労務SEARCH > 人事労務管理 > 職場づくり(環境改善) > 努力義務とは?罰則がないから意味ない?事例や対応について解説
努力義務とは?罰則がないから意味がない?事例をもとに徹底解説!

努力義務とは?罰則がないから意味ない?事例や対応について解説

監修者:五味田 匡功 ソビア社会保険労務士事務所
詳しいプロフィールはこちら

この記事でわかること

  • 努力義務規定に違反した場合の罰則の有無
  • 努力義務と義務規定や配慮義務との違い
  • 努力義務規定における企業に求められる対応とは

2023年4月1日より道路交通法の一部が改正され、自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務化されました。これにより全ての自転車の運転者が、乗車用ヘルメットを着用するよう努めなければいけません。

しかしこの”努力義務”とは、どれほどの強制力があるのでしょうか。ヘルメットをかぶらないと、自転車運転者には罰則が科されるのでしょうか。

この記事では、努力義務の意味と義務・配慮義務との違い、努力義務が課さられている具体例などを解説します。

努力義務とは?意味を解説

努力義務とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」と規定された内容を指します。

企業には積極的に努力することが義務づけられますが、法的拘束力や罰則がなく、どの程度対応するかは企業ごとの裁量に委ねられています。

努力していることを評価する絶対的基準がないため「これをしなければならない」というルールはありません。

努力義務の種類

しかし努力義務には「訓示的な規定」「具体的な努力を求められる規定」の2種類があります。

前者は基本理念や目的を示し、その方向に沿った努力を促す場合です。後者は法規制の立法化の合意が得られなかった、もしくは立法化が時期尚早であることから努力義務規定にとどめられた場合です。
規制への意識が高まり、法規制の必要性が出た場合、義務化されることがあります。

訓示的な規定の代表例は、労働基準法第1条第2項における「労働条件の原則」に関する努力義務です。


 

「労働条件の原則」に関する努力義務

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない


 

一方、具体的な努力を求められる規定の代表例は、1985年に制定された男女雇用機会均等法です。

1980年以前は従業員の募集や採用・配置・昇進において、女性を男性と均等に取り扱う「努力義務」が定められていました。しかし、1997年の改正に伴い男女雇用機会均等法に定められていた「努力義務規定」はすべて「義務規定」へ変更されました。

努力義務に違反すると罰則はある?

法的拘束力のない努力義務規定は、たとえ違反した場合でも罰則を科されることはありません。ただし、努力義務違反にまったくリスクがないわけではありません。

違反によるリスクに注意

対応を怠る、または努力義務とは正反対の行為を行った場合、努力義務違反によって被害を受けた第三者から損害賠償を請求されたり、監督官庁から行政指導を受ける可能性があるので注意が必要です。

努力義務と義務規定や配慮義務との違い

配慮義務と努力義務は文脈に依存することがあり、配慮義務より努力義務の方が強制力が強いこともありますが、一般的には「義務規定>配慮義務規定>努力義務規定」の順で法的拘束力が強いです。

以下にそれぞれの違いをまとめました。

義務 配慮義務 努力義務
法律条文 「~しなければならない」
「~してはならない」
「~配慮をするものとする」
「~配慮するものとする」
「~するよう努めなければならない」
「~努めるものとする」
内容 規定に対して
しなければならない、
またはしてはならないこと
必要な措置を講ずるよう
配慮しなければならないこと
必要な措置を講ずるよう
努めなければならないこと
法的拘束力 あり なし なし
違反した場合 刑事罰や行政罰などの
罰則あり
原則として罰則などの制裁なし
ただし配慮がない場合、
義務違反として罰則の可能性がある
罰則などの制裁なし
ただし努力を怠ったり、
努力義務とは正反対のことを行った場合、
義務違反として監督官庁から行政指導を受けたり、
被害を受けた第三者から損害賠償請求を
受ける可能性がある
実施の可否報告 書類の提出や報告の
必要がある
何らかの配慮を行った
結果を出す必要がある
実施した結果まで要求されない

努力義務規定の多くは義務規定とするには厳しすぎるが、法律の趣旨からすると守っておきたい内容が定められています。

現在は努力義務や配慮義務とされている制度でも、時間の経過やルールの浸透などによって、今後義務規定に改正されるケースも少なくありません。

企業のリスクマネジメントの観点から、何を・どの程度まで行っておく必要があるのか明らかにしておきましょう。

努力義務規定の具体例

最近話題になった努力義務規定として、自転車に乗るときのヘルメット着用・新型コロナワクチン接種・70歳までの就業機会確保の3つが挙げられます。これらの規定は、法律ではどのように定められているのでしょうか。

自転車に乗る際のヘルメット着用

2023年4月1日より、自転車を運転する際は乗車用ヘルメットを着用することが努力義務化されました。道路交通法では、以下のように定められています。


道路交通法

自転車を運転するすべての人がヘルメットをかぶることに努めなければならないのはもちろんのこと、同乗する方にもヘルメットをかぶらせるように努めなければなりません。
また、保護者等の方は、児童や幼児が自転車を運転する際は、ヘルメットをかぶらせるよう努めなければなりません。


 

もしヘルメットをかぶらなくても、罰則・罰金はありません。しかし自転車事故による致死率の低下のために、警察はヘルメット着用の啓発を強化しています。

新型コロナワクチン接種

新型コロナワクチン接種に関しても、予防接種法では「ワクチン接種を受けるよう努めなければいけない」と努力義務規定されています。

つまりワクチン接種は強制ではなく、最終的には自身で接種を受けるか受けないかの判断をすることが可能です。ただし、2023年5月8日以降の追加接種においては、重症化リスクが高い方以外の方は、努力義務規定を適用しないことになりました。

70歳までの就業機会確保

2021年4月1日に改正された高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務となりました。

「定年を65歳以上70歳未満に定めている企業」「65歳までの継続雇用制度を導入している企業」が対象です。

対象企業は、70歳まで定年を引き上げたり定年制度を廃止したり、対策を講じる必要があります。

努力義務規定に対する企業の対応

どの程度努力をするのか、企業の裁量に委ねられている努力義務ですが、実際にどのようなシーンで用いられているのでしょうか。

2019年4月から企業に対して努力義務が定められている「勤務間インターバル制度」の導入を例にみていきましょう。

勤務間インターバル制度の導入が努力義務化

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後に一定時間以上の休憩時間(インターバル)を設けることで、長時間労働を防止し、従業員の生活時間や睡眠時間を確保する制度のことです。

2018年6月29日に成立した働き方改革関連法案に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを確保することが企業の努力義務となりました。

勤務間インターバル制度

なお、勤務間インターバル制度の導入や周知に関しては、具体的な数値目標が定められています。


勤務間インターバル制度の導入に関する数値目標

・2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。
・2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。


始業時間の繰り下げや残業の制限をおこなう

勤務間インターバル制度は、働いた時間ではなく”働いていない時間”に着目した新しい労働制度です。

上図のように、終業時刻に応じて始業時刻を繰り下げる働き方のほか、ある時間以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めない働き方など、インターバルを確保する方法はさまざまです。

企業は従業員が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワークライフバランスを保ちながら働き続けるよう努めなければなりません。

働き方・休み方改善コンサルタントを活用する

このほか、東京労働局では企業の労働時間の改善に向けた取り組みを支援するため、経験豊富な社会保険労務士のなかから任命された「働き方・休み方改善コンサルタント」によるアドバイスを行っています。

長時間労働を削減し勤務間インターバル制度の導入を前向きに検討している企業は、ぜひ活用してみましょう。

まとめ

努力義務は法的拘束力や罰則がなく、どの程度対応するかは企業ごとの裁量に委ねられています。

原則的に違反しても罰則はありませんが、対応を怠った場合や努力義務とは正反対の行為を行った場合、監督官庁から行政指導を受ける可能性などがあるため注意をしましょう。

最近では、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを確保する勤務間インターバル制度が企業の努力義務となっています。企業は健康およびワークライフバランスを確保するために、終業から始業までの時間の設定や、そのほかの必要な措置を講ずるように努めるようにしましょう。

ソビア社会保険労務士事務所 監修者五味田 匡功

ソビア社会保険労務士事務所の創業者兼顧問。税理士事務所勤務時代に社労士事務所を立ち上げ、人事労務設計の改善サポートに取り組む。開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超達成。近年では企業の人を軸とした経営改善や働き方改革に取り組んでいる。
詳しいプロフィールはこちら

本コンテンツは労務SEARCHが独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツ制作ポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合は報告フォームよりご連絡ください。

この記事をシェアする

労務SEARCH > 人事労務管理 > 職場づくり(環境改善) > 努力義務とは?罰則がないから意味ない?事例や対応について解説