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「努力義務」の意味とは?対応や罰則、義務や配慮義務との違いを解説

2019年4月1日に施行された働き方改革関連法に基づき、「勤務間インターバル制度」の導入が努力義務となりました。
勤務間インターバル制度は、勤務終了後一定時間以上の休息時間を設けることで、従業員の生活時間や睡眠時間を確保するとともに長時間労働を防止するものであり、企業にとっても重要な制度であるといえるでしょう。

では、規定に対する努力を怠った場合、義務と同じように罰則が科されるのでしょうか。
ここでは義務と努力義務、配慮義務の違いと、企業が取るべき対応を解説します。

努力義務規定とは

努力義務規定とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」と規定された内容を指します。
企業には積極的に努力することが義務づけられますが、法的拘束力や罰則がなく、どの程度対応するかは企業ごとの裁量に委ねられています。

努力していることを評価する絶対的基準がないため、「これをしなければならない」というルールはありませんが、努力義務には「訓示的な規定」と「具体的な努力を求められる規定」の2種類があります。
前者は基本理念や目的を示し、その方向に沿った努力を促す場合です。
後者は法規制の立法化の合意が得られなかった、もしくは立法化が時期尚早であることから努力義務規定にとどめられた場合です。規制への意識が高まり、法規制の必要性が出た場合、義務化されることがあります。

訓示的な規定の代表例は、労働基準法第1条第2項における「労働条件の向上」に関する努力義務です。

  1. 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
  2. この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるため、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

一方、具体的な努力を求められる規定の代表例は、1985年に制定された男女雇用機会均等法です。
1980年以前は従業員の募集や採用、配置、昇進において、女性を男性と均等に取り扱う「努力義務」が定められていました。
しかし、1997年の改正に伴い男女雇用機会均等法に定められていた「努力義務規定」はすべて「義務規定」へ変更されました。

努力義務規定に違反した場合

法的拘束力のない努力義務規定は、たとえ違反した場合でも罰則を科されることはありません。
ただし、努力義務違反にまったくリスクがないわけではありません。
対応を怠る、または努力義務とは正反対の行為を行った場合、努力義務違反によって被害を受けた第三者から損害賠償を請求されたり、監督官庁から行政指導を受ける可能性があるので注意が必要です。

義務規定や配慮義務との違い

配慮義務と努力義務は文脈に依存することがあり、配慮義務より努力義務の方が強制力が強いこともありますが、一般的には「義務規定>配慮義務規定>努力義務規定」の順で法的拘束力が強いです。
以下にそれぞれの違いをまとめました。

義務の種類 義務 配慮義務 努力義務
法律条文 「~しなければならない」
「~してはならない」
「~配慮をするものとする」
「~配慮するものとする」
「~するよう努めなければならない」
「~努めるものとする」
内容 規定に対して、しなければならない、またはしてはならないこと 必要な措置を講ずるよう配慮しなければならないこと 必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと
法的拘束力 あり なし なし
違反した場合 刑事罰や行政罰などの
罰則あり
原則として、罰則などの制裁なし
ただし、配慮がない場合、
義務違反として罰則の可能性がある
罰則などの制裁なし
ただし、努力を怠ったり、努力義務とは正反対のことを行った場合、義務違反として監督官庁から行政指導を受けたり、被害を受けた第三者から損害賠償請求を受ける可能性がある
実施の可否報告 書類の提出や報告の
必要がある
何らかの配慮を行った結果を出す必要がある 実施した結果まで要求されない

努力義務規定の多くは義務規定とするには厳しすぎるが、法律の趣旨からすると守っておきたい内容が定められています。
現在は努力義務や配慮義務とされている制度でも、時間の経過やルールの浸透などによって、今後義務規定に改正されるケースも少なくありません。
企業のリスクマネジメントの観点から、「何を」「どの程度まで」行っておく必要があるのか明らかにしておきましょう。

努力義務規定における企業の対応

どの程度努力をするのか、企業の裁量に委ねられている努力義務ですが、実際にどのようなシーンで用いられているのでしょうか。
2019年4月から企業に対して「努力義務」が定められている「勤務間インターバル」の導入を例にみていきましょう。

勤務間インターバルとは

冒頭でも述べましたが、勤務間インターバル制度とは、勤務終了後に一定時間以上の休憩時間(インターバル)を設けることで、長時間労働を防止し、従業員の生活時間や睡眠時間を確保する制度のことです。
2018年6月29日に成立した働き方改革関連法案に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを確保することが企業の努力義務となりました。

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度は、「働いた時間」ではなく「働いていない時間」に着目した新しい労働制度です。
上図のように、終業時刻に応じて始業時刻を繰り下げる働き方のほか、ある時間以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めない働き方など、インターバルを確保する方法はさまざまです。
企業は従業員が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワークライフバランスを保ちながら働き続けるよう努めなければなりません。

【参考】勤務間インターバル – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/

働き方改革法が施行

2019年4月1日に施行された働き方改革関連法案に伴い、勤務間インターバル制度が導入されました。
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第2条第1項において、企業は健康および福祉を確保するために、終業から始業までの時間の設定や、そのほかの必要な措置を講ずるように努めなければならないと定められています。

また、勤務間インターバル制度の導入や周知に関しては具体的な数値目標が定められています。

  • 2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。
  • 2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。

【引用】過労死等の防止のための対策に関する大網
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000101654_00003.html

このほか、東京労働局では企業の労働時間の改善に向けた取り組みを支援するため、経験豊富な社会保険労務士のなかから任命された「働き方・休み方改善コンサルタント」によるアドバイスを行っています。
長時間労働を削減し、勤務間インターバル制度の導入を前向きに検討している企業は、ぜひ活用してみましょう。

【参考】「勤務間インターバル」制度とは – 厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/jirei_toukei/roudoujikan_kyujitsu_kyuka/chowa/1219_001_00001.html

勤務間インターバル制度の導入に関しては、[【2019年4月施行】勤務間インターバル制度が努力義務に!導入は進んでいますか?]を併せてご覧ください。

まとめ

  • 努力義務は法的拘束力や罰則がなく、どの程度対応するかは企業ごとの裁量に委ねられる。
  • 原則的に違反しても罰則はないが、対応を怠る、または努力義務とは正反対の行為を行った場合、努力義務違反によって被害を受けた第三者から損害賠償を請求される可能性や、監督官庁から行政指導を受ける可能性がある。
  • 一般的には、義務規定>配慮義務規定>努力義務規定の順で法的拘束力が強い。
  • 働き方改革関連法案に基づき労働時間等設定改善法が改正され、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを確保する勤務間インターバル制度が企業の努力義務となった。
  • 企業は健康およびワークライフバランスを確保するために、終業から始業までの時間の設定や、そのほかの必要な措置を講ずるように努めなければならない。
ソビア社会保険労務士事務所 代表社労士/ホワイト財団 代表理事|五味田 匡功

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