この記事でわかること・結論
- 2026年は取引・労務・税制・IT・金融など複数分野で大規模な法改正が同時に施行され、企業実務に大きな影響が及ぶ
- 人事・経理・法務・コンプライアンスなど各部門で早期の見直し・体制整備が必要となる
- 改正内容を把握し、実務ロードマップを準備することで、法令違反リスクや業務混乱を防止できる

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ニュースこの記事でわかること・結論
2026年は法改正や2025年に決まった改正の施工などが行われます。特に、約40年ぶりとも言われる労働基準法の大改正をはじめ、ハラスメント対策の義務化、社会保険の適用拡大、下請法の抜本的見直しなど、実務への影響が大きい改正が目白押しです。
「改正が決まってから準備」では間に合わないものも多く、企業は今から具体的な対応計画を立てる必要があります。
本記事では、2026年に施行される主要な法改正を、人事労務・健康経営の視点から徹底的に解説し、各部門が取るべき具体的な対応ロードマップをご紹介します。
目次
約40年ぶりと言われる労働基準法の改正に向けた議論は、企業の勤怠管理、就業規則、給与計算に極めて大きな影響を与える可能性があります。この改正の動向を注視し、早期に準備を進めることが重要です。
人事労務部門が取るべき対応ステップ
特に連続勤務規制やインターバル制度の導入は、シフト勤務や長時間労働が常態化している企業にとって、業務フローや人員配置の根本的な見直しを迫るものとなります。
まずは企業の取引慣行、労働環境、リスク管理体制に直接的な影響を与える、特に重要な6つの法改正について解説します。実務への影響が大きいため、早期の対応計画策定が求められます。それぞれしっかり確認しておきましょう。
従来の「下請法」が抜本的に改正され、「中小受託取引適正化法(取適法)」となることが予定されています。この改正は、取引の適正化を一層推進し、特に中小企業やフリーランスといった受託者を保護することを目的としています。
従来の「下請法」が「中小受託取引適正化法(取適法)」に名称変更され、適用範囲が拡大。特に、手形等による支払いの禁止や、価格協議の義務化など、取引実務に大きな影響を与える規定が導入されます。
経理部門は、支払い方法を現金や振込に切り替える準備が必要です。また、法務部門は、取引基本契約書や個別契約書において、改正後の法規制に準拠した内容に見直す必要があります。
取適法への改正は、企業間の公正な取引を確保するための大きな一歩であり、特に発注側の企業は、取引慣行の抜本的な見直しが求められます。
労働安全衛生法も段階的に改正が施行されます。特に注目すべきは、個人事業者(フリーランス)の労働災害防止対策に関する規定の導入です。
企業がフリーランスに業務を委託する際、その業務遂行場所や内容によっては、注文者である企業側にも安全衛生に関する措置義務が課されることになります。これは、企業が関わるすべての労働者の安全と健康を確保するという、健康経営の理念にも通じる重要な改正です。
フリーランスとの取引が多い企業は、契約内容だけでなく、実際の業務遂行における安全衛生管理体制についても、見直しと整備が急務となります。
パワーハラスメント対策に続き、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置が、企業に義務づけられる見込みです。
カスハラ対策は、従業員の精神的な健康を守り、安心して働ける職場環境を整備する上で不可欠であり、企業のリスク管理としても重要性が高まっています。
企業のコンプライアンス体制を強化するため、公益通報制度の実効性を高めるための改正が予定されています。通報対象者の拡大により、より広範なステークホルダーへの対応が求められます。
内部通報制度は、不正の早期発見と是正に不可欠であり、今回の改正は、企業がより信頼性の高いコンプライアンス体制を構築する機会となります。
倒産状態に陥る前の事業者を支援するため、早期事業再生手続きが新設されます。これは、経営危機に瀕した企業を早期に立て直すための新たな選択肢となります。
この法改正は、企業の経営層や法務・経理部門にとって、事業継続のための新たな選択肢として、その内容を理解しておくことが重要です。
このセクションでは、人事・経理部門が直接的に関わる、社会保険、税制、雇用に関する5つの主要な法改正について解説します。特に、情報公表義務の強化や、社会保険料の徴収に関わる改正は、実務への影響が大きいため注意が必要です。
女性活躍推進法に基づく情報公表義務が強化されます。企業の透明性を高め、女性の活躍をさらに推進するための重要な改正です。
公表義務の対象となる企業は、正確なデータ収集と分析をおこない、公表に向けた準備を早期に進める必要があります。
高齢者の就労を支援するため、年金制度の一部が見直されます。特に、在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げは、高齢者の働き方に影響を与えます。
この改正は、定年後の再雇用制度や賃金設計に影響を与えるため、人事部門は制度の見直しを検討する必要があります。
障害者雇用促進法に基づき、法定雇用率が段階的に引き上げられます。企業には、障害者雇用のさらなる推進が求められます。
法定雇用率の引き上げに対応するため、企業は採用計画の見直しや、職場環境の整備、職域の拡大などを計画的に進める必要があります。
税制面でも大きな変更が議論されています。特に、暗号資産に関する税制見直しは、投資をおこなう従業員や企業に影響を与えます。
経理部門は、これらの税制改正の動向を注視し、従業員への情報提供や、企業の税務処理への影響を把握しておく必要があります。
少子化対策の一環として、子ども・子育て支援金制度が創設されます。これは、企業や個人が負担する社会保険料に上乗せされる形で徴収されるため、経理部門は徴収方法と金額を把握しておく必要があります。
この改正は、企業の社会保険料負担に影響を与えるため、経理部門は正確な計算と納付に向けた準備が必要です。
このセクションでは、企業の法務・コンプライアンス部門、特に金融取引やIT関連のリスク管理に関わる重要な法改正を解説します。広範な分野にわたる改正であり、多角的な視点での対応が求められます。
道路交通法が改正され、特に自転車の交通ルールが厳格化されます。企業としては、従業員の通勤手段や業務での移動手段に関する安全管理体制の見直しが必要です。
自転車運転者に対する交通反則通告制度(いわゆる「青切符」)が導入されます。これにより、自転車の交通違反に対する取り締まりが強化され、企業は従業員への交通安全教育を徹底する必要があります。
従業員が自転車で通勤・業務をおこなう場合、企業は安全運転管理規程の見直しや、定期的な交通安全研修の実施が求められます。
公益信託に関する法律の改正に伴い、信託業法も改正されます。これにより、公益信託の引受けに関する規制が整理されます。
企業の社会貢献活動や財団設立に関わる法務部門は、この改正が公益信託の活用に与える影響を把握しておく必要があります。
民法が改正され、離婚後の子の親権について、単独親権に加え、共同親権を選択できるようになります。これは、従業員のライフイベントや人事労務管理にも間接的な影響をおよぼす可能性があります。
人事部門は、従業員の家族構成や扶養控除に関する情報取り扱いについて、新たな親権制度を考慮した対応が求められる可能性があります。
民事訴訟手続のデジタル化が本格的に進められます。企業法務部門の訴訟対応における業務効率化に直結する改正です。
法務部門は、訴訟対応のフローや文書管理システムをデジタル化に対応させるための準備を進める必要があります。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)が改正され、特に濫用のおそれがある医薬品の販売規制が強化されます。これは、企業の健康経営や従業員の健康管理にも関わる改正です。
企業は、従業員の健康管理の一環として、医薬品の適正使用に関する啓発活動をおこなうなど、健康経営の視点からも対応が求められます。
保険業法が改正され、特に大規模な乗合代理店や、自動車修理業など他の事業を兼業する代理店に対する規制が強化されます。これは、企業の保険契約やリスク管理に影響を与える可能性があります。
企業の総務・経理部門は、取引のある保険代理店が改正後の規制に適切に対応しているかを確認し、保険契約に関するリスク管理を強化する必要があります。
資金決済法が改正され、特に暗号資産や電子決済手段(ステーブルコイン)に関する規制が整備されます。これは、企業の新たな決済手段の導入や、関連事業をおこなう際のコンプライアンスに直結します。
経理・法務部門は、新たな決済手段の導入や、関連する取引をおこなう際の法的リスクを評価し、コンプライアンス体制を構築する必要があります。
サイバー攻撃への対処能力を強化するための法整備が進められます。企業の情報セキュリティ体制やインシデント対応体制に大きな影響を与える改正です。
サイバー対処能力強化法の施行に伴い、内閣官房に新たなサイバーセキュリティに関する司令塔組織が設置される見込みです。企業は、この新たな組織が発信する情報やガイドラインに注意を払う必要があります。
企業は、この法改正を機に、情報セキュリティ体制の再点検と、サイバー攻撃発生時の対応計画(CSIRTなど)の強化が求められます。
2026年の法改正は多岐にわたり、一企業がすべてを網羅的に対応するのは容易ではありません。ここでは、各部門が優先的に取り組むべき事項をチェックリスト形式で整理し、効率的な対応を可能にするロードマップを提示します。
人事・労務部門は、従業員の働き方や安全衛生、ハラスメント対策といった、最も実務への影響が大きい分野を担当します。
特に、就業規則の改正は全従業員に関わるため、周知徹底と従業員代表の意見聴取を計画的に進める必要があります。
経理・法務部門は、取引や契約、税務・社会保険料の変更といった、企業の対外的なコンプライアンスに関わる分野を担当します。
法改正に伴う契約書や支払方法の変更は、取引先との調整が必要となるため、早期にプロジェクトチームを立ち上げ、段階的に進めることが重要です。
経営層は、法改正を単なるコストではなく、企業価値向上とリスク低減の機会と捉え、全社的なコンプライアンス経営を主導する必要があります。
法改正への対応は、法令遵守(コンプライアンス)の徹底だけでなく、従業員の健康と安全、公正な取引を通じた企業イメージ向上という「攻め」の経営戦略に繋がります。
経営層が率先してコンプライアンスを重視する姿勢を示すことで、従業員の意識も高まり、法改正への対応がスムーズに進みます。
2026年に施行される法改正は、企業の事業活動の根幹に関わるものが多く、単なる「ルール変更」ではなく、「経営環境の大きな変化」として捉える必要があります。
特に、労働基準法大改正や取適法への変更、カスハラ対策の義務化などは、企業の日常業務に直接的な影響をおよぼします。
本記事で解説した各法改正のポイントと部門別ロードマップを参考に、貴社における2026年法改正への万全な対応を進めてください。法令遵守を徹底し、より強固で持続可能な企業経営を目指しましょう。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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