恐れがあります。
たとえ批判内容が多くの人にとって同意されるものでなかったとしても、「批判されていて話題だからなんとなく利用を避ける」という心理が働く人もいるのは事実でしょう。飲食店や食品などのケースでも、その1店舗および1商品に不祥事があっただけで利用する機会はグッと減ってしまいます。
また、カスハラの対象となっている組織内でも、批判的な目を消費者から向けられている状況により従業員のモチベーションの低下や退職に繋がることがあります。そのため、組織の存続のためにもカスハラが起こったときは早急に対処する必要があります。
カスハラとは顧客からの迷惑行為ですが、そのなかには批判的な意見を述べる行為も該当します。では、同じような意味を持つ印象がある「クレーム」という言葉とはどう違うのでしょうか。
クレームは、本来は商品やサービス等への改善を求める意見のことを指します。対してカスハラとは、過剰な要求や不当な言いがかり、または商品やサービスには全く関係のない悪質な意見であることが該当します。
そのため、クレームとカスハラの違いは「悪意があるかどうか」で判断されることが一般的です。カスハラの判断基準は企業や業界によって異なりますが、厚生労働省もひとつの尺度として判断基準のポイントを挙げているため、次で解説します。
カスハラはクレームとの境界線がハッキリとしていませんが、判断基準や具体例を覚えておくことでスムーズに対処できます。
厚生労働省の対策マニュアルでは、カスハラについて以下のような判断基準をまとめています。企業や業界によってカスハラの判断基準は異なるため、あくまで尺度のひとつとして確認しておきましょう。
上記が厚生労働省の考えるカスハラの判断基準です。まずは、自社に過失がないかの事実確認および要求されている状態にも注目します。たとえば業務時間に支障がでるほどの拘束力があることや、なかには犯罪に該当するほど暴力的である場合もあります。
厚生労働省の判断基準はあくまで一般的なものでありますが、企業文化や業界によって異なる判断基準が存在するため、企業それぞれがカスハラに対する判断基準を設けることで迅速かつ適切に対処ができます。
具体的には以下のような行為がカスハラに該当します。
上記がカスハラに該当する行為ですが、ほかにも業界特有のカスハラやコロナ禍のマスク強要など時期的なカスハラもあります。自社において過去の事例などがあれば、必ず確認しておきましょう。
また厚生労働省の対策マニュアルでは、顧客と接する機会の多い会社にヒアリングをおこない収集した、カスハラに該当する具体的な行為例を記載しています。
上記のようにカスハラはさまざまな種類の行為が当てはまります。都度適切な判断ができるように、厚生労働省の対策マニュアルを一度は確認しておくと良いでしょう。
企業はカスハラに対して適切な対処をおこなうために、事前に対応策を備えておくことが求められます。厚生労働省の対策マニュアルを参考に、企業が取り組むべきカスハラへの対応策についてまとめました。
組織としてカスタマーハラスメントについての基本情報や姿勢を全従業員へ明示することが大切です。また、従業員が全員落ち着いて対処できるように「カスハラへの対策マニュアル」を社内で策定しておくことも理想です。
カスハラについての基本事項や対応例などは、従業員全員が共通認識として知っておく必要があるでしょう。マニュアルだけではなく、定期的にカスハラおよびハラスメントについての研修をおこなうと効果的です。具体的には、以下のような研修内容が良いでしょう。
カスハラは頻繁に起こるものでもないため、従業員は対応について自信や経験値がつきません。そのため、いざ起こったときに適切な対応ができるように現場を想定した研修をおこないましょう。
カスハラの対応をした従業員へのケアも事前に考えておくことが大切です。カスハラによる精神的な苦痛から、休職や退職をしてしまう可能性も考えられます。
社内での相談窓口を設けることで、カスハラ対応について一人で溜め込まないような環境を作りましょう。また、相談窓口の設置については従業員へしっかりと周知してあげることで利用しやすくなります。
万が一カスハラが発生した場合は、以下のフローを参考に対処しましょう。
カスハラ発生時の対応フロー
カスハラに直面したら、まずは一人では対応せずに責任者などを呼びましょう。組織として対応が必要な場合は顧問弁護士と共に、顧客が有利にならないような対応方針を決定すると安心です。
そして、なによりカスハラ対応をした従業員のケアが大切です。外部の臨床心理士などに依頼することも効果的でしょう。社内での実例として、きちんとカスハラの詳細を記録しておくことも忘れないようします。
カスハラとは、カスタマーハラスメントの略称であり顧客および取引先などからいただくクレームのなかでも、悪意があり言動や要求内容に妥当性がないものを指します。近年ではインターネットの普及などによってカスハラが増えています。
高圧的、執拗的な発言や身体的および精神的な攻撃などカスハラに該当する行為は多数存在していますが、放置することで企業にも悪影響があるため適切に対処することが求められます。
カスハラは理不尽な要求などが多いため、実際に対応にあたる従業員への配慮および組織保護のためにも対応マニュアルなど策定しておく必要があります。発生時はどの従業員でも落ち着いて対処できるように、普段からカスハラ関連の周知をしておきましょう。
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