この記事でわかること・結論
- 改正女性活躍推進法における男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表義務の内容
- 男女間賃金差異の算出方法と公表手続き(対象期間・対象労働者・賃金の範囲など)の基本
- 一般事業主行動計画の見直しと、女性管理職比率向上・賃金差異是正に向けた実務対応のポイント

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ニュースこの記事でわかること・結論
2026年4月1日(令和8年4月1日)に施行される改正「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」により、「男女の賃金の差異(男女間賃金差異)」や「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)」の情報公表義務が大きく拡大します。
これまで常時雇用する労働者の数が300人を超える企業だけに義務づけられていた男女間賃金差異の公表が、100人を超える企業にも広がることが大きなポイントです。
男女間賃金差異の公表は単なる「法令対応」にとどまらず、人的資本経営やダイバーシティ&インクルージョンの取り組み状況を示す指標として、投資家・取引先・求職者からも注目されています。
本記事では、改正女性活躍推進法の概要と、男女間賃金差異の公表義務拡大をふまえた企業の実務対応について解説します。
目次
女性活躍推進法は、女性の職業生活における活躍を推進するため、一般事業主に対して「自社の女性活躍状況の把握」「一般事業主行動計画の策定・届出」「情報公表」などを求める法律です。
2026年4月1日施行の改正では、情報公表の必須項目の強化に加え、女性活躍推進法の有効期限の延長(令和18年(2036年)3月31日まで10年間延長)や、女性の健康上の特性への配慮に関する規定の充実などが盛り込まれています。
女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、企業などにおける女性の活躍を進めるため、次のような取り組みを枠組みとして定めています。
常時雇用する労働者の数が100人を超える一般事業主は、女性活躍推進法に基づき一般事業主行動計画の策定と情報公表が義務づけられており、改正後もこの枠組みのなかで新たな公表項目(男女の賃金の差異、女性管理職比率)への対応が求められます。

改正女性活躍推進法では、「男女の賃金の差異(男女間賃金差異)」と「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)」の情報公表を、常時雇用する労働者の数が100人を超える一般事業主に義務づけることとされています。
従業員規模ごとの情報公表の必須項目は、次のように整理できます。
また、男女間賃金差異および女性管理職比率については、一般事業主だけでなく、特定事業主(国・地方公共団体など)についても同様に情報公表が義務づけられることとされています。
改正後は、常時雇用する労働者が100名を超える企業すべてが「男女の賃金の差異」と「女性管理職比率」を公表する必要があります。さらに、企業規模に応じて、女性活躍や仕事と家庭の両立に関する指標を組み合わせて、公表項目を合計3~4項目以上にすることが求められます。自社の従業員規模に応じた必須項目を整理し、漏れのない情報公表計画を立てることが重要です。
日本では、男女間賃金差異は長期的には縮小傾向にあるものの、国際的に見ると依然として差異が大きく、その是正が重要な課題とされています。
こうした状況をふまえ、厚生労働省は「男女間賃金差異の解消に向けて」や「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」といった資料を通じて、男女間賃金差異の把握・分析・公表を促進してきました。
2022年(令和4年)には、常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主に対して「男女の賃金の差異」の情報公表が義務づけられました。そのうえで、2026年(令和8年)4月1日施行の改正女性活躍推進法により、その対象が常時雇用する労働者が100人を超え300人以下の一般事業主にも拡大されることとなりました。
背景には、賃金や管理職比率などのデータを「見える化」することで、企業内の課題を明らかにし、具体的な改善の取り組み(ポジティブ・アクション)につなげていく狙いがあります。
男女間賃金差異の公表は、単に数値を示すだけでなく、その要因や課題を分析し、改善に向けた取り組みにつなげることが重視されています。公表時には、対象期間や対象労働者の範囲、「賃金」の範囲などの前提条件を付記し、必要に応じて課題や今後の取り組み方針もあわせて示すことで、ステークホルダーに対して自社の姿勢を明確に示すことができます。
2026年4月1日以降、常時雇用する労働者が100人を超える企業では、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務となります。改正法は、施行後最初に終了する事業年度の実績について、次の事業年度開始後おおむね3カ月以内に初回の公表をおこなうことを求めています。
その後も、おおむね年1回以上、最新の数値に更新する必要があります。企業は、公表期限から逆算して、早期にデータ収集・分析体制を整えることが重要です。
男女間賃金差異の算出方法は、「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」(厚生労働省通知)で示されており、改正後に拡大されても基本的な考え方は変わらないとされています。実務上は、次のようなステップで準備を進めるとスムーズです。
| 1.対象期間の決定 | 改正法施行後に最初に終了する事業年度(例:事業年度が4月1日~翌年3月31日の場合は2026年度)を対象期間とし、その間の賃金データを集計します。 |
|---|---|
| 2.対象労働者の範囲の確認 | 「全労働者」「正規雇用労働者」「パートタイム・有期社員(非正規雇用労働者)」の3区分ごとに男女別のデータを集計します。出向者の取り扱いや、パートタイム・有期社員の労働時間換算など、通知に沿って対象範囲を整理しておきます。 |
| 3.賃金の範囲の設定 | 賃金に含める手当の範囲(基本給、諸手当、賞与など)を決め、通勤手当などを除くかどうかをあらかじめ定めておきます。 |
| 4.平均年間賃金の算出 | 各区分ごとに、男女別に1人当たりの平均年間賃金を算出します。 |
| 5.男女間賃金差異の算出 | 通知で示されている方法にしたがい、男性労働者の平均年間賃金に対する女性労働者の平均年間賃金の割合(パーセント)を算出し、「全労働者」「正規雇用労働者」「パートタイム・有期社員」の3区分について男女間賃金差異として公表します。 |
公表にあたっては、対象期間、対象労働者の範囲、賃金の範囲、パートタイム・有期社員の労働時間換算の有無など、計算の前提とした重要事項をあわせて明示することが求められています。これらの付記事項を整理しておくことで、社内説明や外部からの問い合わせにも対応しやすくなります。
なお、公表の場としては、厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト」内の「女性の活躍推進企業データベース」を活用することが推奨されています。自社Webサイトなどでの公表も可能ですが、有価証券報告書のみでの公表では女性活躍推進法上の義務を満たしたことにはならない点に注意が必要です。
たとえば、「正規雇用労働者」の1人当たり平均年間賃金が男性600万円、女性510万円の場合、女性の賃金は男性の85%となります。この場合の男女間賃金差異は、通知に沿った方法で算出すると、男性を100としたときに女性が85であることを示す指標です。
実務では、全労働者・正規雇用労働者・パートタイム・有期社員の3区分それぞれについて、男女間賃金差異を小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までパーセント表示で公表します(「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」(令和4年7月8日雇均発0708第2号)に基づく)。
男女間賃金差異や女性管理職比率の公表はゴールではなく、あくまでも出発点です。公表した数値から見える課題を分析し、「一般事業主行動計画」に具体的な改善策を落とし込んでいくことが重要です。実務上は、次のような流れで対応を進める企業が多いでしょう。
1.現状の数値と他社平均の比較
厚生労働省の「男女間賃金差異分析ツール」などを活用し、同業種・同規模企業の平均値と比較しながら、自社の位置づけを把握します。
2.要因分析(職種・等級・勤続年数・勤務形態など)
職種や等級、勤続年数、フルタイム/短時間勤務といった区分ごとに、男女の構成比や賃金水準を分析し、どこに差が生じているのかを整理します。
3.課題に応じた取り組みの整理
管理職候補層への育成機会の不足、長時間労働や転勤要件に起因する昇進機会の偏り、非正規雇用から正規雇用への転換機会の不足など、自社の課題を具体的に洗い出します。
4.一般事業主行動計画への反映
女性管理職比率の向上目標や、男女間賃金差異の縮小につながる施策(評価・処遇制度の見直し、柔軟な働き方制度の拡充など)を、期間と数値目標を定めて行動計画に組み込みます。
5.社内周知・モニタリング
行動計画の内容を社内に周知し、定期的に進捗と指標の変化を確認しながら、必要に応じて計画の見直しをおこないます。
女性管理職比率については、「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合」として、共通の計算方法に基づいて算出することとされています。
単に比率を引き上げるのではなく、選抜や配置のプロセスの透明性、公正な評価・昇進、人材育成の機会均等などといった観点から総合的に見直していくことが求められます。
2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が100人を超える企業には「男女の賃金の差異(男女間賃金差異)」と「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)」の公表が義務づけられます。
初回の公表は、改正法施行後に最初に終了する事業年度の実績について、次の事業年度開始後おおむね3カ月以内におこなう必要があり、その後もおおむね年1回以上の更新が求められます。
男女間賃金差異の公表は、数値そのものだけでなく、要因と課題を分析し、一般事業主行動計画に改善策を落とし込んでいくプロセスが重要です。
厚生労働省が提供するガイドラインや分析ツール、「女性の活躍推進企業データベース」を活用しながら、自社の状況を客観的に把握し、女性管理職比率の向上や働き方の見直しを通じて、男女ともに活躍できる職場づくりを進めていきましょう。

大学在学中に社労士試験に合格。業界歴約30年のベテランで、ビジネスケアラー対策の第一人者として企業の人材確保・定着支援を得意とする。
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