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人材・組織紙資料のデータ化・活用が可能なペーパーレスには、多くのメリットがあります。コスト削減はもちろん、業務効率化やセキュリティの向上が見込めるにもかかわらず、日本ではなかなかペーパーレス化が進んでいないのが現状です。
今回はペーパーレス化が必要とされる理由や課題、メリット・デメリットをはじめ実現方法を解説します。
目次
ペーパーレスとは、オフィスで使う書類をデータ化してパソコンへ保存、管理して活用していくICT(情報通信技術)の一つです。ペーパーレス化を進めることで、紙資源の節約とコスト削減ができます。
契約書や申請書類といった企業の文書は、電子帳簿保存法などの法律によって運用方法が定められています。2016年1月から、すべての契約書や領収書の電子保存が可能になり、2017年1月からはスマートフォンやタブレット端末のカメラで写真を撮りデータ化することも認められました。
こうした法整備の流れから、ペーパーレス化は今後の国の方針となります。
ペーパーレス化が公的機関の取り組む重要な方針の一つとして掲げられています。例えば介護業界では、高齢者の増加や慢性的な人手不足を解消するべく、ペーパーレス化による業務上の書類の削減や文書量を半減させることで、業務改善効果を期待しています。
これにより課題の把握や事業所内外での情報連携がより迅速になる見込みです。
ペーパーレス化が遅れている企業の課題は、従業員の心理的抵抗によるものです。中堅以上の社員ほどこれまでの仕事のやり方を変えて、新しい方法を学ぶことに抵抗があり、変化に消極的です。
ペーパーレスを導入することで、会議資料の印刷や稟議書による決裁といった業務プロセスを一新することとなります。新しい運用に慣れるためには、どうしても時間と労力がかかってしまいます。本格的なペーパーレスの導入には、トップダウンによる強い指揮系統で推進する必要があります。
ペーパーレスには多くのメリットがあります。
紙を廃止することで、紙代だけでなく印刷インクやプリンターのメンテナンスを含むコストを削減ができます。
また、紙の保管が不要になることで書類を保管するためのファイルや棚が不要になるため、これまで必要だった保管場所をミーティングスペースに変えるなど資産の有効活用が可能です。
資料がデータ化されることで、保存されているすべての文章にパソコンやスマートフォンからアクセスできます。そのため、資料を探しやすくなり、稟議書など決済が必要な書類は時間や場所に関係なく承認が可能です。
データ化された資料を活用し、利用状況を統計的に分析することでビッグデータとして新しい分野に活用することもできます。
紙の書類は物理的な紛失・盗難リスクが大きいうえ、火災による消失など、一度消失してしまうと復元が困難です。データ化された書類をWeb上に保存しておくことで、セキュリティ対策だけでなく、万が一の事態に備え対応することができます。
コスト削減やセキュリティ・利便性の向上、情報のバックアップといったメリットがありますが、ペーパーレス化によるデメリットも合わせて確認しておきましょう。
国はペーパーレス化を推進していますが、全書類のデータ化はできません。宅建業法における賃貸契約書など、法律上で「書面を交付」という文言を入れる規定の書類は、ペーパーレスでは対応できません。
また、重要な書類はデータ化できない場合があるため、専門業者と相談しながら準備を進めることが必要です。
文書をすべてデータで管理するため、従業員のIT知識(ITリテラシー)の向上が欠かせません。そのため、従業員によってはペーパーレスを不便と感じることもあります。スマートフォンなど確認に使う機器によっては画面が見にくい場合があります。紙であれば自由にできたメモ書きも閲覧の方法によっては難しくなります。
ペーパーレスはシステムやネットワークの影響を受けやすいため、どんな人でも使えるように事前の準備が必要です。
実際にペーパーレス化を実施する場合、紙の代替となる機器やシステムの導入が必要です。ペーパーレスの実現に必要な具体的な進め方を紹介します。
タブレット端末はパソコンよりも持ち運びがしやすいため、ペーパーレス化の推進に取り入れやすいです。ネットワーク環境とのバランスや端末の管理など、紙で運用していたときに比べて手間も時間もかかってしまいますが、タブレット端末はまとめて購入すると費用を抑えることもできるため、用途や予算の兼ね合いで選択すると良いでしょう。
ペーパーレスの実現には、まずデータ化の可否を判定する必要があります。データ化できる書類は準備をはじめることはもちろん、データ化した書類を保管・管理し、社員全員がすぐに使えるよう運用方法を決めていきます。
データ化の対象外の書類は紙で残す必要があるため、すべての書類をデータ化することは不可能です。紙で残す書類は収納場所を決めて整理を行うなど、社員が一丸となって書類のオペレーションに向き合うことが大切です。
ペーパーレス会議とは、会議を行う際に配布していた紙の資料をデータ上での閲覧に変更することです。紙のコスト削減になるだけでなく、パソコン画面に資料を投影することで遠隔にいる人でも会議に参加できるというメリットがあります。会議終了後も、資料がシステムで一元管理されるため、保存や検索がしやすいことも特徴です。
社外の人が参加する会議の場合、これまで紙で対応していた資料をすべてデータ化した場合、混乱をきたす可能性があります。暫定的に紙資料とデータ資料を併用するなど経過措置期間を設け、順を追って対応することで浸透しやすくなります。
クラウドストレージとは、社内のパソコンに内蔵されているハードディスクにデータを保存せずに、インターネット上にファイルを保存・共有するように設計されたサービスです。時間や場所の制限なく、データにアクセスできるうえ、各デバイスにデータが保存されないため、セキュリティ対策にもなります。
ここ数年で、マイナンバー管理や有給休暇の取得申請など、業務を進めるうえで企業側の対応だけで完結せず、従業員とのコミュニケーションが必要な人事労務管理業務が増えています。ペーパーレス化することで、人事労務管理における申請書類や保管の手間を省き、従業員や行政とのコミュニケーションも取りやすくなる画期的なプラットフォームです。
ペーパーレスとは、オフィスで使う書類をデータ化してパソコンへ保存、管理・活用する手法です。ペーパーレスのメリットは、事務用品のコスト削減、機密資料や情報の取扱利便性の向上、情報のバックアップが可能なことが挙げられます。
反対にペーパーレスのデメリットは、書類によってはデータ化ができないこと、IT知識が必要であり不慣れな人には不便なことです。ペーパーレスを実現するためには、タブレット端末の購入やペーパーレス会議、クラウドストレージの導入が効果的でしょう。
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