人事・労務の課題を解決するメディア労務SEARCH byオフィスステーション

Facebook twitter

メールマガジン無料登録

 

おすすめ記事やお役立ち資料をお届けします。

パワーハラスメント(パワハラ)とは!?定義や基準、企業対策をご紹介!

パワーハラスメントとは、職場内の優位性を背景に業務の適正範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為です。人手不足や労働環境の変化により、ここ数年でパワーハラスメントが増加し、社会問題化しています。

今回はパワーハラスメントの定義や基準、パワハラに該当するポイントや企業対策を中心にご紹介します。

パワーハラスメント(パワハラ)の定義

パワーハラスメントは職場環境の悪化や社員の離職、社員の健康被害などさまざまなデメリットを生み出します。管理職としてパワーハラスメントの定義や背景を知り、パワーハラスメントを未然に防がなければなりません。

パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為です。

【参考】厚生労働省 あかるい職場応援団

パワーハラスメントは明確な定義がされておらず、人事労務担当者や部下を持つ上司は、パワーハラスメントの定義を確認し、どういった行為が該当するかを認識しておくことが重要です。

また、管理職だけでなく、OJTや現場でのサポート役である先輩・後輩間での言動、そして同僚間でのいじめや嫌がらせもパワーハラスメントに認定されます。

パワーハラスメントを認定する判断基準は「業務の適正な範囲を超えたかどうか」が争点となります。

パワーハラスメントが起きる原因

パワーハラスメントが起きる原因には「経営環境の変化」と「日本企業の組織体質」の2点が挙げられます。現代の日本ではグローバル化による競争激化や人手不足など経営難に陥りやすい環境に変化していますが、利益を追求する企業の姿勢には変わりありません。

しかし、確実に業務量が増加し、ビジネス課題も高度化・複雑化しているため、管理職以上の社員が過度なストレスを抱えていると考えられます。その結果、立場の弱い社員への不適切な言動が増え、パワーハラスメントが蔓延するようになったといえます。

また、トップダウンによる指示や精神論を前提とした働き方など、日本企業の古い組織体質もパワーハラスメントを助長させる原因でもあります。

業務の適正な範囲とは

業務の適正な範囲とは、業務上指揮監督や教育指導において、必要かつ合理的と認められる範囲を指します。
業務の適正な範囲は、各企業によっても差がありますので、各企業において具体的な事案を明示し、その範囲を定義していく取り組みが必要です。

パワーハラスメントに該当しない指導事例

業務上、支障をきたす問題や行動がみられた場合、監督責任を有する上司は適切に指導しなければなりません。
適正な指導を行うためには、以下のポイントを押さえましょう。

  • 社員個人の問題を指導・教育する場合は周囲に配慮し、別室へ呼び出す
  • 感情的にならず、問題の理由を確認し、注意する
  • 発生した問題事案が原因で、チームへの負担や損害(代替要員・他メンバーへの業務割り振り)がどの程度発生したかを具体的に伝える(数値的根拠の提示が尚良い)
  • 問題改善のために本人が改善・注意すべき点、また会社としてフォローできる点を建設的に話し合う
  • 社内の懲戒処分事由に該当する場合、権限の範囲内で実施可能な懲戒処分に付す

パワハラに認定されないためには、精神的・肉体的に過度な苦痛を与えることなく、指導・教育を行わなければなりません。
客観的、および社会通念上「業務の適正な範囲」と認定できれば、たとえ部下からの異議申し立てや不満があったとしても問題ありません。

パワーハラスメントの6類型

パワーハラスメントは少なからず身体面・精神面への影響を伴いますが、身体面や精神面への直接的な「攻撃」だけでなく、それ以外の間接的なものもパワーハラスメントになりうることを意識しなければなりません。

身体的な攻撃

殴る・蹴るなどの暴力や罵詈雑言を浴びせる行為は、業務との関連が認められないことが多く、パワーハラスメントに認定されやすいといえます。
例えば、灰皿で殴るなどは論外ですが、資料などで頭を叩くなども身体的な攻撃に該当し、パワーハラスメントとなります。

精神的な攻撃

一般的に心身的に名誉を毀損する業務命令や、言葉により精神的苦痛になり得る行為もパワーハラスメントとなり得ます。また、上司・部下の関係性の悪化は、職場環境も悪化させる要因となるため、指揮監督や教育指導においては業務上不要な言動は避けるべきです。

以下の点を踏まえて、精神的な攻撃に該当するか判断しましょう。

  • 他の社員がいる前で叱る行為

    見せしめの意図があれば、パワーハラスメントに認定されやすいといえます。

  • 感情的に叱る・怒鳴る行為
  • 人格否定、尊厳を傷つける発言

    「だからお前はダメだ!」、「義務教育からやり直してこい!」、「親の顔が見てみたい!」などの発言

  • 企業の負担や損害の発生を抽象的に伝える発言

    「みんなお前のことを迷惑だと思っている」、「お前のせいでプロジェクトがダメになった」などの発言(責任や事態の重さを理解してもらうために伝えることが必要な場合も想定されます。そのため、上記の発言が必ずしもパワーハラスメントにならない場面もあります)

  • 脅迫に近い改善指導

    「次やったら、クビな」、「ぶっ飛ばすぞ」などの発言・脅迫

  • 適正な手続きを踏まない、就業規則にない私的な懲戒処分

    毎日のトイレ掃除やコピー係など直接業務に関係のない業務命令など

人間関係からの切り離し

組織内での仲間はずれや無視、意図的なコミュニケーションの欠如、不平等な待遇・扱い(情報を共有しない、席の隔離、口頭で連絡しないなど)は職場の人間関係を意図的に悪化させるパワーハラスメントとなり得ます。

過大な要求

遂行不可能な業務量の押し付けや長時間労働の強要は過大な業務要求としてパワーハラスメントとなり得ます。

過小な要求

能力や経験とかけ離れた程度の低い業務の指示、強要、意図のない単純労働(コピー取りやお茶汲みなど)などの強制は過小な要求となりパワーハラスメントに当たり得ます。

個の侵害

家族や交際相手などのことを執拗に尋ねる、プライベートな領域に踏み込んだ質問を行う、携帯の画面を覗き込むなどは個の侵害に当たり、パワーハラスメントとなり得ます。

パワーハラスメントの裁判事例

過去にパワーハラスメントとして認定された裁判事例をご紹介します。

川崎市水道局(いじめ自殺)事件

川崎市で起きたパワーハラスメントに関する事件です。裁判は2002年6月27日に行われました。
川崎市水道局の工事用水課工務係に配属されたAさんは、配属後1カ月ほど経った後、複数の上司からAさんの存在を否定するかのような発言を受け、ときには果物ナイフを突きつけられるなどのいじめを受けました。いじめは約6カ月間も続き、仕事を休みがちになったため、医療機関で治療を受けました。しかし、その後配属から約2年後に「かつての上司複数人への恨みの気持ちが忘れられない」と遺書に書き残して自殺しました。

Aさんのご両親は「上司によるパワーハラスメント行為がAさんのいじめが自殺につながった」と主張、訴えを起こしました。約2年後、いじめと自殺には事実上の因果関係があると認められました。
中でも責任者である課長もいじめ行為に加担したことや、適切に対処しなかった責任者も安全配慮義務を怠ったと判断されていることから、社内いじめへの適切な対処は管理職の責任といえます。

【参考】公益社団法人全国労働基準関係団体連合会

航空会社退職強要事件

Bさんは、〇社に勤める客室乗務員として昭和48年から18年以上勤務を続けていましたが、タクシーで勤務に向かう際に事故に遭い労災認定を受け、約4年間休業・休職しました。その後、復職訓練を受けましたが3回とも不合格と判断、その間、上司にあたるC氏はBさんに仕事を与えず、30回以上の面談を行って退職を迫り、復職訓練3回目の不合格となった後に、労働能力が低下したことなどを理由に就業規則の解雇事由である「労働能力の著しく低下したとき」に該当するとして、Bさんを解雇しました。

Bさんはこの解雇の無効を主張、それにくわえてC氏の退職強要により精神的苦痛を受けたとして慰謝料請求を行いました。

本件について、「労働能力の著しく低下したとき」に該当するような労働能力の低下は認められず、就業規則に規定される解雇事由「準じる程度のやむを得ない理由があるとき」にも該当しないと判断されました。また、C氏のBさんへの対応について、面談の頻度、その時間の長さ、言動などは社会通念上許容しうる範囲を超えており、退職勧奨の違法性を認めた裁判例となっています。

こちらは、直接的なパワーハラスメントの裁判例ではありませんが、退職勧奨の過程でパワハラ行為に該当する行為が発生する可能性があるため、注意が必要です。

【参考】法務省 人権啓発活動ネットワーク協議会

2020年6月から労働施策総合推進法改正

2020年6月から労働施策総合推進法改正が施行されます。
大きな改正のポイントは2つあり、職場におけるパワーハラスメント防止のため、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。

パワーハラスメント対策の法制化

パワーハラスメントが起きないよう、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものであると定義されています。

  1. 優越的な関係を背景とした
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
  3. 就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

    適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません

令和2年6月1日に施行され、パワーハラスメント防止措置等の実施義務については、中小企業は、公布(令和元年6月5日)後、3年以内の政令で定める日(令和4年3月31日)までの間は、努力義務となることが決まりました。

【参考】パワーハラスメント対策等 厚生労働省 東京労働局

セクシュアルハラスメント等防止対策の実効性の向上

セクシュアルハラスメント等の防止対策実効性の向上のために、「男女雇用機会均等法」、「育児・介護休業法」、「労働施策総合推進法」の改正も行われます。

  1. セクシャルハラスメントなどの防止に関する国・事業主・労働者の責務が明確化され(事業主・労働者の責務として、他の労働者への言動に注意を払うよう務めるものとされ)ます。
  2. 事業主に対して、セクシャルハラスメントなどの相談を行った労働者に対して事業主が不利益な取り扱いを行うことが禁止されます。
  3. 自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行い、他社が実施する雇用管理上の措置への協力を求められた時に応じるよう努めることとされています。
  4. 調停の出頭・意見聴取の対象者が拡大されます。

従来よりもパワーハラスメント・セクシャルハラスメントなどのハラスメントに対して厳しく、また明確化された法律に改正されることとなります。

【参考】都道府県労働局 パワーハラスメント対策が事業主の義務となります!~セクシュアルハラスメント等の防止対策も強化されます~

パワーハラスメントにならないための企業対策

パワーハラスメントに明確な定義や基準がない以上、普段から部下との接し方には注意が必要です。そのため、日頃から以下のポイントに注意しましょう。

業務の適正範囲を定義

パワーハラスメントには明確な定義がないため、「業務の適正な範囲」を拡大解釈する管理職も少なくありません。具体的な事案の提示や管理職自らが自分の言動を確認できるチェック表を作成し、対象となる管理職に周知していくことが大切です。

研修を通した意識改革

世代間の価値観が異なる現代では、働き方や仕事・業務に対する考え方、意識も社員毎に異なってきます。
世代間のギャップを解消するためには、研修を通して、管理職が自身の言動や意識が職場に合っているかを振り返る機会の設置が効果的です。

自省を促す適切な対応

懲戒を通じて、部下の自省を促すことは効果的な教育・指導です。
しかし、一方的な感情表現や恣意的な言動、対象者の人格や尊厳を傷つける行為・懲戒は明確なパワーハラスメント行為にあたり得ます。

また、上司・部下の関係性によってもメッセージの受け取り方が異なります。
そのため、受け手によって、異なる感情(忠誠心や復讐心)や印象を持たれないように、普段から信頼関係をしっかりと築くことが重要です。

まとめ

  • パワーハラスメント(パワハラ)とは、職場内の優位性を背景に業務の適正範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為全般を指す。
  • パワーハラスメントは身体的・精神的な攻撃だけでなく、人間関係や個人・人権を毀損する行為もパワーハラスメントと認定される。
  • パワーハラスメントの明確な定義や基準はなく、「業務の適正な範囲」も線引きが難しいため、企業が率先して、研修を通じた管理職の意識改革を行うべきである。
堀総合法律事務所 弁護士|堀 智弘(ホームページ:https://horisogo.com/

経営戦略として人事戦略を打ち出すために!

労務SEARCHを運営するオフィスステーションより、無料e-book「これからの人事~HRテックにみる変革と今後~」お届けします。ITの発達により定型業務が効率化される一方、多様な価値観・働き方が浸透している今、人事担当者に求められる経営戦略としての人事戦略を打ち出すポイントをご紹介します。

e-Govをもっと便利に使うなら。無料で使えるe-Gov電子申請連携ツール「オフィスステーション 労務ライト」。