この記事でわかること・結論
- アカハラとは、教育機関におけるハラスメント行為のこと
- アカハラは、学生や研究員の人生を左右するようなものが多い
- 教育機関はアカハラの防止対策や発生時の対応策を理解しておく必要がある
この記事でわかること・結論
アカデミックハラスメント(アカハラ)とは、大学や研究機関における権力行使を用いたハラスメント行為のことを指します。
主に教授や立場のある研究者などがおこなうアカハラは、学生や部下のキャリアを妨害してしまうため問題視されています。教育機関や職員がアカハラについてよく理解しておくことで発生をおさえることができます。
そこで本記事では、アカハラの基本内容や具体例、防止対策や発生時の対応について解説していきます。
目次
アカハラとはアカデミックハラスメントの略であり、大学や研究機関など教育の場において権力行使のもとおこなうハラスメントのことを指します。
NPOの「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワークNAAH」という組織の公式Webサイトでは、アカハラについて以下のように定義しています。
当NPOでは、”研究教育に関わる優位な力関係のもとで行われる理不尽な行為”と定義しています。
主に大学職員や研究者など、立場のある者が他職員や学生に対して精神的または肉体的嫌がらせをすることがアカハラに該当します。
アカハラはアカデミックハラスメントという名のとおり、教育機関で発生するようなハラスメント行為を指します。権力をもつ職員による差別的発言などの精神的苦痛、または肉体的苦痛を受けることがアカハラです。
アカハラに該当する行為は幅広く、「教育や研究の妨げになる行為」や「悪影響を与える行為」がその対象となります。ハラスメントのなかでは件数が少ない方ですが問題視されており、加害者の懲戒処分も増えています。
日本教育心理学会が発足したハラスメント防止委員会の公開資料「アカデミック・ハラスメントの構造」では、2018年時点でアカハラやパワハラによる懲戒処分は24件(課題活動のハラスメントは対象外)であったと述べています。
パワーハラスメント(パワハラ)とは、職場における地位や優位的立場を利用して精神的または肉体的苦痛を与えるハラスメント行為のことです。
対してアカハラは、職場のなかでも大学や研究所など教育の場において発生するハラスメント行為のことです。そのためアカハラとパワハラは「ハラスメント行為が発生する場所」に違いがあります。ちなみに厚生労働省が公開している資料のなかでは、アカハラはパワハラの一種であるとされています。
アカデミックハラスメント(アカハラ)とは、大学等の学内で、教員や職員が教育上、研究上または職場での権力を利用して、学生・大学院生等の教育指導や研究活動に関係する妨害やいやがらせの働きかけをしたり、不利益を与える行為をいう(上下関係を利用した嫌がらせであるため、パワハラの一種である)
また、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)によって、2022年4月から中小企業でも職場におけるパワーハラスメント対策が義務となりました。
アカハラにはさまざまな種類があります。ここからは、それぞれの具体例と一緒に解説していきます。
教育の場において、そもそも学習や研究機会を与えないというアカハラが存在します。
「研究室や参考文献などを利用させない」「教材などを勝手に廃棄する」「必要物品など用意しない」「チームやグループへ参加させない」などが挙げられます。
上記のように、直接的または間接的に学習や研究機会を妨害することはアカハラのひとつです。
職権濫用にあたるような行為によって、進級や卒業などのキャリアを妨害することもアカハラになります。
「不当に単位を与えない」「卒業要件の難易度を不当に上げる、非現実的なものにする」「卒業や進級に必要な論文などを廃棄する」などが挙げられます。
上記のような例は、教授など立場のある者が決定権を持っているため、学生などが一方的に被害者となってしまうアカハラです。
進学先や就職先について、本人の意向を無視するような行為もアカハラに該当します。
「進学先への推薦状を破棄する」「私的な理由で就職先を決めさせ、従わない場合に退学や留年を言い渡す」などが挙げられます。
学生にとって、自身と進学先や就職先を繋いでいるのは担当している教授です。その教授の一存で決まってしまうことが、この手のアカハラを発生させています。
教育することを放棄したり、学生を差別的に扱ったりすることはアカハラに該当します。
「学生からの質問を無視する」「私的な理由で指導をおこなわない」「学生によって対応の差をつける」「研究室や授業の教室に行かない」などが挙げられます。
教育機関の職員は、教育や研究指導をおこなう義務があります。それらを放棄することは「職務専念義務違反」にあたるうえにアカハラにも該当します。
大学や研究機関での経済的負担を、学生や部下に強要するというアカハラもあります。
「必要物品を自費で購入するように強要する」「損害が出た場合の負担を学生に負わせる」などが挙げられます。
また、経済的負担の強要を拒否した場合に退学を言い渡すなど、ほかのアカハラへ発展することもあります。
学生や部下が成し遂げたことを剥奪するような行為もアカハラに該当します。
「学生の論文を盗作する」「第一著者として教授が勝手に自身の名前を書く」「貢献した学生や部下を故意に記載しない」などが挙げられます。
悪質なケースでは、学生の異議申し立てに対して暴言や脅迫をおこなうというアカハラもあります。
アカハラに対する防止対策には、以下のようなものが挙げられます。
大学や研究機関がアカハラについての理解度を高めることで、属している職員を正しく指導することができます。アカハラの原因や具体例などは最低限おさえておきましょう。
また、アカハラは無自覚のうちに加害者となってしまうケースもあります。職員が被害者にも加害者にもならないように、アカハラへの理解を深めながら対策していきましょう。
大学や研究機関がアカハラについて知ることはもちろんですが、職員にもアカハラについての理解を深めてもらうことで防止に繋がります。具体的には、
などがあります。また、周知だけではなく実際に現場調査することも大切です。アカハラが発生して時間が経ってしまっている可能性もあるため定期的に確認をしましょう。
アカハラについて相談できる場所があることも大切です。組織内の相談窓口では効果がないという場合は、外部機関と連携するのも良いでしょう。以下のような外部機関が、ハラスメント行為の相談窓口として挙げられます。
上記のような外部機関へ相談することで、具体的な対応策や法律情報などを教えていただけます。公平な立場からアドバイスがいただけるため相談しやすいという方も多いでしょう。
アカハラが実際に発生した場合は、適切に対応する必要があります。以下それぞれの立場における対応策を参考にしましょう。
アカハラの被害を受けてしまったら、まずは被害者である証拠を集めます。
アカハラの被害について、口頭だけでは法的措置などの際に証拠不十分とされてしまうため、アカハラを受けたという確たる証拠を用意することが必要です。
被害の詳細な内容や録音された加害者の音声など、証拠として有効なものが揃ったら外部機関などへ相談して適切な対応を伺いましょう。
アカハラは無意識に加害者となってしまうケースもあります。自身が加害者となってしまった場合は、属している組織へ素直に申し出ましょう。決して被害者との間だけで解決することのないようにします。
被害者も交えて事実確認をおこない、該当しない内容がある場合は否定をします。また、言い渡された処分が適切であるかどうかもよく確認することが大切です。
組織内でアカハラが発生した場合、まずは被害者および加害者からの話を伺います。事実確認をおこない、外部機関とも連携しながら公平に進めていきます。外部機関の専門的な意見をもとに加害者への対処を決定します。また、組織内へ再発防止の措置などを忘れずにおこないましょう。
アカハラは「アカデミックハラスメント」の略称であり、教育の場において発生するハラスメント行為のことをいいます。教授など立場のある者から、学生や部下へとおこなわれるのがアカハラです。
具体例としては、教育を放棄することや学生や部下の進級または卒業を妨害すること、研究成果を剥奪することなど教育にまつわるハラスメント行為が主に挙げられます。
防止対策や発覚時の適切な対応を知ることは、アカハラの発生を減らすことに繋がります。本記事を参考に、アカハラについてよく理解しておきましょう。
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