
更新日:
アンケート2026年、生産年齢人口の減少が加速するなか、外国人労働者は日本企業にとって「あれば助かる存在」から「なくてはならない経営基盤」へと移行しました。しかし、最新のアンケート調査では約6割の企業が「非雇用」を継続しており、複雑な在留資格管理や労務コストが依然として高い壁となっている実態が浮き彫りになっています。
現在、雇用規模は「5名以下」の少人数が中心ですが、在留資格の把握不足といった「不法就労助長罪」に直結しかねない重大な管理リスクも散見されます。現場では「言語・コミュニケーション」が最大の課題とされる一方、受け入れを機に業務の標準化が進んだり、組織が活性化したりといったポジティブな変化も確実に起きています。
2027年までに施行される「育成就労制度」への移行を控え、制度理解が不十分なままでは優秀な人材の流出を招く懸念があります。いま人事労務に求められているのは、単なる手続き業務としての「管理」ではなく、多様な人材が定着し活躍できる「共生」の視点です。
本記事では、調査結果から見えた現場のリアルな摩擦と成功の兆しを分析し、2026年の実務で押さえるべき戦略的受け入れのポイントを解説します。
目次
2026年、生産年齢人口の減少が加速する日本において、外国人労働者はもはや欠かせない戦力となりつつあります。しかし、実際に受け入れを進める現場では、制度の複雑さや言語の壁など、特有の課題に直面している企業も少なくありません。
まずは、最新のアンケート結果から見えてきた、企業のリアルな雇用状況と規模感を見ていきましょう。
現在の外国人労働者の雇用状況について尋ねたところ、「雇用している(正社員・非正規含む)」と回答した企業は全体の一部にとどまりました。一方で、「過去に雇用していたが、現在はいない」「検討したことはあるが、雇用したことはない」「検討したこともない」といった回答が合計で約4割を占めています。

人手不足を背景に関心は高まっているものの、実際には多くの企業が継続的な雇用に至っていない実態がうかがえます。これは、単なる労働力不足の解消という視点だけでは、複雑な在留資格の管理や生活支援といった「外国人雇用特有の労務コスト」をカバーしきれない現実を示唆しています。
外国人労働者の人数については、「1〜2名」または「3〜5名」という回答が全体の大半を占めました 。5名以下の少人数規模で受け入れている企業が中心であり、大人数を一度に雇用している企業は少数派です 。
この結果は、多くの企業が現場の混乱を抑えながら制度運用を確認するため、段階的に導入している実態を反映しています 。

人事労務の観点では、少人数雇用は「きめ細かなフォロー」が可能である一方、一人ひとりの在留資格や期限が異なるため、属人的な管理になりやすいリスクがあります。たとえ1名の雇用であっても、管理ミスが「不法就労助長罪」などの重大なコンプライアンス違反に直結するため、組織的な管理体制の構築が不可欠です。
雇用している外国人労働者の在留資格について、「在留資格がわからない」といった回答が見られた点は、実務上極めて重大な課題です。

外国人を雇用する際、人事労務担当者は以下の義務を負います。
在留資格を把握せずに雇用を継続することは、意図せずとも「不法就労助長罪」に問われる可能性があり、企業名の公表や罰則、今後の外国人受け入れが数年間にわたり制限されるといった経営上の大ダメージに繋がります。
外国人労働者の雇用は、単なる欠員補充以上の影響を組織にもたらします。調査結果からは、現場が活気づく一方で、コミュニケーションの壁という避けて通れない課題が浮き彫りになりました。
「外国人労働者を雇用して、社内に良い変化はありましたか?」という設問に対し、「良い変化があった」と回答した企業は一定割合にのぼりました。その一方で、「特に変化は感じていない」とする回答もあり、受け入れの成果には企業ごとに明確な差が出ています。

この差を生んでいる要因は、雇用後の「配置」と「フォローアップ」の質にあると考えられます。人事労務の視点で見れば、外国人労働者が持つ「働く意欲」を最大限に引き出せている現場では、周囲の日本人従業員にも良い刺激が伝わっています。
逆に、単なる作業員としてのみ扱い、コミュニケーションを疎かにしている現場では、期待したほどの変化を実感できず、定着率の低下という二次的な課題を招く傾向があります。
具体的な変化の内容として最も多かった回答は「人手不足が緩和された」ことでしたが、それ以外にも「現場の活性化」や「多様な価値観の醸成」といった前向きな意見が寄せられました。

これらのポジティブな変化は、以下のような人事労務上の波及効果を生んでいます。
こうした効果を実感している企業では、単に「人を雇う」だけではなく、「異なる背景を持つ人材をどう活かすか」というダイバーシティ経営の視点が現場レベルまで浸透しています。
外国人労働者を円滑に受け入れ、定着を図るためには、事前の社内環境整備が不可欠です。しかし、調査結果からは理想と現実のギャップが浮き彫りになっています。
受け入れにあたっての具体的な施策について尋ねたところ、「社内ルールやマニュアルの多言語化」や「業務内容の再定義」をおこなっている企業がある一方で、約2割の企業が「特別な対応はしていない」と回答しました。

人事労務の視点では、この「特におこなっていない」という状況は、将来的な労務トラブルや早期離職のリスクを内包していると言わざるを得ません。例えば、安全衛生教育が不十分なまま現場に配属した場合、労働災害が発生した際に「安全配慮義務違反」を問われる可能性があります。
外国人労働者を雇用する際は、単なる「人手不足の解消」だけでなく、言語の壁を越えた安全管理や就業規則の周知といった、受け入れ体制の標準化(コンプライアンスの整備)が急務となります。
雇用後に直面している課題としては、「言語・コミュニケーション面」が圧倒的多数を占めました。次いで「特別な対応はしていない」が挙げられています。

単に「日本語が通じない」という問題だけでなく、人事労務の実務においては以下のような課題が具体化しています。
一方で「課題を感じていない」と回答した企業も存在しますが、これは事前準備として「やさしい日本語」の導入や、外部の登録支援機関との密接な連携が機能している可能性が高いと考えられます。
今後の外国人雇用の鍵を握るのは、現行の技能実習制度に代わる「育成就労制度」への適応です。
2024年に成立した改正法により、2027年までに施行される「育成就労制度」について尋ねたところ、「十分に理解している」と回答した企業は極めて少数にとどまりました。多くの企業が「概要は把握している」や「言葉は聞いたことがある」程度の認識であり、制度移行期特有の「情報不足」が顕著です。

育成就労制度は、従来の「国際貢献」という建前を廃止し、明確に「人材確保」と「人材育成」を目的としています。人事労務担当者が特に注目すべきは、以下の法的変更点です。
制度理解の不足は、施行直前の混乱を招くだけでなく、優秀な人材が他社(転籍先)へ流出する原因にもなりかねません。
今後の雇用方針については、「現状維持」や「当面は雇用予定なし」、「慎重に検討したい」といった回答が過半数を占めました。これは、前述の「言語の壁」や「制度移行への不安」が、拡大意欲を抑制している結果と言えます。

しかし、少子高齢化による生産年齢人口の激減が避けられない日本において、外国人労働者の活用はもはや「選択肢」ではなく「経営基盤」となりつつあります。慎重姿勢を崩さない企業がある一方で、早い段階から「育成就労」や「特定技能」への理解を深め、生活支援体制を構築している企業は、地域における採用競争力で一歩リードすることになるでしょう。
今後は、単に「雇用できるかどうか」を検討する段階から、「どのようにして自社に定着してもらうか(リテンション)」を戦略的に考える人事労務の役割がより重要になります。
今回の調査からは、外国人雇用のニーズが高い一方で、実務上の管理体制や制度理解に不安を抱える企業の姿が浮き彫りになりました。
2026年は、翌年に控えた「育成就労制度」への移行準備が本格化する重要な年です。人事労務担当者は、単なる「手続き業務」として外国人雇用を捉えるのではなく、在留資格の厳格なコンプライアンス遵守を基盤としつつ、多様な人材が長期的に活躍できる「選ばれる職場」を戦略的に構築していくことが求められています。
| 調査名 | 外国人労働者に関するアンケート |
|---|---|
| 調査対象 | 人事労務担当者300名 |
| 調査期間 | 2025年1月21日~2025年2月4日 |
| 調査方法 | インターネット調査 |

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。
また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。