企業の労働生産性を向上させるためには労働者の訓練が必要です。今、企業には労働者の人材開発を行うことが急務とされています。この訓練に対する国からの助成金や助成率が改正により引き上げられました。
また、「キャリア形成促進助成金」は平成29年4月から「人材開発支援助成金」へと名称も改められています。今回は、人材開発支援助成金の「職業能力検定制度導入コース」について解説をします。
目次
人材開発支援助成金は、従業員の職業訓練や人材育成にかかる費用を政府が助成してくれる制度です。そして、この助成の1つに「制度導入助成」というものがあります。これは事業主や事業主団体などが、決められた人材育成制度を導入し実施した場合にかかる費用を定額助成してくれるというものです。
制度導入助成には「キャリア形成支援制度導入コース」と、今回紹介する「職業能力検定制度導入コース」の2つのコースがあります。
その名前のとおり、従業員のキャリア形成に関わる制度を導入・実施した際に助成が適用されます。具体的には、セルフ・キャリアドックという従業員向けの定期的なキャリアコンサルティングの導入と実施、あるいは従業員が教育訓練を受けるための休暇制度や短時間の勤務制度を導入と実施がされた際に該当します。
人材育成の中でも検定に関わる助成を行います。
上記に該当する、それぞれにかかる費用の一部が助成されます。
コースによる違いはありますが、いずれのコースも従業員のキャリアアップのために利用することができるものだといえます。
ここからは職業能力検定制度導入コースについて、もう少し詳しく紹介します。
助成額
基本的には47.5万円となります。しかし、生産性要件を満たす場合は助成額が60万円にまで引き上げられます。ただし、この生産性要件の対象となるのは事業主のみで、事業主団体等の適用はありません。
適用人数
何人でも適用されるというわけではなく、企業が雇用している被保険者(正規雇用の従業員のみ)の人数によって最低適用人数が設けられており、それを超える人数への導入制度でなければいけません。
また、最低適用人数は従業員が20人未満の場合は被保険者が1人以上となります。以下、20人以上30人未満で2人、30人以上40人未満で3人、40人以上50人未満で5人、50人以上で5人となります。この最低適用人数は制度を導入する際に満たしていなければなりません。
1ヶ月後に新たに採用する予定だからと助成を申請することはできないので注意が必要です。
助成金を受けようとする場合、決められた条件をすべて満たしていなければなりません。
事業主には全部で9個の、事業主団体には10個の要件が用意されています。
自社が条件を満たしているのかどうかという点を確認するようにしてください。
参考:厚生労働省ホームページ
ここまで、人材開発支援助成金制度のなかでも職業能力検定制度導入コースについて説明してきました。検定試験は従業員にとって仕事の幅を広げるため、給料を増やすため、そしてキャリアアップのためにも重要なものとなります。
職業能力検定制度導入コースは、そういった従業員のキャリアアップの期待に応えるための制度でもあり、事業主および事業主団体の方々による積極的な利用が望まれます。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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