この記事でわかること・結論
- 若手の退職代行利用が増える背景
- ハラスメントと退職代行の関係性
- 企業が見落とす職場環境の課題

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ニュースこの記事でわかること・結論
若手を中心に退職代行サービスの利用が増えています。その背景には、単なる働き方の変化だけでなく、職場で退職を切り出しにくい環境や、ハラスメントが表面化しにくい構造的な問題が存在します。
とくに若手世代は、立場の弱さや評価への不安から、問題を抱えても声を上げられず、限界を迎えて突然退職を選ぶケースも少なくありません。
本記事では、若手の退職代行利用が増えている理由を整理しながら、ハラスメントとの関係性や、企業側が見落としがちな職場課題について人事・労務の視点で解説します。
目次
近年、退職代行サービスの利用は若手世代を中心に広がりを見せています。
退職代行という言葉自体は以前から存在していましたが、とくに20代を中心とした若手層で利用が目立つようになっている点が特徴です。その背景には、若手世代の価値観や働き方に対する意識の変化に加え、退職を切り出しにくい職場環境の存在があります。
単に「仕事を辞めやすくなった」という話ではなく、若手が置かれている環境や心理的負担を理解することが重要です。
若手世代では「我慢して働き続ける」よりも「無理をしない選択」を重視する傾向が強まり、職場で直接退職を伝えることが難しい場合、退職代行が現実的な選択肢として認識されやすくなっています。
若手世代の働き方に対する考え方は、これまでの終身雇用を前提とした価値観から大きく変化しています。一つの会社に長く勤め続けることよりも、自身の心身の健康や将来のキャリアを優先する意識が強まっています。
また、SNSや口コミサイトの普及により、退職や転職に関する体験談を日常的に目にする機会が増えています。退職代行を利用した具体的な流れや、精神的な負担が軽減されたという声に触れることで、「退職代行は特別なものではない」という認識が若手の間で広がっている点も見逃せません。
実際に、弊社が実施した退職に関するアンケート調査でも、若手層を中心に「退職を言い出しにくかった」といった回答が多く見られました。退職そのものよりも、退職を切り出す過程にストレスを感じている実態がうかがえます。
こうした価値観の変化により、若手にとって退職代行は「逃げ」ではなく、自分を守るための選択肢の一つとして受け入れられつつあります。
若手が退職代行を利用する理由は、価値観の変化だけではありません。職場環境そのものが、退職の意思を直接伝えにくい構造になっているケースも多く見られます。
弊社のアンケート調査結果においても、「退職を伝えた後の対応が怖い」「強く引き止められそうで言い出せなかった」といった声が確認されています。退職の意思表示が、若手にとって大きな心理的リスクになっていることが分かります。
退職を伝えた社員に対して感情的な引き止めや圧力をかける対応が常態化していると、若手ほど直接のやり取りを避けるようになります。その結果、社内での円満退職が難しくなり、退職代行の利用につながりやすくなります。
このように、若手が退職代行を選ぶ背景には、本人の価値観だけでなく、職場環境やコミュニケーションの在り方が大きく影響しています。退職代行の増加は、若手の意識変化と同時に、企業側の職場環境を見直す必要性を示すサインともいえるでしょう。
若手の退職理由として、近年とくに注目されているのがハラスメントです。表立って問題化されるケースは多くありませんが、実際には日常業務の中で積み重なる言動や関係性が、若手の離職判断に大きく影響していることがあります。
明確な被害申告や相談がないまま、限界を迎えて退職に至るケースも少なくありません。
若手が直面しやすいハラスメントの特徴として、業務指導や教育の名目でおこなわれる強い叱責や人格否定、過度な要求などが挙げられます。これらは一見すると正当な指導のように見える場合もあり、本人も問題として認識しづらい傾向があります。
こうした行為は、被害を受ける側にとっては大きなストレスとなりますが、周囲からは見えにくく、結果として長期間放置されやすい点が特徴です。
ハラスメントが若手の退職理由として表面化しにくい背景には、声を上げにくい職場構造があります。評価や人間関係への影響を恐れ、問題を訴えること自体がリスクだと感じてしまうのです。
上司が評価権を持っている、相談先が実質的に機能していない、相談内容が社内で共有される不安があるなど、若手が安心して問題提起できない要因が重なっています。
こうした構造の中では、ハラスメントを受けても「何もしない」「誰にも相談しない」という選択をする若手が少なくありません。実際に、弊社実施のハラスメントに関するアンケート調査でも、ハラスメントを受けた後に特段の対応を取らなかった人が一定数存在することが示されています。
このように、ハラスメントが若手の退職理由として目立つ背景には、被害そのものだけでなく、問題を表に出しにくい職場環境があることが大きく影響しているといえるでしょう。
ハラスメントが存在する職場では、退職代行が選ばれやすい傾向があります。これは退職代行そのものが原因というよりも、ハラスメントによって「通常の退職プロセス」が機能しにくくなっていることが背景にあります。
退職を切り出す行為そのものが強い心理的負担となり、第三者を介した退職手段が選ばれやすくなります。
本来、退職は上司や人事に意思を伝え、引き継ぎを進めることで成立します。しかし、ハラスメントがある職場では、この前提が崩れてしまうケースがあります。
このような環境では、退職の意思を伝えることが「話し合い」ではなく、「対立」や「リスク」として認識されやすくなります。その結果、通常の退職ルートが事実上使えなくなってしまうのです。
ハラスメントを受けている若手にとって重要なのは、円満退職かどうかよりも、「確実に職場から離れられるか」という点です。精神的な余裕がない状態では、会社と直接やり取りを続けること自体が大きな負担になります。
退職代行は、会社との直接的な接触を避けながら退職手続きを進められる点が特徴です。ハラスメント環境下では、この「関わらずに済む」という点が大きな意味を持ちます。
とくに若手の場合、評価や人間関係への影響を強く意識しやすく、「自分で交渉すること」に高い心理的ハードルを感じがちです。その結果、退職代行が最も現実的で安全な選択肢として認識されるようになります。
このように、ハラスメントがある職場ほど退職代行が選ばれやすくなるのは、サービスの存在そのものではなく、通常の退職プロセスが機能しない職場環境に原因があるといえるでしょう。
若手による退職代行の利用は、個人の問題として捉えられがちですが、実際には職場環境や組織体制に起因するケースも少なくありません。退職代行の利用が表面化したときには、すでに社内でのコミュニケーションや信頼関係が大きく損なわれている可能性があります。
若手が退職代行を選ぶ背景には、職場で声を上げられない構造や、問題を内部で解決できない環境が存在していることが多い点に注意が必要です。
退職代行が利用される職場では、すでに通常のコミュニケーションが機能していないケースが見られます。とくに、若手が退職の意思を直接伝えることに強い不安や恐怖を感じている場合、組織として重大なサインを見逃している可能性があります。
退職代行の利用に至るまでには、ハラスメント、過度な引き止め、相談しても改善されない経験など、複数の要因が積み重なっています。表面化した時点では、すでに内部での修復が難しくなっていることもあります。
退職代行の利用を「最近の若者の問題」と片付けてしまうと、職場環境の改善機会を逃してしまいます。企業側には、退職代行を利用された事実そのものを、組織改善のきっかけとして受け止める姿勢が求められます。
若手がある日突然退職代行を利用して辞める組織には、いくつかの共通点があります。これらは個別の問題というより、組織全体の構造や風土に根差した課題といえます。
こうした環境では、若手は問題を抱えても社内で解決しようとせず、「辞めるしかない」という結論に至りやすくなります。結果として、企業側が気づいたときには、退職代行を通じた突然の離職という形で表面化してしまうのです。
若手による退職代行の利用が増えている背景には、働き方や価値観の変化だけでなく、退職を切り出しにくい職場環境や、ハラスメントが表面化しにくい組織構造があります。
退職代行は、単なる便利なサービスではなく、若手が追い込まれた末に選ぶ「現実的な選択肢」であるケースも少なくありません。その事実は、企業側にとって職場環境やコミュニケーションの在り方を見直す重要な示唆を含んでいます。
若手の退職代行利用を一時的な現象として捉えるのではなく、職場の危険信号として受け止め、ハラスメント対策や相談体制の実効性を高めていくことが、今後の人材定着において不可欠といえるでしょう。
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