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アンケート近年、SNSやビジネスニュースを中心に「管理職罰ゲーム化」という言葉が飛び交っています。責任と業務量だけが増え、報酬や裁量が伴わない中間管理職の姿に、若手・中堅社員が背を向ける現象です。これに呼応するように、過度な貢献を避け最低限の業務のみをこなす「静かなる退職(Quiet Quitting)」という価値観も広がりを見せています。
今回、当メディアでは会社員300名を対象に、管理職に対する本音と労働意識に関するアンケート調査を実施しました。その結果、約6割が将来的な管理職就任を望んでおらず、半数以上が自社の管理職を「罰ゲーム化している」と感じている実態が明らかになりました。
本記事では、この衝撃的な数字の裏側にある要因を深掘りし、人事労務の視点から「選ばれる管理職像」を再定義するためのヒントを探ります。
目次
現代の日本企業において、中間管理職を取り巻く環境は激変しています。かつてはキャリアアップの象徴であったはずの「昇進」が、今やリスクや負担として捉えられている側面は否めません。最初の設問では、回答者の現在の属性と、将来への展望を調査しました。

今回の調査回答者の現在の役職について、「はい(管理職である)」と答えたのは39.7%でした。「いいえ(一般職・非管理職)」は48.0%と半数弱を占めていますが、注目すべきは「役職なしだが実質的にマネジメント業務あり」と回答した12.3%の存在です。
これらを合わせると、全体の52.0%が何らかの形で管理・調整業務に従事していることになります。人事労務の視点で見れば、役職手当や正式な権限が十分に与えられないまま、実質的な責任だけを負わされている「名ばかりマネジメント層」が一定数存在している懸念があります。これは、組織図上の役職定義と実務の実態が乖離しているサインであり、現場の疲弊を招く大きな要因の一つと言えるでしょう。

将来的に管理職になりたいかどうかを尋ねたところ、「あまりなりたくない」との回答が63.3%に達し、「なりたい」の36.7%を大きく上回る結果となりました。
この「管理職離れ」とも言える数字は、企業にとって次世代のリーダー育成が極めて困難なフェーズに入っていることを示唆しています。労働価値観が多様化する中で、組織への貢献よりも個人の生活やメンタルヘルスを優先する傾向が強まっており、管理職というポジションが持つ「魅力」よりも「負担」が勝ってしまっている現状が浮き彫りになりました。
昇進を望まない背景には、具体的な懸念事項が複数存在します。本セクションでは、管理職に対するネガティブなイメージの源泉と、現役・未来の管理職が感じているストレスの正体を探ります。

管理職になりたい(またはなりたくない)理由(複数回答)では、「責任・プレッシャーが増えるから」が52.3%で最多となりました。次いで「長時間労働になりそうだから」が33.3%、「部下育成や人間関係が面倒だから」が32.0%と続きます。
一方で、ポジティブな理由である「報酬・給与が上がるから」は31.3%に留まり、責任感による精神的負担や時間的拘束を相殺できるほどの経済的インセンティブを感じられていないことが分かります。人事労務としては、単なる給与改定だけでなく、管理職の「職務範囲」を再定義し、過度な責任集中を分散させる組織設計が急務であると考えられます。

自社の管理職が「罰ゲーム化」していると感じるかどうかについては、「ある程度感じる」45.7%と「非常に感じる」11.0%を合わせ、56.7%が肯定的な反応を示しました。一方で「全く感じない」は8.7%に留まっています。
「罰ゲーム」という言葉がこれほどまでに浸透している背景には、プレイングマネジャーとしての過剰な業務量、ハラスメント対策への過度な神経質、そして上意下達の板挟みといった、現代特有の閉塞感があります。一般社員は、自身の数年後の姿を上司に見る際、そこに希望ではなく「苦労」を見出しているのです。この認識を覆さない限り、どんなに採用や研修に力を入れても、組織の持続性は保てないでしょう。

管理職の仕事で最もストレスを感じる要素は、「上司・経営陣からのプレッシャー」が30.7%でトップでした。次いで「業績・数字責任」16.3%、「部下育成・評価」11.7%となっています。
興味深いのは、部下との関係性(育成・評価)よりも、上層部との関係性に強いストレスを感じている点です。組織の結節点である中間管理職が、上からの要求を咀嚼しきれずに現場へ下ろさざるを得ない「防波堤」としての限界を迎えている様子が伺えます。経営層は、中間管理職を単なる「伝達役」としてではなく、戦略を共創するパートナーとして尊重し、孤立させないサポート体制を構築する必要があります。
管理職への忌避感と並行して注目されているのが、業務に対する熱量を意図的に抑える「静かなる退職(Quiet Quitting)」というスタイルです。これは単なる怠慢ではなく、現代の労働者による一種の自己防衛策とも捉えられます。

「静かなる退職」についての認知度は、「名前は聞いたことがある」35.3%が最多でした。「よく知っている」は11.0%、「正直よくわからない」は29.7%、「全く知らない」は24.0%という結果になっています。
人事労務の視点では、この言葉の概念が着実に広がっている事実を重く受け止めるべきです。従来の「滅私奉公」的な働き方への強烈なカウンターとして、表面上は真面目に勤務していても、心の中では組織と心理的距離を置いている従業員が潜在的に増えている可能性を示唆しています。

自身が最低限の範囲での働き方を意識しているかという設問では、「状況に応じて最低限を意識している」45.0%と「いつも最低限で働いている」8.7%を合わせ、過半数が「やりすぎない働き方」を選択しています。一方で「特に意識していない」は38.0%、「常に高い成果を出すことを重視している」は8.3%に留まりました。
この結果は、多くの従業員が「給与に見合った以上の努力はしない」という合理的、あるいは諦めを伴った姿勢で業務に臨んでいることを示しています。特に管理職の多忙さやプレッシャーを目の当たりにしている一般社員にとって、頑張りすぎることは「罰ゲーム」への片道切符に見えているのかもしれません。エンゲージメント向上を叫ぶ前に、まずは「頑張ることが損ではない」と思える納得感のある評価・処遇制度の整備が求められます。
最後に、従業員が考える「理想の管理職」についての調査から、これからの組織が目指すべき方向性を考察します。これまでの「強力なリーダーシップ」や「背中で語る」スタイルとは異なるニーズが浮き彫りになりました。

理想の管理職像(複数回答)では、「効率的にチームを回して成果を上げる」53.7%と「ワークライフバランスを尊重する」51.3%が上位を占めました。次いで「評価・報酬を公平にする」38.3%、「部下の成長・キャリア支援を重視」37.0%と続きます。
かつての「24時間戦う」マネジャーではなく、スマートに業務を完結させ、部下の私生活も大切にする「マネジメントのプロフェッショナル」が求められています。自身の成果よりも「チームメンバーの利益と成長」を最大化させる調整役としての期待が高まっています。
「“管理職=罰ゲーム”と思わせない存在」を選択した人は16.3%でした。比率としては高くありませんが、これは「今の管理職を見ていたらとてもそうは思えない」という諦めの裏返しとも取れます。
人事労務担当者が取り組むべきは、管理職の「仕事の面白さ」を取り戻すことです。事務作業や細かな調整業務をAIやDXツールに逃がし、管理職が本来おこなうべき「意思決定」や「対話」に集中できる環境を整えること。そして、その役割が適切に報われる報酬体系を作ること。これらが揃って初めて、管理職は「なりたい職業」へと回帰できるはずです。
今回の300名アンケートの結果は、日本企業の多くが抱える「中間層の空洞化」と「労働意欲の変容」を明確に映し出しました。
「管理職離れ」や「静かなる退職」は、従業員のわがままではなく、過剰な負荷と不透明なリターンのバランスが崩れたことによる必然的な結果です。人事労務としては、今回の結果を真摯に受け止め、以下の3点に注力すべきでしょう。
管理職が生き生きと働き、一般社員がその背中を追いかけたくなるような組織文化への転換。それこそが、2026年以降の企業成長を左右する最大の鍵となるに違いありません。
| 調査名 | 中間管理職に関するアンケート |
|---|---|
| 調査対象 | 企業で働く会社員300名 |
| 調査期間 | 2025年2月17日~2025年3月3日 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
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