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人材・組織企業が社会にもたらすブランドのイメージ戦略として、コーポレートアイデンティティへの注目が高まっています。コーポレートアイデンティティは、もともとアメリカで生まれた概念ですが、日本の企業においても導入される事例が増えてきました。
今回は、コーポレートアイデンティティの目的や役割、必要性について具体的な事例に触れながらご紹介します。
目次
コーポレートアイデンティティ(Corporate Identity 略称: CI)とは、企業の特色や独自性をはっきりと印象づけるための経営戦略であり、「企業名」「ブランド名」「ロゴ」「コーポレートカラー」「スローガン」などの要素によって構成されます。
コーポレートアイデンティティの概念は、1930年代にアメリカで生まれ、代表例として、IT企業大手のIBM(アイビーエムコーポレーション)のロゴが知られています。IBMのロゴは、数十年間にわたって「International Business Machines」という企業名の正式名称が採用されてきました。
その後、企業名の略称である「IBM」というシンプルなロゴに変更され、事業内容とともにロゴも移り変わり、現在の象徴的な8本バーのロゴが生まれました。このロゴは、世界的に最も著名なロゴの一つとして認識されています。
コーポレートアイデンティティの目的は、企業がもつ特徴や独自性をわかりやすく表現し、社会や顧客、ステークホルダーに定着させることです。
日本においては、現在までに多くの企業がコーポレートアイデンティティを取り入れていますが、最初にコーポレートアイデンティティを導入した企業は、国内有数の自動車メーカーであるマツダ株式会社(旧社名 東洋工業株式会社)といわれています。
同社設立当時は、ワインのコルク栓などの製作会社でしたが、1930年代の三輪トラックの販売開始とともに「MAZDA(マツダ)」というブランド名とロゴが発表されました。ロゴはその後何度か変更され、1975年に現在の「M」をかたどったデザインのロゴが生まれました。
この印象的な「M」をかたどったエンブレムは、多くの人にマツダ株式会社のロゴだと認識させます。このように、一見しただけでその企業を想起させ、ブランドイメージを定着させることがコーポレートアイデンティティの目的です。
【参考】意外な意味が込められたロゴマーク | MAZDA(マツダ) | ロゴ作成デザインに役立つまとめ – ロゴマーケット
【参考】マツダ100周年サイト|マツダ創業者の想い – マツダ
コーポレートアイデンティティ(CI)の他に、にブランド・アイデンティティ(BI)、ビジュアル・アイデンティティ(VI)という概念があります。どちらもコーポレートアイデンティティの構成要素の一つとして関連しますが、意味や目的は異なります。
ブランド・アイデンティティは、ブランド独自の価値を明示化し、「顧客からこう思われたい」というブランドイメージを発信(ブランディング)するものです。ビジュアル・アイデンティティは、ロゴやシンボルマーク、コーポレートカラーなどを視覚的に統一することで、ブランドの確立を目的としています。
意味 | 具体例 | |
---|---|---|
CI | 企業ブランドの定着化(思想の統一) | 企業名、企業ロゴなど |
BI | ブランド、製品、商品の明示化(価値の統一) | ブランド名、ブランドロゴなど |
VI | ブランドの可視化(視覚の統一) | ホームページ、名刺など |
コーポレートアイデンティティがもつ役割には大きく分けて、4つあります。ここでは4つの事例をあげながら解説します。
独自性の高い企業のロゴやスローガンの導入は、競合する会社との差別化や、企業ブランドの定着、社会的な認知向上につながります。一方で、他社と同じようなコーポレートアイデンティティを使用すれば、数ある企業ブランドの中に埋もれてしまいます。
そうならないためにも、企業の特色をしっかりと伝え、ターゲットとなる顧客やステークホルダーに認知されることが大事です。
コーポレートアイデンティティの開発は、社内での経営理念やビジョンの共有にもつながります。また、経営方針が明確化されることによって、社員の意思統一とモチベーションの向上も期待できます。
たとえば、一目で「どこの企業か」とわかる企業の制服や社員証を身に付けている場合、社員個人の行動によっては、会社に企業イメージの低下などの悪影響を受ける可能性があります。しかし、コーポレートアイデンティティの導入は社員に規律正しい行動を心がける意識改革にもつながります。
コーポレートアイデンティティによって企業ブランドが定着すれば、社会や顧客、ステークホルダーから「どのような企業なのか」と明確に認識され、コミュニケーションを取りやすくなります。
そのため、コーポレートアイデンティティは社外へ向けた企業のイメージ戦略として活用でき、対外的な関係性を強化する役割も担います。
コーポレートアイデンティティは、企業の経営理念や社会的責任(CSR)に基づくプロジェクトとして計画・開発されます。企業理念やCSRを体系的に整理し、統一したイメージとして顧客やステークホルダーへ展開することで、企業価値を高めることが可能となります。
コーポレートアイデンティティの目的や役割を考えると、企業が永続的に活動するためにはコーポレートアイデンティティは必要不可欠といえます。また、近年では企業にとって、コーポレートアイデンティティが必要となる機会が増えています。
ここではコーポレートアイデンティティが必要となる背景をご紹介します。
近年の情報化社会の発展によって、企業の問題が顕在化されやすくなっています。企業が不祥事を起こせば、その情報は瞬く間に拡散されてしまいます。不祥事による企業イメージの悪化は最悪の場合、倒産にもつながりかねないリスクです。
最悪の事態を未然に防ぐためには、企業のブランドを確立し、不祥事を未然に防ぐ明確な指針(ビジネスにおける意思決定の判断基準)として機能させることが必要不可欠となります。
情報化社会とともに、ソーシャルネットワーキングシステム(SNS)を中心とした顧客の共感が企業イメージを左右する時代となっています。SNS上での共感性によって、企業の問題は従来よりも発覚しやすくなっており、これまで蓄積してきた企業イメージが一気に失墜してしまうことも考えられます。
しかし、SNSによる個人のネットワークに蓄積される共感こそが、企業もブランドも育てる時代になってきているといっても過言ではありません。
多様な価値観が広まるなか、顧客だけでなく社員やステークホルダーに対して企業の価値を理解してもらう必要があります。
そのためには、企業から一方的に情報やメッセージを発信するだけでなく、コーポレートアイデンティティを中心としたコミュニケーション強化を実行し、社内外での強い結びつきを創り出すことが重要です。
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