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アンケート2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、多くの企業でテレワークの導入が進められました。この流れはその後も続き、2024年のいま、テレワークは企業の働き方改革の一環として定着しつつあります。
そこで今回は、テレワークを導入している企業の現状を調査するために、テレワークで働く方300名を対象にアンケート調査を実施しました。テレワークの実施状況や従業員が感じるメリット・デメリット、そして出社勤務との比較もしていきます。
まずは、テレワークの実施状況に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは以下のとおりです。
まず、テレワークの実施頻度について教えてくださいと質問してみたところ、最も多かった回答は「月に数回」で31.3%、次いで「週に2日」が18.3%という結果となり、週に1~2回程度テレワークを実施している企業が約半数を占めています。また、第3位に「毎日」の回答がランクインし、週に3~4日テレワークを実施する企業よりも、毎日(週5日)実施する企業の方が多いことがわかります。
なお、この回答を回答者が勤める企業規模別に見ると、従業員数が201名~300名の企業に勤める方は「毎日」と回答した割合が最も多く、従業員数が30名以下の企業の場合、「月に数回」が最多回答であったものの、2位の「毎日」との差は1票のみでした。
このことから、テレワークの導入状況は企業規模にあまり左右されないようです。
次に、テレワークをおこなう曜日や時間帯は決まっていますかという質問に対しては「いいえ」が51.0%、「はい」が49.0%というほぼ半々の結果になりました。
柔軟な働き方を許容する企業では、テレワークを実施する曜日や時間帯を固定せず、従業員がある程度自由に働けるようにしていると考えられます。一方、業務の特性上、曜日や時間帯を固定しなければならない企業もあるでしょう。
テレワークを実施する場所については、「自宅」が94.0%と圧倒的に多く、次いで「カフェ」が3.0%、「コワーキングスペース」が1.3%と、多くの方が自宅で作業していることがわかりました。なかには、セキュリティの観点から自宅以外の場所でのテレワークを禁止している企業もあるでしょう。
なお、テレワークを実施する場所を決めるときに最も重視する点としては、第1位は「静かさ / 集中できる環境」で65.7%、第2位は「快適さ / 設備の充実」で26.0%、第3位は「アクセスの良さ」で4.0%という結果になりました。
一般的にテレワークは、自分の好きな場所で仕事ができるというメリットがある反面、集中できない環境や、設備が整っていないなどの問題点も発生する可能性があります。企業は、従業員が快適なテレワーク環境を構築できるよう、適切なサポートを提供していく必要があります。
次に、テレワークのメリット・デメリットに関する調査をしてみました。調査結果のポイントは以下のとおりです。
テレワークで働く300名に、テレワークの最大のメリットを聞いてみたところ、第1位は「通勤時間や移動時間の削減」で60.0%、第2位は「自由な時間で働ける」で12.7%、第3位は「仕事に集中しやすい」で8.7%という結果になりました。半数以上の方が、通勤時間や移動時間がなくなることに大きな魅力を感じているようです。
ちなみに、総務省統計局が実施した「令和3年社会生活基本調査」によると、通勤・通学にかける平均時間を都道府県別にみると、長い地域だと1時間40分、最も短い地域でも56分と約1時間かかっています。これらの時間が削減されることで、テレワークをする人は、睡眠時間が18分、趣味・娯楽に関する時間が16分、仕事時間が13分、それぞれ長くなっているそうです。
テレワークをしない人との比較
では実際に、テレワークは従業員のワークライフバランスにどのような影響を与えているのでしょうか?
これを調査するために、テレワークはあなたのワークライフバランスにどのように影響しましたか?という質問をしてみたところ「ワークライフバランスが良くなった」が72.3%と、テレワークで働くことによって、7割以上の方がワークライフバランスが改善されたと感じていることがわかりました。
次に、家族やプライベートの時間の変化について尋ねたところ、「増えた」と回答した人が73.0%と、こちらもプラスに改善した方が多いことがわかりました。
テレワークの実施で通勤や移動時間が削減されることによって、家族との時間や趣味の時間など、プライベートの時間を増やすことが可能です。また、柔軟な働き方ができるようになることで、仕事とプライベートのバランスも保ちやすくなると言えるでしょう。
これらのテレワークによるメリットに魅力を感じる方は多く、今回のアンケート調査では8割以上の方が今後もテレワークを「ぜひ継続したい」または「継続したい」と回答しています。
しかし、通勤や移動時間がなくなることの弊害もありそうです。なぜなら、テレワークのデメリットの第1位は「運動不足になる」でした。次いで、僅差で「オンオフの切り替えが難しい」が第2位、「仕事とプライベート時間の境界線が曖昧になる」が第3位、「コミュニケーション不足になる」が第4位という結果になりました。
多くの方は自宅でテレワークを実施しているため、運動不足や仕事とプライベート時間の境界線が曖昧になるなどの問題が発生しやすいようです。また、出社する機会が減ることで、上司や同僚とのコミュニケーション不足に陥る可能性もあります。
これらの課題を解決するためには、企業は従業員に対して、健康管理に関する情報提供などを実施することが重要です。またコミュニケーションツールを活用し、定期的なオンライン会議や交流イベントなどを開催することで、従業員同士の繋がりを維持することも効果的でしょう。
次に、テレワークと出社勤務を比較してみました。調査結果のポイントは以下のとおりです。
まずテレワークと出社勤務時における仕事の効率性について尋ねたところ、「テレワークの方が効率が良い」と回答した人が46.0%と最も多く、「どちらとも言えない」が29.7%、「出社勤務の方が効率が良い」が24.3%という結果になりました。
テレワークの方が効率が良いと感じる理由としては、第1位が「集中しやすいから」で45.7%、第2位は「作業が中断されることが減ったから」で26.1%、第3位は「空いた時間で他の業務ができるから」で22.5%という結果になりました。
一方、「出社勤務の方が効率が良い」と回答した方に対して、テレワークの方が効率が悪いと感じる理由を聞いてみたところ、「コミュニケーションが不足するから」が24.7%と最も多く、次いで「オンオフの切り替えが難しいから」が24.7%、「社内システムや資料へのアクセスが不便になるから」が19.2%、「紙の書類のやり取りができないから」および「上司や同僚などに気軽な相談ができないから」がそれぞれ12.3%という結果になりました。
これらの回答は、前述したデメリットに関する質問の回答と似ていることから、一部の方にとってはテレワークにおけるデメリットが、仕事のパフォーマンスや進めやすさに影響しているようです。
そこで次に、テレワーク中の上司や同僚とのコミュニケーションについて、どのように感じますか?という質問を全員にしてみました。その結果、第1位は「出社時と変わらなくコミュニケーションが取れている」で63.3%と、多くの人がコミュニケーションに問題を感じていないことがわかりました。
しかし、第2位は「ややコミュニケーション不足を感じる」で19.0%、第3位は「コミュニケーション不足を感じる」で13.7%と、3割以上の方がコミュニケーション不足を感じているようです。
コミュニケーション不足を感じている人の具体的な問題点としては、「会議や報告の機会が減ったことで、上司や同僚との距離が遠くなった」「気軽に相談しにくい雰囲気になった」「情報共有がスムーズにおこなわれない」などが挙げられました。
これらの課題を解決するためには、オンライン会議システムなどを活用し、定期的にチームでミーティングをおこなうことが有効でしょう。また、チャットツールなどを使って、気軽にコミュニケーションを取れる環境を作ることも重要です。
そこで次に、テレワーク中に最も利用頻度が高いコミュニケーションツールは何ですか?という質問をしてみたところ、最も人気が高かったのはSlackやTeamsなどの「チャットツール」で40.7%、次いで「メール」が25.0%、ZoomやGoogle Meetなどの「Web会議システム」が18.7%という結果になりました。
「チャットツール」は、手軽にメッセージを送信できるため、日常的なコミュニケーションや情報共有に多く利用されていると考えられます。「メール」は社外とのやり取りなど、比較的フォーマルな内容のやり取りに適しており、「Web会議システム」は、複数人でリアルタイムにコミュニケーションを取りたい場合に利用されることが多いでしょう。
これらのツールは、テレワーク環境においてコミュニケーションを円滑に進める上で欠かせない存在となっています。
次に、会社のテレワーク支援に関する調査をしてみました。調査結果のポイントは以下のとおりです。
まず、会社のテレワーク制度の全体的な満足度を尋ねたところ、「満足」「やや満足」「とても満足」と回答した人が合わせて77.7%と、全体的には満足している人が多いことがわかりました。
しかし、「やや不満」「とても不満」「不満」と回答した人も合わせて10%おり、制度の改善を求める声も少なくありません。具体的な不満点としては、「テレワーク手当の支給がない」「設備・環境の支援が不十分」「上司や同僚とのコミュニケーション不足」などが挙げられました。
会社のテレワーク制度における不満な点としても挙がった”テレワーク手当”については、支給が「ない」企業が79.0%と圧倒的に多く、「ある」企業は21.0%という結果でした。テレワーク導入が進んでいる一方で、手当の支給は必ずしも一般的ではないことがわかります。
なお、この回答を企業規模別に見てみると、「ある」と回答した方のうち最も多かったのは、従業員数が300名以上の企業に勤める方でした。
次に、テレワークをおこなう際の設備・環境について、会社から支援があったかどうか質問してみたところ、「パソコンやモニターの貸与」が39.0%、「Wi-Fiルーターの貸与」が12.3%と、会社から設備面での支援を受けている人が一定数いる一方で、「支援はない」と回答した人も56.7%いました。
テレワークは、基本的には従業員が自宅で仕事をするため、オフィスと同じような環境で働けることが重要です。しかし、自宅の環境は人それぞれ異なるため、会社が従業員一人ひとりの状況に合わせてサポートしなければならないケースもあるでしょう。
具体的な支援としては、パソコンやモニター、Wi-Fiルーターなどの貸与、オフィス家具の購入費用補助、テレワークに関する研修の実施などが挙げられます。
会社のテレワークに関する制度やルールについては、「やや明確」と回答した人が43.3%と最も多く、次に「どちらとも言えない」が24.7%、「明確」が17.7%、「やや不明確」が8.7%、「不明確」が5.6%という結果でした。
会社のテレワークに関する研修やサポートは十分でしたか?という質問には、「どちらとも言えない」が33.0%と最も多く、次いで「十分」が31.7%、「やや不十分」が14.7%という結果になりました。
これらの結果から、多くの企業ではテレワークに関する制度やルールの明確化、研修やサポートの実施を図る必要があることがわかります。
テレワークは従来のオフィス勤務とは働き方が異なるため、それに対応するために制度やルールが必要です。ルールやテレワーク中のコミュニケーションに関するガイドラインなどを明確化することで、従業員の不安を軽減し、安心してテレワークに取り組める環境を整備することができます。
また、労働時間管理やセキュリティ対策など、テレワーク特有の課題に対処するためにも必要不可欠でしょう。ルールの作り方など詳しくは、下記の記事で解説しています。
次に、あなたの職場において、今後よりテレワークの利用を拡大するためには、どのような改善が最も必要だと思いますか?という質問をしてみたところ、「書類の電子化(ペーパーレス化)」が20.4%と最も多く、次いで「社内の打ち合わせや意思決定の仕方の改善」が18.3%、「業務の進捗状況の確認や共有の仕方の改善」と「社内システムへのアクセス改善」が同率で15.0%という結果になりました。
これらの回答から、テレワークの利用拡大を阻害する要因として、紙ベースの書類作業や、社内コミュニケーションの非効率さ、システム面での課題などが挙げられることがわかります。
テレワークを導入している(または導入を検討している)企業は、これらの課題を克服し、従業員がよりスムーズにテレワークに取り組める環境を整備していきましょう。具体的には、社内システムのクラウド化や、オンライン会議システムの導入、チャットツールなどを活用した情報共有の促進などが有効な手段として考えられます。
テレワークは、従業員の働き方を変えるだけでなく、企業の働き方にも大きな変化をもたらします。今回のアンケート調査では、出社勤務よりもテレワークの方が仕事の効率性が上がると回答した方が多く、7割以上の方が「ワークライフバランスが良くなった」と回答していました。
このことから、企業は従業員が安心してテレワークに取り組める環境を整備することで、従業員の満足度向上や生産性向上など、さまざまなメリットが得られることがわかります。
テレワークは、もはや選択肢ではなく、企業が積極的に取り組むべき働き方の一つとなっています。今回のアンケート調査結果を踏まえ、企業は従業員の意見を積極的に聞き取り、テレワークに関する制度やサポートを改善していきましょう。
調査名 | テレワークに関するアンケート |
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調査対象 | 10代以上の男女300名 |
調査期間 | 2024年8月26日~2024年9月4日 |
調査方法 | インターネット調査 |
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