懲戒処分とは?種類や該当する事例、実際の手続きの流れを解説!

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就業規則に反した社員に懲戒処分を実施することで、社内秩序の維持と従業員のモラル向上に加え、大規模な損害を未然に防ぐことにもつながります。

今回は懲戒処分の概要や種類に加え、懲戒処分の内容と事由の相当性を見極める判断基準から懲戒処分実施までの手続を解説します。

この記事でわかること

  • 懲戒処分の目的や効果などの概要
  • 懲戒処分の種類別の詳細
  • 懲戒処分の実施に必要な事由例と手続について

懲戒処分とは

懲戒処分とは

懲戒処分とは、使用者(企業)が労働者(従業員)に対して行う、企業秩序違反行為への制裁(労働関係上の不利益措置)です。

一般的に遅刻・無断欠勤が続くといった職務懈怠行為や従業員の犯罪行為に対して、行なわれます。

懲戒処分は、懲戒処分に関する事項(懲戒事由と種類)を就業規則に明記し、従業員に就業規則を十分に周知した内容に違反があった場合に行われます。
懲戒に関する事項を就業規則の明記する根拠を労働契約とするかについては、学説上争いがあります。

懲戒処分のポイント

懲戒処分を行うには法律や実務上の取扱いに則って、実施しなければなりません。

懲戒処分のポイント

  • 二重処罰の禁止(一事不再理のルール)
  • 以下の2つの要件を満たし、懲戒権の濫用に当たらないこと(労働契約法15条)
    ➀懲戒事由該当性(客観的合理的な理由の存在)
    ②懲戒処分の相当性

懲戒処分は1回の問題行為に2回以上の処分はできません。
懲戒処分を受けた労働者に再度懲戒処分を下す場合、前回の懲戒処分と同一の問題行為を懲戒処分の対象にはできません。

また、懲戒処分に値する問題行為(事由)と処分の重さに相当性がなければなりません。
さらに、懲戒処分は就業規則に明示されている事由に当たる場合にのみ、処分が可能です。

懲戒処分の7種類

懲戒処分の7種類

懲戒処分の種類は戒告から懲戒解雇まで7つあります。

懲戒処分の種類
処分の程度 処分内容 詳細
戒告 口頭による厳重注意
★★ 譴責(けんせき) 始末書の提出による将来を戒める処分
★★★ 減給 賃金の一部を差し引く処分
★★★★ 出勤停止 一定期間の出勤を禁ずる処分
★★★★★ 降格 役職・職位・職能資格を引き下げる処分
★★★★★★ 諭旨解雇 退職願の提出を勧告する処分(情状酌量の余地がある場合)
★★★★★★★ 懲戒解雇 労働者を一方的に解雇する制裁処分

戒告とは

戒告とは、文書または口頭で厳重注意を行い、今後の業務遂行に支障がないように将来を戒める処分です。

譴責(けんせき)とは

譴責(けんせき)とは、始末書を提出させ、今後の業務遂行に同じ理由で業務遂行に支障を及ばせないように将来を戒める処分です。始末書とは、主に直属の上司に提出するものであり、反省文や謝罪文を盛り込むことで、誓約の効果が得られます。また、始末書の提出を拒否した場合、人事考課や昇給に影響を与えることがあります。

減給とは

減給とは、本来支給されるべき賃金の一部を差し引く処分(制裁)です。

労働基準法第91条で「1回の減給額は平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められているため、減給額は上限を守らなければなりません。

欠勤・遅刻への対応として賃金を差し引く手続は欠勤控除に当たるため、減給には該当しません

出勤停止とは

出勤停止とは、一定期間の出勤を禁止する処分です。出勤停止期間中は賃金が発生しません。停止期間は1週間以内や10~15日が一般的(菅野労働法705頁)です(停止期間は法律で定められていません)。

処分対象の行為と停止期間を釣り合うように検討する必要があります。

降格とは

降格とは、役職や職位、職能資格を引き下げる処分です。
懲戒処分としての降格の内容は就業規則に明記しなければなりません。

役職給・職務給の手当が下がった上での給与支払いとなるため、経済的打撃が長期に継続するため、出勤停止よりも厳しい懲戒処分となります。

論旨退職(論旨解雇)とは

諭旨退職(論旨解雇)とは、一定期間内に退職願の提出を勧告し、提出があった場合は退職扱い(自主退職)に、提出がなかった場合は懲戒解雇とする処分です。

「情状酌量の余地があると認められる場合」、「深い反省が見られる場合」になされる懲戒処分です。

自主退職の場合、解雇予告手当(30日分以上の賃金)や退職金支払いが行われます。

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、使用者が一方的に労働者を解約する最も重い懲戒処分です。解雇予告期間を設けない即時解雇にあたり、再就職に悪影響を与える傾向があります。

一方で、労働基準法第20条では、労働者を解雇する場合、「30日前に解雇の予告を行う」もしくは「30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う」と定められており、同条に基づいた適切な手続を行わなければなりません。

労働基準監督署が「解雇予告除外認定」を受けた場合、解雇予告手当の支払いが免除されます(労働基準法20条ただし書参照)

懲戒処分の判断基準となる事由例

懲戒処分の判断基準となる事由例

懲戒処分では、どの処分に当てはまるかどうか、就業規則に基づいて判断しなければなりません。

また、懲戒処分は就業規則に明示されている事由のみ実施できます。

懲戒処分に該当する規律違反例
懲戒処分規律違反例
戒告・譴責 無断欠勤や業務上のミス等
減給 戒告・譴責の処分後に改善が見られない、無断欠勤の繰り返し、遅刻・早退・私用外出が極端に多い等
出勤停止 暴力行為、過失による重要情報の紛失・破損など企業に損害が及んだ場合、転勤・重要な業務命令の拒否等
降格 意図的な情報漏洩・社内ルール違反、ハラスメント行為、不正受給、傷害など社外での犯罪事件を起こす等
論旨解雇・懲戒解雇 業務上横領・着服、14日以上の無断欠勤、重要な経歴詐称、強制わいせつなどの重大なセクハラ、悪意ある企業機密の漏洩によって会社へ損害を与えた場合等

懲戒処分の流れ

懲戒処分の流れ

懲戒処分を実施する際、労働トラブルにならないように、適切な手続が必要です。

懲戒処分の手続き・流れ

  1. 対象者の事実確認
  2. 処分理由を告知・弁明機会の付与
  3. 懲戒処分内容の検討・決定
  4. 懲戒処分通知書の送付・公表

対象者の事実確認

懲戒処分の対象者に問題行為・事案について、本人や関係者からヒアリングを行い、事実確認を行います。

客観的な裏付けを得るために、物的証拠を中心に収集していきます。また、懲戒処分が決定するまで自宅謹慎(自宅待機)を命ずる場合もあります。

処分理由の告知・弁明機会の付与

ヒアリングを行い、事実確認を行った後、対象者に懲戒処分の理由を告知します。

処分理由を告知せず、企業が一方的に懲戒処分を行うことはできません

その後、対象者に弁明の機会を与えます(懲戒処分の理由告知と同じタイミングでも可)。弁明の機会はその後の労働トラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。

懲戒処分内容の検討・決定

ヒアリング、弁明の機会で得た情報も参考にしながら、最終的な懲戒処分内容を検討します。
懲戒処分の内容と事実確認や弁明の機会によって認められた事実と相当性があるかを確認し、最終決定を行います。

懲戒処分内容は以下のポイントを押さえて、決定します。
就業規則内に懲戒委員会の決定が明示されている場合は、懲戒委員会に付議します。懲戒委員会の付議に関する事項、義務が明記されていない場合、そのような手続を経ずに懲戒処分を実施したとしても相当性の判断に影響はありません。

懲戒処分通知書の送付・公表

懲戒処分が決定後、懲戒処分通知書を作成・送付・通知し、懲戒処分を実施します。
法的義務はありませんが、手続としては妥当となります。

懲戒処分通知書には、一般的に懲戒処分の該当事由、根拠となる就業規則の該当条項、懲戒処分内容を明記します。

また、懲戒処分を実施した後に処分の内容や被懲戒者の氏名、対象となった行為等を公表する企業も存在します。
一方で、懲戒処分の運用方法として「非公表」している企業も存在します。

懲戒処分の公表は社内秩序の維持と従業員のモラル向上の効果がありますが、被懲戒者のプライバシー侵害、情報の社外流出や関係各所への悪影響などのリスクがあります。

懲戒処分の公表を行う際には、個人情報の取り扱いには十分注意し、記載内容を吟味した上で、社内イントラネットへ掲載するなどの対応が必要です

懲戒処分:まとめ

懲戒処分は社内秩序を守り、従業員のモラル向上につながり、企業の利益を守る有効な手段です。

一方で、就業規則に懲戒処分に関する事項の明記や、解雇予告手当の支給など労働基準法や労働契約法、実務上の取扱いに則った適切な対応が必要です。