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アンケート今回のアンケート調査からは、年収や基本給といった表面的な金額だけでなく、時給換算額や最低賃金の判定基準、制度理解の面で多くの課題が浮き彫りになりました。年収は200万円未満が最多となり、300〜500万円未満に集中するなど、比較的低〜中水準の年収帯に回答が集中する結果となりました(※本調査は雇用形態の内訳を示していないため、結果の解釈には留意が必要です)。
また、基本給18万円未満が約4割を占め、賃金の土台となる給与水準の低さも明らかになりました。残業時間が少ない働き方が広がる一方で、自身の賃金が労働時間に見合っているかを示す「時給換算額」を正確に把握している人は1割未満にとどまっています。
最低賃金や社会保険制度についても理解度にはばらつきがあり、自身の賃金水準を客観的に判断できていない人が多い状況です。特に月給制や固定残業代制(みなし残業)を導入している場合、支払われる賃金(総支給額)から最低賃金の対象外となる賃金(臨時に支払われる賃金、賞与等の1か月を超えて支払われる賃金、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当)を除外して判定するという「最低賃金の正しい判別方法」を知らなければ、基準を下回るリスクを見落とすおそれがあります。
本記事では、アンケート結果をもとに、年収・基本給・時給換算額・最低賃金の関係を整理し、収入の実態と今後の注意点を解説します。
目次
今回のアンケートでは、年収や基本給といった「表面的な金額」において、働く人の間で大きな差が見られました。特に年収200万円未満の層が一定数存在している点や、基本給水準が低めに集中している点は、近年の物価上昇を踏まえると無視できない結果と言えます。
まずは、アンケートから明らかになった年収と基本給の分布を確認し、法的に重要な「賃金の内訳」の見方を整理していきましょう。
直近1年間の年収については、「200万円未満」と回答した人が最も多く、全体の約3割を占めました。また、300〜399万円、400〜499万円といった層も一定数存在しており、年収は300〜500万円未満に集中している傾向が見られます。

この結果からは、必ずしも高年収層が多数派ではなく、比較的低〜中水準の年収帯で働く人が多い実態がうかがえます。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」速報では一般労働者の賃金は前年を上回っています。一方で、物価上昇下では家計の負担感が強まりやすく、賃金水準の受け止めには幅が出やすい面もあります
一方で、「わからない/把握していない」と回答した人も少数ながら存在しています。年収は税金や社会保険料、各種給付の算定基準となる重要な指標です。収入を正確に把握することは、適切な将来設計を考えるうえでの前提条件と言えるでしょう。
毎月の「月給制(本記事では基本給および諸手当を含む額面金額を指す)」の内訳を詳しく見ると、基本給が「18万円未満」と回答した人が約4割にのぼり、最も多い結果となりました。次いで多かったのは20万円台前半の層であり、全体として基本給が低めの水準に集中している実態が浮き彫りになっています。

基本給は毎月の賃金の中核であり、残業代(割増賃金)の計算では、基本給や所定で支払われる手当を基礎に、通勤手当・家族手当など法定で除外できる賃金を除いた金額から時間単価が算定されます。賞与や各種手当の算定方法は企業の賃金規程によって異なりますが、月給(基本給・諸手当)の水準が低い場合、年収全体が伸びにくくなるだけでなく、報酬月額に基づいて算定される社会保険給付(傷病手当金や年金額など)にも影響を及ぼす可能性があります。
月給制で働く人の場合、毎月の額面総額だけで判断せず、その内訳として「基本給」がどの程度を占めているのかを確認することが、自身の労働条件を正しく理解する第一歩です。
収入額だけでなく、働き方と賃金に対する意識にもギャップが見られました。残業時間が少ない人が多数派となる一方で、自身の「時給換算額」を把握していない人が多く、労働時間に見合った適切な賃金が支払われているかを判断できていない状況が浮き彫りになっています。
月の平均残業時間については、「残業なし」が約45%と最も多く、「1〜10時間」を含めると、残業が少ない働き方が多数派となりました。

働き方改革の影響により残業が減少するのは望ましいことですが、賃金面では注意が必要です。残業が少なければ、当然ながら「残業手当」による総年収の底上げは期待できず、基本給のみで生活を支えることになります。
ここで混同してはならないのが、「総年収」と「1時間あたりの単価」の関係です。残業が少なければ総年収は下がりますが、1時間あたりの単価そのものが下がるわけではありません。自身の働き方を評価する際は、総額としての年収だけでなく、時間あたりの賃金水準を正確に見ることが重要です。
「基本給を所定労働時間で割った金額(簡易的な基本給ベースでの時間単価)を正確に知っているか」という設問に対し、「把握している」と回答した人は1割未満にとどまりました。多くの人が「なんとなく把握している」「計算したことがない」と回答しており、月給制で働く正社員にとって、自分の労働に対する時間あたりの単価意識が極めて希薄であることが浮き彫りになっています。

ここで注意が必要なのは、このアンケートで尋ねた「基本給ベースの換算額」と、次章で解説する「法令上の最低賃金判定に用いる時給換算額」は異なるという点です。今回の設問では、手当を除いた「基本給」のみを対象とした、いわば「個人の主観的な労働単価」としての意識を調査しています。
この結果から考えられるのは、月給の総額が一種のブラックボックス化している実態です。月給制は一定の給与が保障される安心感がある一方で、基本給というコアな対価が「1時間あたりいくら」に相当するのかというコスト意識を持ちにくい傾向にあります。「1割未満」という数字は、単なる知識不足ではなく、自分の労働力を客観視できていないという課題を示唆しています。
令和7年度の最低賃金は全国加重平均1,121円となり、全都道府県で1,000円を超えました。さらに政府は2020年代に全国平均1,500円を目指す方針を掲げており、こうした引き上げが続く局面においては、まずこの「簡易的な換算額」を意識することから始め、その上で次章で述べる「法令に基づいた正確な計算」へと理解を深めることが、不当な労働条件を防ぐための第一歩となります。
最低賃金制度は、雇用形態にかかわらずすべての労働者に適用される「賃金の最低額」を定めたものです。しかし、アンケートでは自身の賃金が最低賃金を上回っているか「自信がない」という声が多く聞かれました。
「間違いなく最低賃金を上回っている」と自信を持つ人は約3割でした。多くの人が不安を抱える背景には、正しい判別方法が浸透していないことが挙げられます。

最低賃金と比較する際は、月給の総額から以下の「除外される賃金」を差し引いた額で判定する必要があります。
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
・残業代(時間外、休日、深夜手当)
・賞与、臨時的な賃金
これらを差し引いた金額を、1ヶ月の平均所定労働時間で割ることで、正しい「時給換算額」が算出されます。この金額が、各都道府県で定められた最低賃金額以上(同額を含む)である必要があります。
(基本給 + 最低賃金対象手当) ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 = 時給換算額
最低賃金の議論とは別に、働く人が知っておくべきなのが「額面」から差し引かれる「控除」の仕組みです。社会保険料や税金は、手取り額を減少させる要因として捉えられがちですが、将来へのセーフティネットとしての役割を持っています。
アンケートでは、社会保険料の役割を「詳しく理解している」と回答した人は約3割でした。「ただ引かれている税金のようなものだと思っている」という声もあり、負担感だけが先行している現状がうかがえます。

社会保険料(健康保険、厚生年金保険など)は、傷病時の手当金や将来の老齢年金など、給付額の算出ベースになります。控除される金額の仕組みを知ることは、単なる節約意識を超えて、万が一の際の保障額を正しく把握することに繋がります。
最低賃金は近年、全国的に大幅な引き上げが続いており、2026年に向けても上昇基調が続くと見込まれています。企業規模を問わず、社会保険の適用拡大や価格転嫁の促進など他の制度変更と並行して、賃金管理の重要性は増しています。
特に月給制や固定残業代制を採用している場合、最低賃金の引き上げによって、気づかないうちに「時給換算額」が基準を下回ってしまうリスクがあります。
通勤手当や家族手当、残業代を除外した「対象賃金」を算出する。
対象賃金を1ヶ月の平均所定労働時間で割り、「時給換算額」を出す。
勤務地の最新の最低賃金(令和7年度改定)と比較し、最低賃金額以上であるか確認する。
例年10月頃におこなわれる最低賃金の改定に合わせて、毎年チェックをおこなう。
今回の調査からは、年収や月給という表面的な数字には敏感である一方、その中身である「基本給の内訳」や「時給換算額」への理解が不足している実態が明らかになりました。
物価高が続く2026年において、自身の労働の価値を正しく判断するためには、総額だけでなく「1時間あたりの単価」という視点を持つことが不可欠です。この記事を参考に、一度自身の給与明細を確認し、正しい計算式で「時給換算額」を算出してみてはいかがでしょうか。
| 調査名 | 年収に関するアンケート |
|---|---|
| 調査対象 | 企業で働く男女300名 |
| 調査期間 | 2025年12月24日~2025年12月31日 |
| 調査方法 | インターネット調査 |

大学在学中に社労士試験に合格。業界歴約30年のベテランで、ビジネスケアラー対策の第一人者として企業の人材確保・定着支援を得意とする。
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